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「うちの3姉妹」対「うちの一人息子」

2008年6月30日

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イラスト今回のネタを「うちの3姉妹」風に描いてみました写真ブログを基にした単行本「うちの3姉妹」7巻まで出ています写真主婦の友社から発売中

 しょで! しょで! だんしんぐっ! もっかいジャンプ〜

 台所で夕食を作っていると、私の部屋からアニメ「うちの3姉妹」の脳天気なオープニング曲が流れてきました。自室のHDDレコーダーに録画してあるのを、また息子(小1)が見ているのです。なんでそんなに好きかねえ。別のある日には、「ただいまー」と学校から帰ってくるや帽子とランドセルを玄関に放り出し、座るのももどかしく再生ボタンを押す、という姿を見たことがあります。

 4月からテレビ東京系で放映が始まった「うちの3姉妹」は、総アクセス数1億突破というマンガ家・松本ぷりっつさんの子育てブログが原作。突飛な言動を見せる「おっぺけぺー」な長女フー、移り気でマイペースな「自由人」の次女スー、泰然自若の振る舞いであだ名が「社長」の三女チー。三者三様のボケに母がツッコんだり絶句したりというユーモラスな日常がつづられています。当然のごとく子供を持つ身には共感するところの多いアニメですが、私が毎週見ているのはそんな理由からではありません。

 この番組は全編Flashアニメで、しかも製作はしにせの東映アニメーション。果たしてどんな映像に?というところに興味がありました。Flashとはウェブアニメでよく使われる技術で、コンピューターに動きを補間させるので何枚も絵を描かなくても簡単にアニメが出来るけど、機械が介在した動きは普通の手がきアニメに比べ素っ気なくて無機的――とまあ、私の知識と印象はこの程度。過去にFlashアニメがテレビで放映されたり映画になったりしたことがありますが、「動きのチャチさも笑える要素の一つと思ってください」といった感じの作りで、正直ピンと来ませんでした。

 さて実際のところ、「うちの3姉妹」はかなりの健闘を見せています。丸が基調のシンプルな絵柄にシンプルな動作、日常の他愛ない小ネタを並べていくという構成が、Flashと相性がよかったようです。あるいはそれに加えて、スタッフの工夫が隠されているのかも知れません。「鉄腕アトム」以来、テレビアニメは宿命のように省力化を求められ続けてきました。新たな技術というのは大概、手間を省くために導入されるもので、今回の東映の狙いもおそらくそこにあるのでしょう。「うちの3姉妹」はアラを感じさせない出来で、毎週毎週見ていると慣れもあってだんだんFlashであることを忘れてしまいそうです。

 これならたとえば「あたしンち」とか「サザエさん」もFlashで、なんてことになりはしないだろうか(望ましいとは思いませんが)。テレビアニメが手がきからCGに切り替わっていくことはなくてもFlash作品が増える可能性なら大いにあるのではないか?

 「うちの3姉妹」を見ながらそんな「妄想」が頭の中でモヤモヤと広がっているとき、隣でじっと画面を見ていた息子が突然、口を開きました。

 「これ、ぜんぶ手で書いてるんだよね?」

 「?!!」

 アニメの作画については以前、「ちょっとずつ違う絵を1枚1枚かいて作るんだよ」といった程度の説明をしただけなのですが、よりによってこの作品で、しかも「手がきアニメの未来とは」なんてことを父親がぼんやり考えているその瞬間に、どんな疑念を抱いたというのでしょう?

 「どうしてそんなこと訊くの?」

 「チキチキマシンに似てるから」

 どこが似てるんじゃい。息子のお気に入りの一つである「チキチキマシン猛レース」は約40年前の米国アニメ。もちろん手がきです。

 「くちびるがさぁ、おんなじ動きばっかりしてると思ったんだけど」

 キャラが動かず口だけパクパクという「不自然さ」に気がつき、脳内検索の結果「チキチキ」がヒットしたわけね。確かにあれも「口パク」多いけど、6歳のくせにどんな目でアニメを見ているのやら。

 この思わぬツッコミに、父は口をパクパク。恐るべし「うちの一人息子」。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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