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パンツと名前が悩みのタネよ

2008年7月14日

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写真「インクレディブル・ハルク」から、ブルース(右、エドワード・ノートン)とベティ(リブ・タイラー)。ノートンが理知的な主人公を好演、ラストのNY大乱闘は迫力あります。(C)2008MVLFFLLC.TM&(C)2008Marvel Entertainment.写真「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」から ギララってどことなくかわいいですね (C)2008ギララ製作委員会写真伊部首相(左)を演じるのはザ・ニュースペーパーの福本ヒデ写真G8首脳たちはミサイル、落とし穴、毒薬といろいろ作戦を考えるが…写真首脳たちが立てた珍作戦を指揮する高峰参謀(左、古谷敏)、鳴海長官(中央、夏木陽介)、木村参謀(右、黒部進)。特撮ファンにはおなじみの俳優たちです写真対ギララ作戦をリポートする記者すみれ(中央左、加藤夏希)とカメラマン三平(同右、加藤和樹)

 子供のころパンツに名前書くのってなんか恥ずかしかったなあ、とかそういう話ではありません。

 03年公開の映画「ハルク」では、観客の多くが「パンツ問題」に頭を悩ませました。緑色の大男に変身するアメコミヒーローをアン・リー監督、エリック・バナ主演によって映画化したのですが、身の丈2倍くらいのごっつい巨人に変身するときシャツも靴下もビリビリ裂けていくのに、パンツは破けずぴったりフィット。戦車の猛攻撃を受けてもパンツは破れずしっかりガード。そしてヒロインの目の前で体がシュルシュルと縮むと、多少ダブダブですがパンツはちゃんと腰にひっかかってる。「どんなパンツじゃ!」と多くの人が画面にツッコミを入れました。たぶん作り手も「どんなパンツじゃ!」と自嘲、苦笑だったことでしょう。

 しかし、8月1日全国公開の米映画「インクレディブル・ハルク」(ルイ・レテリエ監督、エドワード・ノートン主演)は、このパンツ問題から逃げることを潔しとせず、真正面から取り組んだ作品です(ちょっと大げさ)。主人公ブルースは序盤、工場で変身してしまい大暴れした後、森で目覚めるとパンツはボロボロのユルユル。ずり落ちるパンツを押さえつつ近くの市場で服を買います。差し出されたパンツに首を振り「もっと伸びるのを」。どうやら過去に何度も、変身がとけた後はずかしい思いをして懲りたようです。この後も、モーテルに潜伏中の主人公に恋人が特大のデカパンを買ってきます。「勘弁してくれよ」と顔をしかめる主人公に、恋人はニッコリ「あら一番伸びる素材なのよ」。パンツ問題、解決です。何で大暴れしても破けないかとか、何でハルクをまた映画化したのか、といった疑問は残りますが。

 この映画では、緑の怪物を目撃した若者が「廃船(hulk)みたいにデカかった」と話すニュースが流れ、これを聞いたらしいブルースが、クライマックスの対決で突然自ら「ハルク○○○○○!」と叫びます(このハジケっぷりには仰天)。03年「ハルク」では、「父がオレを巨人(ハルク)にかえたんだ」というセリフが出てきます。「hulk」には「廃船」「無用のデカブツ」という意味があるのですが、どうやって劇中にこの言葉を出そうか、それぞれの苦心がうかがえます。

 タイトルにその名前があるけど、劇中でそれを使うには誰かが命名してやらないといけない。これは怪獣や怪物が出てくる作品の作り手がしばしば直面する悩みです。怪獣なんてものはたいがい、エビラだのガメラだのガッパだのどうにもヒネリようのない直球の名前がついているのですが、古代の碑文にあったとか怪しげな科学者が名付けたとか「南国の人」っぽい人がそう呼んでるとか、そんな段取りで片づけられます。

 思い出すのは「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(01年)。よんどころない事情で、古代より日本を守る聖獣としてキングギドラを出さねばならないことになり、とはいえ「日本の聖獣」に「キング」なんて英語はつけられず…。いっそのこと「金グギドラ(金色のグギドラ)」にしてしまおうか、なんてほとんど冗談みたいな案もあったとか。苦心の解決策はDVDでご確認下さい。

 そして7月26日全国公開の「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」(河崎実監督)は、この命名問題から逃げることを潔しとせず、真正面から取り組んだ作品です(うそ)。サミットの最中に宇宙怪獣が飛来、G8は一転、怪獣退治の作戦会議に。「さあ、退治すれば支持率が上がるぞ!」と意気上がる首脳たちの真ん中に、野球帽のガキがひょっこり現れ「名前はギララがいいよ、目がギラギラしてるから!」。当然のごとくつまみ出されますが、名前はギララに決定。そういえば昔のガメラ映画とかに居ましたね、なぜか司令本部をウロチョロして思いつきで作戦を言い出したり、勝手に名前を付けたりする子供が。というわけで、「ギララの逆襲」のペロペロキャンデーを持って白いジャイアンツ帽を被ったこの「三丁目の夕日」な少年は、私にとって、会議中に腹を下してばかりの伊部首相よりウケました。

 でもこういった命名で、不思議と「マスコミでそう呼んでる」というパターンが記憶にありません(忘れているだけか?)。実際、スポーツ選手とかにあだ名をつけたり広めたりしているんですけど。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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