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オタクも歩けば「萌え」に当たる

2008年12月15日

  • 筆者 小原篤

写真「ムコ入り」後にメスとわかったツヨシ=釧路市動物園提供写真「ラースと、その彼女」は12月20日公開写真「我が至上の愛〜アストレとセラドン〜」は来年1月公開写真「WALL―E ウォーリー」は全国公開中。右がウォーリー、左が汚染除去ロボ。動くとかわいいよ写真「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」は全国公開中写真チラリ

 動物園がおムコさんに迎えたホッキョクグマ、相手と仲がいいけど実はメスだった――という出来事がありました。これを「新郎は美少女!」と言い換えるとあら不思議、なんだか百合マンガ(百合=女性同性愛もの)みたい。逆なら「花嫁は美少年!」で、これはボーイズラブ。んで、ここからガッと妄想に入ったりすれば相当な猛者なのですが、私はまだその域に達していないので、もう少しライトに「萌える」話題を。

 米映画「ラースと、その彼女」は、内気な青年とラブドールの愛と癒やしの物語です。主人公ラースが同居の兄夫婦に「僕の彼女だよ」と等身大の女性人形「ビアンカ」を見せます。ビアンカを人間と思いこんだかのようなラース。兄夫婦と田舎町の住民たちは医師のアドバイスに従いラースとビアンカをそのまま受け入れます。これが「ビアンカにやがて生命が宿り…」となると萌え系なネタになり、このままラースが暴走を続ければイタいイタい話になるわけですが、この映画はそんなことをせず距離感絶妙な語り口により、人の心の危うさ、そして崩壊寸前で踏みとどまるそのたくましさを描き出します。兄嫁がビアンカのスカートの中をのぞいてゲッとなるといった際どい笑いの一方で、ビアンカを大切に扱う住民たちの姿には崇高ささえ覚えます。ビアンカも(好みのタイプではないけれど)なかなかの「名演」を見せてくれます。

 「我が至上の愛〜アストレとセラドン〜」はフランス映画の名匠、88歳エリック・ロメール監督の最新作(本人は「最後の長編」とも)。羊飼いの娘アストレにフラれた青年セラドンは、自殺未遂のあと潜んでいた森で、お昼寝のアストレを見つけあらわな太ももにドキドキ、たまらずキスしかけたら目を覚ましそうになり慌てて逃走。次は女の子に化けてアストレに近づきベタベタ、寝室を共にすることになり髪をとかしてやりつつあらわな胸にまたドッキリ。まるでどこかのエッチなラブコメです。5世紀のフランスを舞台にした17世紀の小説が原作で、まさかこんな話だったとは。試写室で私の隣の隣に座っていた蓮実重彦先生(実はゼミを受講していたことがあるのです)は、どんな評を書くのでしょうか。

 米CGアニメ「WALL―E ウォーリー」は、オンボロロボットの前に美少女ロボが空から降ってきて、という萌え系っぽい設定なのですが、ダメ男の純情に勝ち気な女がほだされて、という展開はむしろ古風な味わいです。それよりも、汚れをまき散らすウォーリーの後をチョコチョコついて回ってちまちまと拭きとるちっちゃな汚染除去ロボ、萌えます。外見は「あたしンち」のユズヒコの級友の石田に似ています(ちょっと強引か?)。思いもよらぬところに突然感じてしまう魅力、これこそ「萌え」というものです。

 しかし、私が見たこの冬公開の映画で最大の「萌え」はコレです。「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」。ストーンズのライブをマーチン・スコセッシ監督が撮ったドキュメンタリー。試写室のイスから何度も腰が浮きそうになるくらい、演奏のカッコよさにしびれました。白眉は、キレまくった動きで歌い踊るミック・ジャガーの腹筋チラ見せ攻撃。軟らかなシャツが翻ってチラリ、ミックが裾をちょっとたくしあげてまたチラリ。どんなアイドルもかなわない悩殺ポーズでキメてくれます。63歳(06年秋の収録時)のじいさんの割れた腹筋に萌える! シロクマのボーイズラブも及ばぬ高みですが、これは私がその域に達したのはなく、ミックが超人の域に達しているからなのでしょう。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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