11日に東京・有楽町朝日ホールで行われた第5回朝日杯将棋オープン戦は、羽生善治二冠の2年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。勢いに乗る若手2人を、隙のない指し回しで連破。ここ数年の早指しでの強さを改めて印象づけた。
朝日杯の準決勝、決勝は、プロの真剣勝負を間近で見られる絶好の機会だ。今回は定員500人に対し、1675人の応募があり、インターネットのサイト「ニコニコ生放送」でも中継された。
準決勝に進出したのは、羽生と菅井竜也五段、郷田真隆九段、広瀬章人七段。羽生は4回目、郷田は2回目だが、19歳の菅井と25歳の広瀬は初めてだ。
■菅井戦抑え込み
羽生―菅井戦は、菅井のゴキゲン中飛車に対し、羽生は玉の囲いを後回しにして左銀の進出を急ぐ工夫の手を披露した。この手を「知らなかった」という菅井はうまく対応できず、羽生が抑え込みに成功した。
A図は菅井が3三の角を4二に引いた局面。ここで▲5七銀が柔軟な手で、以下▲5六飛〜▲6六銀上〜▲6五銀と盤石の態勢を築いた。この後、菅井にも好機が訪れたが、最後は羽生が145手で勝った。
郷田―広瀬戦は、広瀬がトレードマークとも言える四間飛車穴熊を採用。銀冠に囲ってから穴熊に組み替えた郷田が優位に立ったが、攻め急ぎもあって優劣は微妙になった。
B図は3三の成香で▲2三成香と銀を取った局面。ここで郷田は△4六角と打ったが、これが敗着。▲2七玉で先手玉は詰まない。郷田はさらに迫るが届かず、133手で広瀬が勝った。B図では△3八銀成なら、▲同歩△2七歩▲同玉△7七竜▲6七歩△1五桂▲1六玉に△3四角から成香を抜く手順があり、難しい終盤が続いていた。
■広瀬戦は大局観
決勝は、昨年の王位戦七番勝負と同じ顔合わせ。その際敗れている広瀬は、借りを返したい。
戦型は相穴熊になった。両者の対局では3回登場している戦型で、広瀬の2勝1敗となっている。C図は広瀬が5八の金を寄せたところだが、ここで羽生の△6七銀が流れを引き寄せる一着だった。自分だけ銀を手放すが、羽生は「有効な手がないので、相手に動いてもらおうと思った」という。解説の木村一基八段は「筋より大局観という、力強い手だった」と評した。
広瀬は▲5二銀としたが、△4二金上▲6三銀不成△7六飛▲同飛△同銀成▲9五角△5六歩▲8二飛に△6六角が厳しく、羽生が78手の短手数で押し切った。▲7六同飛では▲4五飛と浮いた方が良かった。
羽生はJT将棋日本シリーズで2連覇中、NHK杯も3連覇中と、近年早指し棋戦での強さが目立つ。局後、羽生は「持ち時間が短いので、勢いよく指そうと思った」と話したが、その姿勢が実った形となった。(村瀬信也)
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準決勝・決勝の棋譜は朝日杯中継サイト(http://live.shogi.or.jp/asahi/)で。観戦記を朝日新聞デジタルの将棋のページ(http://www.asahi.com/shougi/)に掲載します。
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