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息子の奇妙な愛情、または結膜炎

2009年1月12日

  • 筆者 小原篤

写真わが家にあるホームズ関係の本いろいろ写真同人誌に連載していたイラストつきエッセー

 09年は体の不調と共に始まりました。ずっと風邪っぽくて、現在は結膜炎で目が真っ赤っかです。目がどろ〜んとしているとアタマまでドロ〜ンとしてきます。

 今年はどんな年かというと「機動戦士ガンダム」30周年、ということは「カリオストロの城」もテレビ朝日版「ドラえもん」も30周年、「サザエさん」放映40周年、「ヤマト」と「ハイジ」は35周年、「ビューティフル・ドリーマー」「ナウシカ」「マクロス 愛・おぼえていますか」25周年、「ゴジラ」は55周年。ちょっと調べたら、ディズニー「シリー・シンフォニー」80周年、人形アニメの巨人トルンカ没後40年、アニメと関係ないけどチャプリン生誕120年、おや、コナン・ドイルは生誕150周年。

 実は、アニメは子供の頃から好きでしたが、「趣味」としての歴史は「シャーロック・ホームズ」の方が古いのです。小学生の時はジュブナイルを愛読し、中高生ではホームズ研究(シャーロキアーナ)の本を図書館で漁り、大学の文芸サークルも元々はホームズについて書きたくて入りました。海外のパスティーシュ(ホームズのキャラクターを借りた小説)の翻訳や、和田誠さんをマネたホームズのイラストなどを発表したものです(なので入社後、和田さんからイラストを受け取る仕事を担当した時は感激しました)。ちなみに歴史的にみても、パロディーはもちろんコスプレも「聖地巡礼」もシャーロキアンがオタクに先んじています。人のやることは昔から変わらないということですね。

 さて、同人誌に書きたくっていたアニメとホームズのうち、アニメは仕事になりましたがホームズとはとんとご無沙汰。しかし、思わぬところからご縁が復活しました。きっかけは、息子(7歳)と「ドラえもん」。

 「ドラえもん」のマンガ「シャーロック・ホームズセット」を読んだ息子は私の本棚にその「シャーロック・ホームズ」がズラズラ並んでいるのを思い出し、何を思ったか夜、その1冊を突き出して私に読めと言いました。

 「これ、オトナ用だよ?」

 「いいの」

 私の膝を枕に、毛布をかぶってゴロリ。仕方ないので「クリスマスがすんで二日目の朝、私は季節のあいさつをしたいと思って――」と読み始めると黙って聞いています。10分ほどで、気持ちよさそうに寝入ってしまいました。

 以来数カ月、いったい何が気に入ったのか、寝る時間に私が家にいると必ず文庫本を持ってきます。昨日は「ぶな屋敷」、今日は「ギリシャ語通訳」…とんだシェヘラザードですが、息子は大概、ホームズが依頼人の話を聞いているあたりでグゥ。さっぱり捜査に入らないし、そもそもどれくらいアタマに入っているのやら。

 先夜、寝たかと思って顔をのぞきこむと、パチッと目を開け「ねえ、コナンと鬼太郎って同じ声の人?」。半醒半睡で脳のおかしな回路でも開いたのでしょうか? この場合のコナンとは、ホームズの生みの親コナン・ドイルではなく名探偵コナンのこと。

 「いやー、そうだよ、高山みなみって人がやってるんだけど、誰かから聞いたの?」

 「ううん、声が似てるって思ったから」

 「へーすごいねえ、あなたはもうこの道に進むしかないなぁ」

 「それって、探偵ってこと?」

 あそう、目指すのは探偵なのね。私が考えた「道」へも勝手に進みそうだけど。

 ほぼ二十年ぶりに読むホームズの世界。馬車にガス灯、パイプに暖炉、霧のロンドンにつかの間心を遊ばせ、ふと目を落とせばひざの上で寝息を立てるわが子。自称シャーロキアン生活30年(うち休止20年)、こんな幸せが待っていようとは、人生なにが起こるかわかりません。

 でも目が痛い。これじゃ原稿書きなんてやってられない。目医者に行かなくちゃ。――ああそういえば、コナン・ドイルは眼科医でした。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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