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世にも不思議な中村獅童

2008年9月22日

  • 筆者 小原篤

写真中村獅童さん写真映画「ICHI 市」ちらし 左下が万鬼です

 10月25日公開の映画「ICHI 市」の試写を見ました。綾瀬はるかさんが女版・座頭市を演じるというので「ソレハイッタイドンナモノ?」と見に行ったのですが、まったく違うところで「うひゃー」と驚いてしまいました。それは、敵を演じた中村獅童さん。いやまったくもって不思議です。

 獅童さんは04年にテレビのスペシャルドラマで丹下左膳に扮しました。ご存じ隻眼隻腕のヒーロー。同じ年に映画版で豊川悦司さんも美しき左膳を見せてくれましたが、獅童さんの方が殺陣で腰がガチッと決まっていて「さすが歌舞伎役者」と思いました。舞台でも左膳を演じた獅童さん、05年の映画「隣人13号」では左目の白濁した男「13号」を怪演します。これは、いじめられっ子の主人公(小栗旬)が宿した凶暴な第2の人格で、主人公の心を乗っ取りおぞましい暴力を振るいます。粘着質の芝居がこれまた怖いこと。

 このあたりから「おや?」と思うようになりました。

 やはり05年には映画「男たちの大和/YAMATO」で、勇気あふれる軍人・内田を熱演。大和が猛攻撃を受けるクライマックスで彼は左目を負傷しますが、それでも闘いを続ける様は鬼気迫るものがありました。そして06年、正月恒例のテレビ東京系ワイド時代劇「天下騒乱」での彼の役は、右目に黒い眼帯をし、不敵に笑う剣豪・柳生十兵衛――。

 ここらへんで「ちょっと待ったぁ!」と思いました。どうしてそんな役ばかり?(もちろんほかにもいろんな役を演じてますが) 獅童さんにインタビューするという知人のライターにその話をしたら、面白がって取材時に話題にしたそうです。ご本人は「あの役は…あれ? 右目だったかな左目だったかな」なんて笑っておっしゃっていたそうですが。

 そして「ICHI」。画面に登場した獅童さんは、宿場を荒らすならず者たちのボス・万鬼(ばんき)役。顔の傷を隠すため右の額から頬にかけて毛皮の飾りの付いた仮面をつけ、ギラギラした左目で敵をにらみつけます。「そういえば獅童さんも出るんだっけ」くらいの予備知識しかなかった私は思わず試写室のイスからズリ落ちそうになり(陳腐な表現を許して下さい)心の中で叫びました。「またですか!」

 この映画の監督は「ピンポン」(02年)の曽利文彦さん。そしてその「ピンポン」で獅童さんと対戦した窪塚洋介さんが、「ICHI」では宿場を仕切るヤクザの2代目。ラケットを刀に替えて再び対決する姿を見ながら、「そういや2人とも、『ピンポン』の後いろいろあったよなあ…」と妙な感慨にふけってしまい、綾瀬さん扮する市の活躍の方にあんまり集中できませんでした。

 それにしても中村獅童さん、不思議な俳優です。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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