羽生善治王位・棋聖に藤井猛九段が挑んだ第53期王位戦七番勝負は、羽生王位の4勝1敗で幕を閉じた。藤井は、かつての主力戦法「藤井システム」を用いたが、羽生の緩急自在の指し回しの前に及ばなかった。
22、23日に指された第5局では、今シリーズ2度目の藤井システムに対し、羽生が急戦で対抗。中盤、意表の角打ちでペースを握った羽生が、藤井の攻めをうまくしのいで勝った。両者のタイトル戦での成績は、羽生の5勝1敗となった。
藤井システムは多くの棋士による研究が進んで旗色が悪くなり、数年前から本家の藤井も封印していた。だが、藤井は昨秋から再びよく使うようになり、今回の王位挑戦の原動力にもなった。今回は結果に結びつかなかったが、今でも優秀な戦法として通用することを示したと言える。
一方、羽生は棋聖戦に次ぐタイトル防衛となった。A級順位戦も2連勝スタートを切り、今年度は24勝7敗と好調だ。29日には、昨年タイトルを奪われた渡辺明王座とのリターンマッチとなる王座戦五番勝負が開幕する。
返り咲きを狙った羽生善治十九世名人を森内俊之十八世名人が破ったシリーズを観戦記で振り返る。決着後の両者へのインタビューも収録。
七冠制覇を成し遂げた羽生が「将棋世界」誌上で連載した矢倉の壮大な研究。当時20代の羽生が将棋の真理に挑んだ渾身作。