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長寿アニメは「生きている化石」の宝庫

2008年11月24日

  • 筆者 小原篤

写真「サザエさん」第1巻(朝日新聞出版) 「代用食」とか「引揚」など時代を感じさせる言葉がいっぱい写真DVD「ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い」(ポニーキャニオン) デザインをリニューアルしたキャラクターと新声優陣によりシリーズ屈指の名作をリメーク写真DVD「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(バンダイビジュアル) 抑制のきいたラブストーリーが涙を誘う、私の大好きな作品です

 11月16日にアニメ「サザエさん」40周年記念スペシャルが放映されていました。放映が始まったのは69年なのでちょっと気が早いように思いますが、いずれにしても40年とはすごいものです。

 波平の和服姿を見て、ふと思い出しました。そういえば私が子供のころ、サラリーマンの父は家に帰ると和服に着替えました。私は昼間、押入に放り込んである帯を投げ縄にしたり、怪獣人形を結びつけて振り回したりして遊んでいたものです。「父は和服」という習慣は、我が家では私が小学生の間に消滅していった気がしますが、「サザエさん」では「母は和服に割烹着」と共に今なお生き続けているわけです。

 長寿アニメには、気がつけばそんな「生きている化石」のような生活習慣や風俗を見ることが出来ます。来年30周年を迎えるテレビ朝日系「ドラえもん」では、例えば「土管の置いてある空き地」。よく考えれば、放映開始時点で既にあれは「懐かしい風景」だったのではないかと思いますが、私の家の前には草ボウボウの庭というか空き地みたいなものがあり、その隣は工事車両の駐車場だったので、子供の私の感覚としては「土管の空き地」は日常と地続きの光景でした。

 放映開始当時は当たり前だった「のび太の半ズボン」も、今となっては「生きている化石」でしょう。私の子供の頃はガキはみんな真冬でも半ズボン。長ズボンは「ちょっと大人」あるいは「ちょっとおしゃれ」みたいな感覚がありました。「ドラえもん」も、現在のオープニングではスネ夫とジャイアンがハーフパンツ姿を見せています。でものび太は太もも丸出しの半ズボン。断層が出来て古い地層と新しい地層が隣り合っているようなものですが、のび太はやっぱり半ズボンが似合います。のび太のパパも「家では和服」のイメージ(原作マンガがそうなので)。さすがにアニメではもう着ていないかな、と思ったら、先日見た回で着ていたのでちょっと驚きました。当然ですが、カツオは半ズボン。ワカメの後ろ頭刈り上げヘアーもパンツ丸見えスタイルも「生きている化石」ですね。ちなみに、97年開始の「ポケットモンスター」のサトシは、以前はジーンズ風の長ズボンでしたが今はカーゴパンツ。きっちり時代を反映しています。

 92年開始の「クレヨンしんちゃん」はとても現代的な作品というイメージがありますが、1年ほど前、「もしや化石では?」というポイントに気がつきました。5歳のしんのすけとその友達は、子供だけで外を歩き回り公園で遊んだりします。まったく当たり前の光景に見えますが、どうも最近はそうでもなさそう。カミさんに聞くと、現在小1の息子が幼稚園のころ、子供だけで外に出す家庭は周りにはなかったそうで、ウチも例外ではなく、独りで外を出歩くのは小学校通学が初めてとなりました。まあそりゃあね、私だって幼稚園のとき外を遊び歩いて道路に飛び出して車にひかれてひきずられちゃって命は落とさずに済んだけど顔に今も残る傷をこさえたりしましたし、危険がゼロじゃあないことは無論承知していますが、今のお母さんたちって心配のし過ぎじゃあないの?

 「タラちゃんだって外を出歩いているけど、設定じゃ3歳だよ」とカミさんに言ったら

 「まあ!ダメじゃないですか」

 今の常識では、サザエさんの教育方針は間違っているらしいです。「サザエさん」の世界では、イクラちゃんは独りでお出かけしてはいけないけどタラちゃんくらいからオッケーなのに。

 カミさんが口をとがらせて反論します。「ウチはそんなでもないよー、よそのお母さんは携帯メールで不審者情報とかチェックしてるよ」

 ああ、あれですね、自治体や警察から送られてくる「男が通りがかりの子供の体を触った」とか「男が路上でズボンを脱いだ」といったメール。ただ、ある県警の「不審者情報等の掲載例」には「子どもが電柱のかげに立ちひとりごとを言っている不審な人を見かけた」なんていうのがあって、こんなことも「不審者」として通報すべき、発信すべき、というのは過剰反応という気がするのですが…。

 勤務の都合上、私は平日の真っ昼間にブラブラしている(ように見える)ことが結構あります。そんなとき、息子の友だちと勘違いして見知らぬ子に声をかけたりしたら通報されるのでしょうか? 「不審者」扱いは、地方勤務時代の夜回りで警察官の家の前で帰りを待っていた時なんかに経験済みとはいえ、今さらそんな目にあうのはイヤだなあ、うかつにあいさつも出来ないのかなあ。それとも、これは心配のし過ぎでしょうか?

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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