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今年も選んだマンガ大賞

2009年3月30日

  • 筆者 小原篤

写真2次選考に残った作品。これだけ読みました書影マンガ大賞に選ばれた「ちはやふる」。講談社から4巻まで刊行、「BE・LOVE」で連載中写真授賞式のプレゼンターは昨年「岳」で受賞した石塚真一さん(左)。末次由紀さんの代理で担当編集の坪田絵美さんが受け取りましたイラスト末次さんから実行委に贈られたイラスト

 昨年4月に本欄「マンガを読むのも仕事のうちよ」で書いた「マンガ大賞」の選考に、今年も参加させていただきました。さあ「書店員を中心にした各界のマンガ好きが選ぶ、2008年の一押しマンガ」に選ばれるのは?

 1次選考で私が推したのはこの5作。背中で泣いてるオヤジが哀しい羽海野チカ「3月のライオン」、最終巻が待ちきれないこうの史代「この世界の片隅に」、本欄「時代を映す『マンガ家マンガ』」でも取り上げた小林まこと「青春少年マガジン1978〜1983」、化けっぷりに驚いたカラスヤサトシ「おのぼり物語」、一品でなく献立で料理を考えるところに共感してしまうよしながふみ「きのう何食べた?」。意識してなかったのですが、なんだかしみじみと切ないハナシが並びました。前回に続き女性作者の方が多いことに、改めて私の好みを再確認。

 前回と同じ作品を入れなかったのですが、これは別に評価が下がったからではなく、いいマンガはほかにもたくさんあるのでそれらを紹介した方が私も本欄読者も面白いかな、と思ったもので。気分屋ですみません。

 どうせなら作者もぜんぶ前回と違う人に、という私の目論みは「おのぼり物語」を読んで砕かれました。「上京体験を得意の自虐ギャグでつづる、と思ったらジワジワ小ネタが効いてきて、終盤はホロリ。人の世の無常、そんな哀切さを滑稽味にかえる、『俳味』を感じさせるラストに感服」というのが選考につけたコメント。というわけでカラスヤサトシさんだけ2年連続。チクショー、負けた負けた(何の勝負だ?)。

 89人が投票した1次選考の結果、2次選考に進んだ上位10作はこの通り。小山宙哉「宇宙兄弟」、羽海野チカ「3月のライオン」、安倍夜郎「深夜食堂」、小林まこと「青春少年マガジン1978〜1983」、中村光「聖☆おにいさん」、末次由紀「ちはやふる」、河合克敏「とめはねっ! 鈴里高校書道部」、島袋光年「トリコ」、東村アキコ「ママはテンパリスト」、久保保久「よんでますよ、アザゼルさん。」

 私と同じような考えの人が多かったのかどうか分かりませんが、前回とかぶるのは「とめはねっ!」1作のみ。読んでない作品が半分以上あり、私もまだまだ精進が足りません。また今年も、どさどさ買い込んで読みまくるマンガマンガマンガの日々の末、このように点を入れました。

 1位「青春少年マガジン」、2位「3月のライオン」、3位「聖☆おにいさん」。

 実は「聖☆おにいさん」は1次投票で挙げたかったくらい好きですが、「私が入れなくても候補になるだろう」と読んで、実際その通りでした。なのでこの3作で迷ったのは順位くらい。87人が投票した結果、大賞は「ちはやふる」に決まりました。

 「ちはやふる」は競技かるたの世界を舞台に、「女王」を目指す女の子と男の子2人を描く正統派少女マンガ。競技かるたはスポーツの要素(勝負の駆け引き、団体戦のチームワークなど)と文芸の要素(恋の歌がたくさん)を併せ持ち、「なるほど題材に選んだのは慧眼」とうならされましたが、競技経験者である担当編集者の提案だったそうです。

 盗用事件を起こし一時活動を休止していた末次さんは、「受賞には涙が出るほど感動していますが、自分のおかした間違いがあり、まだこういう場に出ていける人間ではない。一生懸命マンガを描いていくしかご恩返しはできない」との理由で、24日の授賞式には欠席しました。実行委員会に寄せたお礼のイラストは、書店にポスターやポップとして飾られるほか、選考に参加した書店員さんのお店などで原画も巡回展示されるそうです。このマンガ大賞が「復活」を応援するいい機会になったことを、選考員の1人としてうれしく思います。

 なーんて、2次選考で点を入れなかった人間が偉そうに言っちゃいけませんね。「3人の恋愛がもう少し動き出すのを見てから」と思ったんですよぉ(言い訳)。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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