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女流プロ昇格、厚い壁 将棋連盟新制度、1年余で1人だけ

2010年7月29日

写真研修会員の対局風景。女流棋士志望者も奨励会を目指す子供に交じる=東京・将棋会館

図拡大将棋界における研修会の位置づけ

 毎年、将棋の女流棋士を生み出してきた「女流育成会」が廃止され、男女混合の新制度が始まって1年余り。新しい制度のもとで先日、ようやく室谷由紀女流1級(17)が正規の女流棋士となった。ただ、あとに続く者が見えてこない。女流棋士への道はどうあるべきか。試行錯誤は続く。

 「早く決めたいと思っていました。長かったです」。7月17日、3級だった室谷女流はマイナビ女子オープンの予選で公式戦5勝目をあげて2級に昇進、ほっとした表情を見せた。その日はさらに1勝して本戦入りも決めたため、規定により、1級まで一気に駆け上がった。

 3級と2級――。一つの差だが、違いは大きい。将棋界で女流2級は正規の女流プロだが、3級はプロとはいえ仮会員。1年間で5棋戦に出て5勝以上、2年間で8勝以上しないと、アマチュアに戻されてしまう。

 室谷女流は昨年10月に3級になり、「正規のプロ」になるまで9カ月を要した。この間、日本将棋連盟の理事会は、室谷女流の成績に注目していた。

 08年度末に、それまで女流棋士を生み出してきた「女流育成会」を廃止し、志望者を男女混合の「研修会」に入れ、その成績によって女流棋士資格を与える仕組みにした。目的は女流のレベルアップ。女性同士で戦って昇級者を決める育成会はここ数年、入会者が少なく、会員は10人前後で推移。実力差が開き、水準を保つのが難しくなっていた。

 研修会は「棋士」を目指す、伸び盛りの10代が多く、会員は関東、関西、東海の各地区を合わせて約150人。水準は安定している。室谷女流は、育成会から研修会に編入され、3カ月でD1クラスから2階級昇級して仮入会を決めた。その後の成績は、新制度が厳しいのか、甘いのかを測るバロメーターと考えられてきたのだ。

■関門、難しいさじ加減

 女流育成会ができたのは1984年度。それまではアマの強豪が、棋士の推薦で女流棋士になるのが通例だったが、志望者同士が育成会のリーグ戦で競う方式に改められた。

 当時は女流棋士が16人。もっと増えることを期待して作られた育成会だが、方針は揺れる。早々に「仮入会制度」が導入され、年間勝率が5割未満だと育成会に戻ることになった。

 90年度から、厳しさがややゆるむ。育成会で勝ち抜けば女流2級になれるようになった。昇級は1年に1〜3人程度。廃止までの25年で育成会から46人の女流棋士が誕生した。

 ただ近年の育成会卒業者でタイトルを取った女流棋士は多くない。2000年以降の昇級者では里見香奈女流二冠だけだ。若手の活躍で将棋界を活性化させたい連盟は改革を断行した。

 「女性は環境が整えば、もっと強くなる。伸びてもらうためには、大事にしすぎてもダメ」と連盟の西村一義専務理事。育成会では、強い女性が多くても昇級枠は限られた。研修会は、強ければ何人でも昇級の可能性がある。だが、室谷女流が昨年に仮入会を決めてから、続く者はまだいない。ハードルの高さは適正か。さじ加減が難しい。

 7月26日時点で、研修会所属の女性は8〜26歳の14人(長期休会を除く)。このうち、仮入会一歩手前のC2クラスには2人。西村理事は「今の条件が特に厳しいとは思わない。若い有望な子がアマチュアに増え、層が厚くなってきた。いずれ花開くと思う」と話す。(村上耕司)

     ◇

 〈将棋連盟の研修会〉 研修会は最上位のA1からF2までアルファベット順に各2クラス、計12クラスあり、会員同士の対戦成績によって一段階ずつ昇降級する。F2でアマ二段レベル。15歳以下でA2に上がると奨励会6級に編入でき、B1以上だと奨励会入会試験の1次試験が免除される。女流棋士志望者はC1に上がると女流3級(仮入会)になる。

 なお、女性でも「女流棋士」ではなく、一般の「棋士」を目指して奨励会に進むこともできる。現在、奨励会に女性は3人。ただ、これまで女性は初段が最高で、棋士である四段にまで上がった例はない。

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