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「コドモが妊娠」 映画で日米対決

2008年6月23日

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写真映画「ジュノ」から (C)2007 Twentieth Century Fox写真ジュノ(左、エレン・ペイジ)は親友リアに愚痴ってストレス発散写真映画「コドモのコドモ」から、春菜(甘利はるな) (C)2008「コドモのコドモ」製作委員会写真八木先生(右、麻生久美子)は子供たちの反抗に悩む写真原作マンガ「コドモのコドモ」全3巻は双葉社から発売中

 どういうわけだか、米国で16歳の妊娠が話題になったかと思えば、日本では11歳が妊娠したようです。どちらも映画のお話。アカデミー賞の作品・監督・主演女優・脚本の4部門でノミネートされた米映画「ジュノ」が現在全国公開中。そして、さそうあきらさんの同名マンガを原作とした映画「コドモのコドモ」が9月に公開される予定です。「10代の妊娠」というテーマを扱いながら、どちらもキワモノ狙いのスケベ根性とは無縁、すがすがしい作品です。

 ジュノは16歳の高校生。ボーイフレンドと遊び半分にセックスし、妊娠が分かって真っ青に。とまあ、アメリカでも日本でもよくある話ですが、パンクロックとB級ホラーを愛する変わり者のこの娘は、とにかくジメつかないイジけない投げ出さない。産むと決断するや里親を見つけ、両親に打ち明けます。ノリが軽くてガラが悪く、でも根はまじめで芯が強い。エレン・ペイジさん演じるジュノのキラキラした魅力が、物語を引っ張ります。わざわざボーイフレンド宅の玄関前に肘掛けイスを運び、パイプ片手にふんぞりかえって「ヘイ、妊娠したわ」と告白。芝居がかっていますが、これはつまり「アンタに泣きついたりしないわよ」というタンカですね。ナヨッとした彼氏はこのあと蚊帳の外。養子縁組の面接でもジュノは堂々としたもので、「すぐにあげたいけどまだシーモンキーみたいなもんよ。もっとかわいくなってから配達するわ」。キレのいいユーモアでたたみかける脚本が見事です。

 「コドモのコドモ」は11歳の春菜のお話。幼なじみのヒロユキとふざけて「くっつけっこ」をしたら、だんだんと体に異変が――。原作者のさそうさんに「小学生にコドモを産ませてくれませんか」と連載企画を持ちかけた「漫画アクション」編集部に、いかなる高邁な思想かスケベ根性があったのかは知りませんが、小学5年生といえばのび太やしずかちゃんと同い年? そんなコドモにコドモを産ませるという無茶なテーマに、さそうさんがマジメにマジメに取り組んだ結果、先の読めないスリル、そして温かな感動が待つ群像劇になりました。映画は、マンガほどの厚みは望めませんが、エピソードを巧みにつないでコンパクトにまとめてあります。大人に言えない秘密を共有し団結する子供たちを、子役たちがはつらつと演じていて、そこから発散されるエネルギーによって映画全体が一つのコドモ讃歌になっています。

 子供が主人公の物語では、得てしてイヤな大人を敵役に置いてドラマを作りますが、両作ともそんな安っぽい作為はせず、代わりに登場させるのは悩んで揺れ動く、やや頼りない大人です。「ジュノ」では子のいないセレブな里親夫婦、「コドモのコドモ」では熱意が空回りする女性教師。双方とも、ママやパパになって然るべき年頃なのに自分のことに振り回されるばかり。リアルです。「しっかりしてよね、大人!」という、アニメ「こどものおもちゃ」の名セリフを思い出しました。

 というわけで、「不健全」なはずのテーマがなぜかとっても「健全」なメッセージを発するこの2作、おすすめです。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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