2008年10月6日
ヘイいらっしゃい! 映画「猫ラーメン大将」から (C)そにしけんじ/マッグガーデン
マンガ「猫ラーメン」第1巻(マッグガーデン)
大将はタクシーもやってみたが、ネズミを見るとつい追いかけてしまい失敗
ラーメン店の常連の田中(左、加藤和樹)
これが父。顔はかわいいがやることはエグい。映画は11月下旬から東京・シネセゾン渋谷ほかで公開されます
私がひきょうなネコに籠絡(ろうらく)された瞬間をとらえた映像
ネコはひきょうです。ネコのかわいさを利用して人をダマそうとする人は、もっとひきょうです。しかし、ツレなくされてもネコを愛するのをやめられないように、ダマされると分かっていても人はつい「ネコもの」に手を出してしまうのです。
というわけで、そんなひきょうなネコ映画、「猫ラーメン大将」を見に行きました。監督は「いかレスラー」「コアラ課長」「かにゴールキーパー」の河崎実さん。「不条理どうぶつシリーズ」第4弾と自ら呼んでいるそうですが、ネコがラーメンを作るなんて映画をそんな人が撮ったのですから、これはもうダマされるに決まっています。もっとも、河崎監督のファンは映画を見終わって「チクショー! またダマされたよ」と悔しがるのが喜びなのですから、これはもう自己責任、自業自得というものです。
原作は、そにしけんじさんの4コママンガ「猫ラーメン」。ラーメン店を営む頑固オヤジ風の大将(ネコ)が、常連の田中さん(人間)に変なラーメンを食わせたり漫才のようなかけあいをしたりといったマンガです。いったいこれをどう実写化するのかと思ったら、大将はハンドパペットで、マンガのまんまのビジュアルで現れました。「驚異の特殊視覚効果〈スーパー・ギニョール〉方式」だそうです。ああ、またダマされた。いやしかし、人が入ったネコの着ぐるみでも、3DCGネコが出てきても、やっぱりダマされたと思うでしょうからこれは自己責任、自業自得です。
映画は、CMでキュートな魅力を振りまくキャットアイドルの父に反発し、大将が職探しをするところから始まります。肉球のついた手でスシを握るも、ネタをつまみ食いして寿司屋をクビになり、肉球のついた手でメスを握るも、驚いた患者が手術室から逃げ出して医師の道も閉ざされ…。ハンドパペットなので演技というほどの演技はできませんが、口をギュッと閉じて顔をしかめた表情が効果をあげ、何だかかわいく見えてきます。いやいや、こんなたわいない手にダマされてどうする…。
物語はこの後、芸能界を追われた父とラーメン対決をするのですが、人間の役者たちが演じる部分が冗長でギャグがぬるいのが残念です。もっと暴走して、バカバカしいパペット映画にしてほしいのですが。それでも、大将の声が古谷徹さん、スパルタ暴力親父の声が加藤精三さんという星飛雄馬・一徹コンビで、「おいら、カワイイ父ちゃんなんかいらないやい!」とか「きさまに日本一の負けネコの烙印を押してやる」と言ったりするのでたまりません。どこまでもひきょうな映画です。
コラムのネタにしようかどうしようか迷いながら試写室を出たら、宣伝担当の方が大将のハンドパペットを差し出し「持ってみます?」。手を突っ込んで、大将の口を開けたり顔をしかめさせたり。うひゃうひゃ、これはかわいい…。
ああ、やっぱりダマされた!

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。