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愛と怒りの冬休みアニメ

2008年12月22日

  • 筆者 小原篤

写真「劇場版MAJOR(メジャー)友情の一球(ウィニングショット)」 (C)2008満田拓也/劇場版「MAJOR」製作委員会写真「劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ」 (C)久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ (C)劇場版BLEACH製作委員会2008イラスト「劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」 (C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション (C)「2008 ゲゲゲの鬼太郎」製作委員会写真「トミカヒーロー レスキューフォース 爆裂MOVIE」 (C)2008「劇場版トミカヒーロー レスキューフォース」製作委員会写真「ピューと吹くジャガー いま、吹きにゆきます」 (C)2009「ピューと吹く!ジャガー」FLASH MOVIE製作委員会写真「映画!たまごっち うちゅーいちハッピーな物語!?」 (C)2008 Teamたまごっち

 アニメに限らず「表現」というのは、だいたい反道徳的な要素を含んでいるもので、「不健全なもの」を無理に除去しようとすれば全体がやせ細ってしまいます。なので、エロはいけませんとかグロはやめましょうとか、そんなことは言いたくも聞きたくもないのですが、たまに怒らずにはいられないことがあります。

 本欄でも以前に触れた米CGアニメ「WALL−E ウォーリー」(公開中)。すでにご覧になった方も多いかと思いネタバレ承知で書きますが、生物が住めぬほど地球環境を破壊してしまった人類が、巨大宇宙船の中で700年も物質文明を謳歌(おうか)しているという展開は余りにヒドい。話の前提は「資源・環境は有限」でなかったの? 宇宙船の内部は巨大ショッピングモールのようで、宇宙だろうがどこだろうがウォルマートがあれば生きていられるとアメリカ人は思っているようです。

 生活すべてを万能イスみたいな機械に依存している人類はもう、ぶくぶく太って自力歩行も困難だというのに、わざわざ地球に戻りたがるのも不可解なら、ゴミの山の片隅に緑が芽吹いた程度の荒野でハツラツと開拓生活、なんてラストもさらに無理があります。ロボットたちはとてもかわいくけなげなので、思わず「地球に戻ってくるのはロボットだけでいいよ」と不健全なことをつぶやいてしまいます。

 「劇場版MAJOR(メジャー)友情の一球(ウィニングショット)」(公開中)は、人気野球マンガを原作としたテレビアニメの劇場版。メジャーリーグを目指す剛球左腕の主人公・吾郎の少年時代を振り返りますが、宣伝文句は「なぜ、吾郎はサウスポーになったのか?」。そして吾郎少年が、酷使してきた右肩の痛みをこらえ大一番で熱投する姿をドラマチックに描きます。

 これで、この映画のポイントも結末もお分かりでしょう。魔球とびかう非日常な世界ならそれもいいでしょうが、この映画は世の野球少年たちにかなり近いリアルな世界。原作もテレビアニメも、少年ファンの共感とあこがれを集めてきたのがウリのはず。そんな作品で堂々と、成長期の子供の身体にとてもよろしくない行為を長々とドラマチックに描いていいものでしょうか。「教育上よろしくない!」などと言い立てるのは野暮としても、息子を持つ父親として見れば、この映画は「この子がこのまま走り続ければやがて車にひかれると分かっていながら延々とその走る姿を見せられる」ようなもの。素直には楽しめませんでした。

 さて、言いたいことをはき出してスッキリしたところで、そのほかの冬休みアニメを紹介しましょう。「劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ」(公開中)は、いつもの仲間が敵になり主人公が苦闘、最後は大怪獣相手の必殺技メドレーと、スケール感はあるものの既視感の強い内容です。アクションに押されてどうもドラマ部分が薄く感じるのも前作などと同様ですが、見る側の脳内で補完+増幅(妄想とも言う)するのが正しい鑑賞法なのかも?

 「劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」(公開中)は、鬼太郎が鏡の中に閉じこめられたり、日本中に妖怪たちがあふれ出したり、列島を覆わんばかりの巨大妖怪が出現したりと、約80分の作品ながら盛りだくさん(併映の短編では初代〜5代目の鬼太郎が一堂に会するというサービスっぷり)。でも、敵のキャラクターデザインや鬼太郎の最後の大技が「ドラゴンボール」に似ているのがちょっと残念。原作の水木ワールドらしい、もう少し肩の力を抜いた話でいいのでは?

 ついでに(と言ってはなんですが)特撮も。「トミカヒーロー レスキューフォース 爆裂MOVIE」(公開中)は、暴走列車を止めるべくレスキューフォースたちが活躍する物語ですが、ギンギンギラギラのハイテクトレインよりも、ゲスト出演の藤岡弘さんがギラギラと貫禄たっぷり。ビシッと黒スーツで登場、「若造が、くさいセリフを吐きやがる。ハッハッハッ」なんてセリフをキメて、若い俳優らを食ってしまいます。

 「ピューと吹くジャガー いま、吹きにゆきます」(1月1日公開)は人気ギャグマンガを原作としたFROGMAN監督によるフラッシュアニメの映画版です。ファンタジーアドベンチャーっぽい異世界に迷い込むジャガーさん一行、謎の軍団に狙われるお姫様。妙に王道な展開をゆるーいキャラとゆるーい映像で見せます。このギャップのムズムズ感が魅力?

 そして冬休みアニメ一番のオススメはこれ。「映画!たまごっち うちゅーいちハッピーな物語!?」(公開中)。主人公まめっちは得意の発明で、人々から幸せを集めて分け与える「ハピハピっち」を生み出します。「でも、本当の幸せって何だろう?」そんな疑問を抱いたとき事件が。ふしぎな力を持つ絵本が暴走し、街を飲み込む嵐が発生します。まめっちたちは暴走を止めるため絵本の中の世界に入り、失われた結末を書き加えようとしますが、幸せを求め冒険の旅を繰り返してきた絵本の主人公がつぶやきます。「本当の幸せが何か、分からなくなった」

 深いテーマがシンプルに提示され、セリフに頼らず映像で語り、伏線も張って地に足のついた結論に着地。ゲストキャラもしっかり役目を与えられ、それぞれのドラマにケリがつく。これだけキレイに話がまとまった長編アニメは久しぶりです。背景も、まさに絵本の世界のような温かみがあり、さらにデジタル技術を使った仕掛けや工夫もいろいろ。隅々まで行き届いています。

 それと、ハピハピっちの声のこおろぎさとみさん、かわいさ爆発で萌え萌え(あ、これじゃ前回のネタか)。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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