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息子の名前を「ハム太郎」にしたら

2008年12月1日

  • 筆者 小原篤

写真DVD「劇場版とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険」(コロムビアミュージックエンタテインメント)写真DVD「劇場版デ・ジ・キャラット 星の旅」(メディアファクトリー)写真これは劇場版の後にテレビ化された「あずまんが大王」のDVD第1巻(キングレコード)

 今月、息子が7歳の誕生日を迎えます。実はその出生には、アニメが深く関わっているのです。というか、私がアニメ漬けの日々を送っているから当たり前なんですけど。

 01年12月、ほぼ予定日に破水したカミさんはすぐ近くの大学病院に入院。しかし4日たっても産まれる気配がないので5日目の朝、陣痛促進剤を使うことになりました。点滴の管からポタリポタリ。ベッドのカミさんが「ウーン、ウーン」。背中や腰をさする私。ベテランらしい看護師さんが様子を見に来て「あら、まだみたいね。もうちょっと多くしましょうか」。クイっと栓(?)をひねるとポタポタの頻度が増し、カミさんが「ウーン、イタタタ!」。理科の実験みたい、と思ってちょっとおかしかったのですが、笑うわけにはいきません。背中をさすり続けます。

 だがしかし、この日は月曜日。すぐには産まれそうにないので、仕事に行くことに。

 「じゃ、すまないが行ってくるよ」ギュッと手を握る私。

 「私は大丈夫だから、行ってらっしゃい」笑顔を作ってうなづく妻。

 とまあこんな麗しい夫婦愛の一場面の後、私が直行したのは東宝の試写室。「劇場版とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険」を見ました。「あしたのジョー」「エースをねらえ!」の出崎統監督がハム太郎を映画にしたというのですから、お産の妻をおいても見ないわけにはいきません――というのは半分はウソで、月末掲載の「アニマゲDON」トップに出崎監督インタビューを予定していたので、見ないと取材にならないのです。

 「スピード感と密度がさすが」「暗い空に虹色の雲がいい」「出たぞ3回PAN!(出崎さん得意の演出技法)」などと映画を楽しみつつも、お産の方も気になります。

 「コレ見ている間に産まれちゃったりして…そしたら名前はハム太郎――ってわけにゃいかないな、そうだ、ハムを縦に書けば公だから公太郎にすればいいじゃないか」(注:この男は間もなく父親になるというので多少動転しています。許してやって下さい)

 見終わってナースステーションに電話。「産まれそうですか?」「もうちょっとかかりそうですね」。というわけで今度は東映の試写室へ。この日は取材を入れず原稿も前週のうちに出しておき、予定は試写のみにしておいたのです。「デ・ジ・キャラット」と「あずまんが大王」を見て「でじこはかわいいなあ」「産まれてくるのは男の子かな女の子かな」「ちよちゃんはかわいいなあ」などとモヤモヤ考えながら鑑賞終了。

 「さて、まだ産まれそうにないなら、次は京橋で『WASABI』を見ようか」と思ったら、電話口の看護師さんが「そろそろじゃないかと思います」。急ぎ駆けつけ分娩室の前で待ちますが、1時間たっても産まれません。いきんでいるのだが力が足りないそうで、「子供の頃からの運動嫌いがこんなところでたたったか」と思いましたが、やがて赤ん坊の泣き声が。先生がニコニコやってきて「おなかを押したら出ました」。まあ、無事に産まれりゃ言うことはありません。

 最近の産科医療の記事などを読むと、我ながら何とノンキな父親だったか、と思います。ちなみに、「公太郎」はやめました。ハム太郎からつけたと言ったら本人が怒るかもしれないので(全国の公太郎さんゴメンナサイ)。その代わり、私が仕事とするアニメとマンガと映画、どれにもちょっとずつ関わりがある名前をつけました。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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