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1面トップはロボットアニメ

2009年4月6日

  • 筆者 小原篤

写真コミックボックス98年5月号でこの記事を取り上げていただきました。肝心の紙面は、大事に保存してあるはずですが見つからず(とほほ)写真製作会社サンライズの最寄り駅(西武新宿線上井草駅前)に立つガンダム像。名古屋には建てないのかなあ?=東京都杉並区

 1997年12月22日、朝日新聞(名古屋本社版)夕刊1面トップは「テレビアニメ『脱ロボット』 『ガンダム』の名古屋TV制作枠」という記事でした。縮刷版として残る「東京本社版」ではありませんが、弊紙の1面トップをアニメ記事が飾ったのはこれが初めてではないかと思います。夕刊を手に取り「ガオガイガー」と「ビーダマン」の写真が並んでいるのを見た愛知・三重・岐阜の読者は何を思ったでしょうか。ちなみに、1面左上(新聞用語で「カタ」と呼ぶ位置)の「株価急落」の記事をトップにするべきだ、という投書が1通来ました。

 当然のごとく、こんなことをやらかしたのは私。この年の4月、内勤から3年ぶりに取材現場に戻った私は、飢えたオオカミが解き放たれたように手当たり次第にネタに食らいつき(ちょっと大げさ)、さらに隙あらばアニメの記事を書いてやろうと目をギラつかせ夜ごとキバを研いでいました(かなり大げさ)。

 名古屋社会部に異動した時から、私には目算がありました。「名古屋で、アニメといやあ、ガンダムしかないだろう!」。「機動戦士ガンダム」が名古屋テレビ製作であることはオープニングクレジットを見れば誰でも分かることですが、我ながら何という短絡思考でしょう――というか、名古屋でアニメといえばガンダムしか思いつかなかったんですね。しかしこれが図に当たるわけで、世の中わかりません。

 「無敵超人ザンボット3」以来、「ガンダム」や「勇者シリーズ」など数々のロボットアニメを送り出してきた名古屋テレビ製作のアニメ枠がロボットものをやめると聞き、「今の子にとってロボットって魅力がないのでは?」といった考察を交えつつ歴史を振り返る記事を企画しました。デスクを口説く文句は「知ってます? ガンダムって名古屋生まれなんですよ」。そうです、本欄「パバロッティは倒れなかった」(09年2月16日)で書いた通り、「名古屋発祥」とか「名古屋が一番」というネタは読者に喜ばれるのです。

 これに乗ったデスクもデスクだと思うのですが(ごめんなさい)まんまと1面トップを獲得。この年は「もののけ姫」と劇場版エヴァがあり、社会的にアニメの存在感が増したことも間接的な後押しになったかも知れません。

 その日の昼過ぎ、刷り上がった1面をニヤニヤながめ「こんなことは2度とない。この紙面は棺桶に入れてもらおう」などと思ったものです。アニメに冷たい(とファンに評判の悪い)大新聞のドテっ腹を中から食い破った気分は、まるで「侍ジャイアンツ」の番場蛮のよう――なんて言ってもアラフォー世代にしかわからないたとえですね。「クジラを倒すにゃ腹の中から」とか言って巨人をぶっつぶすために巨人に入るんですよ、番場蛮って人は。でも結局、巨人のためにせっせと働くわけで、同じように(?)私もこのあと会社のためにせっせとアニメの記事を書き、図らずも「千と千尋の神隠し」ベルリン映画祭グランプリで2度目の1面トップを経験してしまいました。

 さて、本欄を始めてからまだ1年5カ月ですが2度目の異動です。4月から古巣である編集局・文化グループに戻りました。担当は主に映画、加えて美術、そしてマンガやアニメや特撮も。再び取材現場に戻り血に飢えたオオカミのように…てのは大げさですが、果てさて、3度目の1面トップって、あるのかなぁ。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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