2011年4月12日
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新手・新戦法を表彰する第17回升田幸三賞に、奨励会員の星野良生(よしたか)三段(22)が考案した「超速3七銀」が選ばれた。この1年でプロの間に急速に浸透し、ゴキゲン中飛車対策の主流となっている。いったいどんな戦法なのか。
■ゴキゲン中飛車対策に
「超速」が初めてプロ公式戦に登場したのは2009年12月。第3回朝日杯将棋オープン戦の本戦で、星野三段と一緒に研究会をやっている深浦康市九段(当時王位)が指した。それ以降、プロの間で爆発的に流行し、タイトル戦やA級順位戦でも指された。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩△4二銀▲3七銀(A図)。玉を6八に置いたまま右銀を繰り出していくのが、この戦法の骨子だ。A図から△6二玉だと先手に▲4六銀と出られ、次に△5三銀と指せない(▲5五銀と歩を取られる)。A図から△5三銀なら▲4六銀△4四銀となるが、相手の駒組みを限定でき、先手はゆっくりと居飛車穴熊に囲える。
考案した星野三段は「一昨年の8月ごろから奨励会員との練習将棋で指し始めた。最初は深く考えてなかったが、やってみたらうまくいった。先手の自由度が大きく、手損なしで穴熊に組める」。研究会で披露した戦法は、すでに本人の手を離れ、多くの棋士が工夫を重ねることで急速に定跡化が進んでいる。
奨励会員が升田賞を受賞するのは07年度の「2手目△3二飛」以来2回目。星野三段は「少しはプロの間でも指されるだろうという自信はあったが、想像を超えた。うれしいです」と話している。
■連続の千日手、双方粘り光る 名局賞、深浦―広瀬戦
2010年度内のベスト対局を表彰する第5回名局賞には、広瀬章人六段が深浦康市王位(いずれも肩書は当時)に勝って初タイトルを奪取した第51期王位戦七番勝負第6局が選ばれた。第5局に続いて第6局も千日手になり、その指し直し局で、広瀬六段が得意の振り飛車穴熊を採用し161手で粘り勝った。深浦王位の粘りも光った。
B図はその終了図。先手玉を攻めながら入玉も目指す深浦の王将を広瀬は大駒4枚で包むように捕まえた。
■「負けられぬ」気迫の一局 名局特別賞、藤井―森内戦
名局賞特別賞には第69期名人戦・A級順位戦の藤井猛九段―森内俊之九段戦が選ばれた。この対局も午後7時過ぎに千日手が成立。その指し直し局は246手に及び、決着がついたのは翌午前3時42分だった。藤井が一時、勝勢を築いたが、森内が粘って逆転した。挑戦権争いのトップを走る森内と残留争いをする藤井の「負けられない」思いが詰まった一局だった。(村上耕司)