【村瀬信也】従来の「本将棋」とは違う新しい「将棋」の登場が相次いでいる。取っ付きやすいようにルールが簡略化されていたり、愛らしいイラストが描かれていたり。知育の面からの期待もかかる。
■ルール易しく親子で
積み木のような四角い駒に描かれているのは文字ではなく、動物のイラスト。盤面は5×6と本将棋より小さい。将棋のミニチュア版とも言える「ごろごろどうぶつしょうぎ」(幻冬舎エデュケーション、2100円)は、11月から書店や玩具店で販売されている。
ライオン(将棋の玉将に相当)といぬ(金将)、ねこ(銀将)、ひよこ(歩兵)の4種類の駒で遊ぶ。初心者でもわかりやすいように、駒の動きを示すマークがついている。ルール作りなどは北尾まどか女流初段(32)、イラストは元女流棋士の藤田麻衣子さん(39)が担当した。
制作のきっかけは、将棋に親しんでもらう狙いで2人が作った「どうぶつしょうぎ」のヒットだった。「どうぶつ」は盤面が3×4と「ごろごろ」より狭く、親しみやすさと手軽さが受けて、40万セット以上が出荷される人気商品になった。
北尾女流初段は「易しいどうぶつしょうぎと難しい本将棋の間のゲームが欲しいという声が多かった」と説明する。「ごろごろ」では駒の数を8個から16個に増やし、「どうぶつ」にはなかった打ち歩詰めに当たるルールを取り入れるなど、本将棋へのステップアップを意識した。
北尾女流初段は他にも、6個の駒で遊ぶ「アンパンマンはじめてしょうぎ」(セガトイズ、1890円)などを手がけている。「子どもにとっては、駒を取ったり王手をしたりすることが楽しい。ルール作りの際はそのことを意識している」と話す。
これらの新しい「将棋」は、ゲームとしてだけでなく知育の面でも注目を集めている。本将棋だと敬遠してしまう親も手に取りやすく、親子で楽しめる点がメリットだ。
幻冬舎エデュケーションの担当者は「最近は、知育教材のブースに力を入れている書店も多くなった。この分野は廃れることがない。どうぶつしょうぎがロングセラーになっているのは、そういった背景がある」と話す。
■紙で開発 知育教材にも
地方から新しい「将棋」を発信しようとする取り組みもある。
福井市の紙加工メーカー「中山商事」は、恐竜のイラストをあしらった紙製の駒を使う「きょうりゅうしょうぎ」を開発した。福井県は県内で化石が多数見つかるなど、恐竜が身近な土地柄だ。
発案したのは元女流アマ将棋名人の社員、石内奈々絵さん(28)。ルールは本将棋と同じだが、駒を取ることを学ぶミニゲームなどが楽しめるように工夫した。電話(0776・53・8000)などによる注文に応じて生産し、販売している。
石内さんは「親世代だけでなく、『孫と一緒に遊びたい』という年配の方からの注文も多かった。知育教材として、まずは県内全域に広げていきたい」と話す。来年は全国の書店などでの販売も予定している。(村瀬信也)
返り咲きを狙った羽生善治十九世名人を森内俊之十八世名人が破ったシリーズを観戦記で振り返る。決着後の両者へのインタビューも収録。
七冠制覇を成し遂げた羽生が「将棋世界」誌上で連載した矢倉の壮大な研究。当時20代の羽生が将棋の真理に挑んだ渾身作。