「デトロイト・メタル・シティ」は8月23日公開 (C)2008「デトロイト・メタル・シティ」製作委員会
クラウザーさんのライブシーンは燃えます
あま〜いポップソングの方はさっぱりウケません
「ダークナイト」のバットマン(クリスチャン・ベール) 公開は8月9日から TM&(C)DC Comics (C)2008 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved
謎の男ジョーカー(ヒース・レジャー)
バットマンは自分の存在がジョーカーを引き寄せたのか、と苦しみます
「俺は地獄のテロリスト!!殺せ殺せすべてを殺せ!」
「俺は混乱の使者。混乱を招くのは何か? 恐怖だ!」
なんて怖いことを言う顔塗りハイテンション野郎が大暴れする映画を2本見ました。ただしキャラクターは悪魔とピエロくらい違います。悪魔の出で立ちの方が実はピエロで、ピエロ顔の方が悪魔みたいなやつなのですが。冒頭に挙げた最初のセリフ(歌詞)は映画「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーさん、2番目は「ダークナイト」のジョーカーです。
「デトロイト・メタル・シティ」は同名の人気マンガが原作。悪魔メークで邪悪な歌詞を絶叫、喝采を浴びるデスメタルバンドのボーカルが、実はオシャレなポップソング好きの純朴な青年で、「ボクがやりたかったのはこんなバンドじゃない!」と悩みまくるお話です。「デスノート」の白塗り天才探偵「L」に続き、またも顔塗り奇人キャラに挑んだ主演の松山ケンイチがハマり役。悪魔メークで鬼神のごとく猛りくるうライブシーンは、楽曲のすばらしさもあって燃えます。「素顔」はマッシュルームカットの紅顔の美少年で「女の子走り」もかわいらしい。そのギャップの見事なこと。
惜しいことに素顔パートがちょっと演技過剰、演出もコミカルなドタバタを強調しすぎるきらいがあります。シチュエーションそのものが面白いのですから、そんなにキャラを作らず、笑わせようとしない方がもっと笑えたのでは。
「ダークナイト」はクリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演による「バットマン」シリーズ最新作。全米公開初日3日間で興行収入165億円という歴代最高記録をたたき出したそうです。かつてジャック・ニコルソンも演じた悪役ジョーカーに「ブロークバック・マウンテン」のヒース・レジャーが扮し、撮影終了後に急死したためこれが遺作となりました。
映画の基調はノーラン監督らしくシリアスで渋い味わい。なので、主演のベールもカッコいいのですが執事のマイケル・ケインや秘密兵器担当のモーガン・フリーマンといった渋いオヤジ連の方がもっと映えてカッコいい。対してレジャーは、「時計じかけのオレンジ」のアレックス(この人も奇妙な化粧してますね)にインスパイアされたそうですが、目つきや顔つきや姿勢を常に微妙にゆがませ、舌なめずりしつつ喉にひっかかるようなささやき声を発し、ピエロメークの不気味な快楽犯罪者を念入りに作り上げています。
「アカデミー賞もの」との声も出ているレジャーの熱演ですが、一つ難点が。この映画のジョーカーはマフィアのボスを手玉に取り、警察を翻弄し、手下を手足のように使い(しかも使い捨て)、要人誘拐、病院爆破、ビル占拠と次から次へ自由自在。このリアリズムを無視した万能ぶりがどうも映画の渋いトーンから浮いている気がするのです。かといってピエロづらの愉快犯が、綿密に練った犯罪計画を地味にコツコツってわけにも行かないし、演出がもっとハジけた方がよかったのでは…。
はて、抑えろだのハジけろだの正反対の勝手な注文をつけてしまいました。これもキャラの違いのせい? 悲哀を背負ったピエロを描くには日常が大事、カタストロフをもたらす悪魔を描くには非日常が大事なんではないか、などと理屈をこねてみましたが実際のところはどうなのか、スクリーンでお確かめいただければ幸いです。

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。