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ハリウッドの最終兵器はジイさんの肉体

2008年6月16日

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写真「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」から (C)2008 Lucasfilm Ltd..All Rights Reserved.写真映画は6月21日から全国公開写真過去のシリーズ3作をおさめたDVDボックス「インディ・ジョーンズ アドベンチャー・コレクション」がパラマウントから発売中写真DVD「ロッキー・ザ・ファイナル(特別編)」(20世紀フォックス)写真DVD「ランボー 怒りのアフガン」(ジェネオン)。これに続く第4作「ランボー 最後の戦場」が現在公開中写真DVD「ダイ・ハード4.0」(20世紀フォックス)

 高齢化社会がやってきました。マクレーン刑事(ダイ・ハード)、ロッキー、ランボー、インディ・ジョーンズ。懐かしヒーローが続々カムバックするヒーロー高齢化社会です。それぞれ、演じるブルース・ウィリスは55年生まれ、シルベスター・スタローン(ロッキーとランボー)は46年、ハリソン・フォードは42年です。

 6月21日公開の「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」で19年ぶりに復活したインディは、作中でもきっちりトシをとっていて、若造に「じいさん」「じいさん」とバカにされますが、滝に落ちたり流砂にはまったりアリの大群に襲われたり全身に何かを塗りたくってお面を被ったエキゾチックな人々に追いかけられたりと、ほとんどコントと言っていいようなドタバタ活劇を見せてくれます。手に入れたって一つもいいことがなさそうな怪しげな秘宝を捜し、ジャングルを突っ走りソ連軍とやり合い、最後は謎の遺跡でドンジャラホイ。「期待以上のことはしませんが期待されていることは全部やりました」といった風情の映画です。

 フォードは、失礼ながらもともと美形タイプではないので顔の老け具合は余り気になりません。インディのおなじみの扮装でスクリーンに現れると「おや、けっこうイケルじゃん」。でも、ラフなシャツの胸元から筋張った首が前にひょこんと突き出ているところに、老いがくっきり。でもガッカリしてはいけません。この映画のキモは、老インディがフゥフゥ言いながら跳んだり跳ねたりするのを見ることなのです。

 その点で、「ロッキー・ザ・ファイナル」は正しき高齢ヒーロー映画です。かつての英雄ロッキー・バルボアは小さなレストランのオーナーとなり、客に武勇伝を聞かせる日々を送っています。妻に先立たれ息子とは疎遠。煤けた下町の街灯に浮かび上がる、まぶたや口元のだらんと垂れた顔。老け込んだ惨めなロッキー。肉体の雄弁さを知るスタローンは、あえて老いをさらけ出すことで見る者を惹きつけます。劇中、テレビ番組のネタとして、3DCGのロッキーと現役チャンプがコンピューター上で仮想対決し、それがきっかけとなって、現役復帰を表明したロッキーと王者の試合が実現するのですが、ここには「CGなんてつまらねえよ、ジジイが体張って拳ぶん回す方が面白いだろ?」という作り手の意地がこもっているように感じました。

 高齢ヒーロー復活の裏には、いいかげん続編のネタも尽きてきたハリウッドの「昔の人気シリーズで最後のひと稼ぎ」という目論みがあるのでしょう。でも、CGで何でも出来るいま、どこかに「生身らしさ」を担保しないとすべてが絵空事になってしまう――そんな強迫観念がプロデューサーや役者らにあるのでは、との思いがよぎります。「クリスタル・スカル」のラストは派手なCGスペクタクルですが、そんなものよりも、少しガニ股で脚のあとから尻がついてくるようなフォードの走る姿の方が、よっぽどドキドキするのです。

 さあ、あとはシュワルツェネッガーが「ターミネーター」で復活し、シガニー・ウィーバーが「エイリアン」で戻ってくるのを待ちましょうか。この2人の主演映画の怪物同士を闘わせた「エイリアンVSプレデター」なんて冗談みたいな映画があるんですから、ターミネーター(シュワちゃん)とリプリー(ウィーバー)がエイリアン・プレデター連合と闘う映画なんてどうでしょう? 監督は、ジェームズ・キャメロンで。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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