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アイロンのお供は名作アニメ

2008年4月14日

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写真高畑勲監督。新作映画の企画があるそうですが、見られるのは何年後?写真「母をたずねて三千里」DVDはバンダイビジュアルより発売中写真「赤毛のアン」DVDはバンダイビジュアルより発売中

 3年前のこと。夕食をとりつつテレビを見ていた息子(当時3歳)の眉と口がキューッと八の字にゆがんで、見る見る泣き顔に。ワッとばかりに傍らのカミさんの首っ玉にしがみつき泣き出しました。あとで聞くと何でもその夜は、布団の中で「おかあさん行っちゃイヤだよう(しくしく)」「どこにも行きませんよ(よしよし)」の繰り返しだったとか。

 息子は、懐かしアニメの名場面をまとめて紹介する番組で、「母をたずねて三千里」のマルコと母の別れのシーンを見たのです。母を乗せて出港する船、「見送るもんか」と意地を張っていたマルコがとうとうこらえきれず、泣きながら岸壁を走り船を追います。「おかあさーん!」「マルコ!」 船上の母を見上げたまま全力疾走するマルコは、岸壁の段差に気づかず何度も転倒、傷だらけで走る我が子の姿に胸つぶれる思いの母アンナ…。

 わずか1分ほどのシーンでわが息子の心をグッサリ、見事「トラウマアニメ」に。恐るべし高畑勲監督の演出力、と言うべきでしょう。「『三千里』の第1話は、人物や舞台の説明をした上に、泣くところまで持っていく。そこがすごい」と、この作品を最も好きなアニメに挙げた沖浦啓之監督(映画「人狼」など)もおっしゃっていました。ちなみに先日、めでたく小学校入学を果たした息子に聞いてみると「覚えてない」。見せたら思い出すかな、と思いましたが、また泣かれたりするとイヤなのでやめました。

 かく言う私も、子供の時(当時8歳)はお話がつらくて見られず、大学生になって再放送を見て、最大の泣き所である第40話「かがやくイタリアの星一つ」でボロボロ。つい2週間ほど前にも、カミさんがアイロンをかけつつ見ていた「アルプスの少女ハイジ」がいよいよ終盤にかかったというのでうっかり付き合い、案の定泣かされてしまいました。

 「脚の不自由な友達に向かって『バカ』とか『意気地なし』なんて言っちまうガキの話なんざ見られるかってんだ、ベラボーめ」と悪態をつきつつも(注:多少誇張した表現が入っております)、クララが車いすを出そうとして壊し「私、恥ずかしい」とおじいさんに言うあたりから、鼻の奥がツーン。ゼーゼマンさんの前で歩いてみせるあの名場面に至って、夫婦そろって鼻をグズグズすする始末(息子はお出かけ中でした)。

 ちなみにカミさんは家庭環境上、世間一般の主婦よりアニメに詳しいけれど決してオタクでも腐女子でもありませんが、アイロンタイムのBGVとして、私に録りだめさせたアニメを見るのが最近の習慣です。「あしたのジョー」に続き「ハイジ」を踏破し、「あ〜あ、アイロンのとき見るものがなくなった」。

 「お、『赤毛のアン』の再放送が始まるよ」

 「録画しといて」

 というわけで「ハイジ」「三千里」と並ぶ高畑監督の傑作「赤毛のアン」が、アイロン名作劇場第3弾としてスタートしました。黙って駅で迎えを待つアン、馬車の上でおしゃべりを延々と続けるアン、リンゴ並木の美しさに言葉を失うアン――巧みな緩急が、みずみずしい心を持つ女の子を描き出します。デコッパチ妄想少女が心をわしづかみ。ああ、また泣かされるのでしょうか…。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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