< 第25回朝日オープン将棋選手権 準々決勝第3局 > 死闘356手2007年06月12日 後手が△5二飛成とと金を取って竜を引き付けた場面。午後11時近くになった控室では「逆転」の声がしきりだった。と同時に、「こんなに粘る人とは将棋を指したくない」という声も。阿久津の思いも同じだったのではないか。
だが、このもつれた将棋を阿久津は耐えた。最後の気力をふりしぼってもう一度、久保玉を寄せに出たのだ。 ▲9四歩△8四銀に▲9六香が手厚い攻め。とにかく、玉頭の勢力で勝つのが至上命令だ。 久保も反撃を見せる。△9六歩▲8六銀に△7四桂と打った手が、なんと詰めろ! あのがちがちだった穴熊玉に詰めろをかけたのだから、これぞ執念である。 だが、その瞬間、後手玉には即詰みが生じていた。終了図の▲9二金を見て、ついに久保投了。以下は△9二同玉に▲9三桂成△同玉▲8五桂△8二玉▲9四桂と追って詰んでいる。 手数181手。持将棋局と合わせて356手の死闘である。まさか、指し直し局の手数が持将棋局を超えるとは……。 両者の気力と執念はこれぞプロ。勝った阿久津は勢いも運も手にした気がする。 (青) |