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冷めた計算に軍配 将棋ソフトVS.清水女流王将戦を振り返る

2010年10月21日

写真終局後、記者会見に臨む清水市代女流王将(中央)と米長邦雄・将棋連盟会長(左)、「激指」開発者の鶴岡慶雅さん

図拡大A図・▲4五歩まで

図拡大B図・△5七角まで

図拡大終了図・△9五桂まで

 コンピューター将棋ソフトが清水市代女流王将を破り、ついに公の場でプロ集団の一角を崩した。中盤から終盤にかけて優位を拡大しての快勝だったが、清水女流に勝機はなかったのか。11日に行われた特別対局を振り返る。

■電子頭脳――全棋譜分析し誘導

 情報処理学会が作ったシステム「あから2010」と清水女流との対局は東京都文京区の東京大学で行われた。

 「阿伽羅(あから)」は10の224乗を表す言葉。将棋の標準的な手数から想定される局面の数に相当することから名付けられた。今年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した「激指(げきさし)」や「GPS将棋」「Bonanza(ボナンザ)」「YSS」の強豪4ソフトが算出する「次の手」を多数決で決める仕組みだ。

 振り駒の結果、清水が先手。初手から▲2六歩△3四歩▲7六歩に△3三角と進み、「あから」が角交換振り飛車に誘導した。学会側は清水の全棋譜を分析し、どの戦型を選べば勝ちやすいか、研究していた。序盤で角交換になれば人間が気を使う展開になると考えた末の作戦だった。

 清水も事前に対策を研究していたが、角交換に応じ、真っ向から受けて立った。「相手の弱点をつく作戦をとるか直前まで悩んだが、大きなプロジェクトの一員に指名していただいたことを光栄に思い、自分らしい将棋で応えようと思った」と言う。

 序盤から中盤にかけて、清水の穴熊志向を阻止しようと「あから」が動き、乱戦模様に。A図は清水が▲4五歩と突いたところだ。ここで「あから」は△同桂。大盤解説会場で△5三角を予想していた佐藤康光九段、藤井猛九段らは驚きの声をあげた。▲6八金に△6四角で後手十分とみていたからだ。実は「あから」内の意見は割れていた。激指は△5三角を推奨し、角を切るのが好きなボナンザは△7七角成、GPS将棋とYSSが△4五同桂を最善と判断していた。

 ▲4五同桂で先手の桂得。以下△5六銀に清水はチャンスとみて50分ほど長考した。これが後に自分を苦しめることになった。

■プロ――長考裏目、ミス痛手

 △5六銀以下は▲5三桂打△5一金左▲6一桂成△同金▲6六金。「あから」はこの金打ちを疑問手と判断したようだが、プロの評判はよかった。佐藤九段は「気迫のこもった一手」と評価した。

 その後、清水は馬を作ることに成功。やや優勢とみられていたが、封じ込めていた後手の飛車と馬を交換したため、「あから」の形勢判断ははっきり優勢に傾いた。B図は「あから」が△5七角と打ったところだ。その前の△6九金も解説者をうならせた。▲7四桂打△同歩▲同桂の攻めが見えているだけに怖い手だ。恐れをしらないコンピューターらしい。「時間がない時にこんな手を指されると勝ちきるのは大変。恐れ入りましたね」と藤井九段。

 秒読みに追われた清水が▲7七銀と引いたため、△5六銀▲5八飛△5五角で、後手玉が寄らなくなった。B図では▲7七桂としていれば、まだまだの勝負だった。

 最後は一方的な展開となり、清水が86手で投了した。終了図で▲8八銀と受けても△8七桂不成▲同銀△同銀成で次第に先手玉は受けがなくなる。

 結局、ミスが命取り。対局後、清水は「血の通った相手と戦っているような錯覚に陥った」と話したが、長期戦もいとわない「あから」の冷静な指し手が目立った。(村上耕司)

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