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腐女子はスター・トレックがお好き?

2009年5月18日

  • 筆者 小原篤

写真DVD「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!」(東映) 左にいるのがモモタロスです写真映画「スター・トレック」は29日公開。スポック(左、ザッカリー・クイント)とカーク(クリス・パイン)写真インタビューに答えるJ・J・エイブラムズ監督=東京都内で写真DVD「クローバーフィールド/HAKAISHA」(パラマウントホームエンタテインメントジャパン)

 私は腐女子になりたい、とは思いませんが(男ですし)腐女子的感性は少々でも身につけておきたいと願っていました。オタクネタを飯のタネにしているわけですし、全方位外交のオールラウンダーが理想ですから。

 しかし、「やおい」の道は険しいのです。子供の絵本を見ながら「ぐりとぐらでは、どっちが受けでどっちが攻めだろうか」とか「だるまちゃんとてんぐちゃんでは、やっぱりてんぐちゃんが攻めなのか」とか、親としてどうかと思えるような思考実験を試みても、なかなか腐女子的な感性にシンクロすることはできません(何かが根本的に間違っているかも知れません)。

 「仮面ライダー電王」のモモタロスが腐女子に大人気、と聞いた時も「ええっ、こんな鬼だかナマハゲみたいな奴に萌えるのか!」と驚き、何も感じなかった自らの不明を恥じました。マンガ「となりの801ちゃん」を読んだら、作者の恋人である腐女子の801(やおい)ちゃんは一発でモモタロスに食いついているではありませんか。

 そんな私でも、NHKの大河ドラマ「天地人」には、「これは狙い過ぎじゃないの」と思うくらい腐女子への露骨な秋波を感じます。甘いのやら辛いのやら濃いのやら、とりどりそろえたイケメン俳優。時代的にこれでいいの?と心配になる素敵なヘアスタイル。今度「天地人」は携帯マンガにもなり、その絵柄が「ボーイズラブ」風なんだそうです。まあ、戦国武将と男色というのは、切っても切れないというか切れたら血が出るというか、そんな関係だからいいんですかねえ。

 さて、29日から公開される米映画「スター・トレック」。言わずと知れた長寿SFの11本目の映画ですが、今回描かれるのは最初のテレビシリーズの前日談。カーク船長と副長スポックの若き日の出会いです。カークは元不良の熱血野郎、ちょいとおバカだけど仲間思い。スポックは屈折エリート、普段は冷静で論理的だが出自にコンプレックスがありそこを突かれるとムキになる。どうです、いかにもやおいなこのキャラクター。米国にもやおい文化があり(「スラッシュ」と呼ぶ)聞いた話ではカークとスポックはその最も古典的な組み合わせだそうです。もちろん映画の中で2人は愛し合ったりしません。初めは反目し、やがて認め合い、力を合わせて闘い、信頼で結ばれるのです。どうです、いかにもやおいなこの展開。

 J・J・エイブラムズ監督が先日来日したので、直撃インタビューしました。

 「スラッシュ? ああ知ってるよ。女性ファンの間では2人の『仲』は有名だからね。ファンが過去の映像の断片をつないで2人のラブストーリー風に仕立てたビデオをネットで見たこともある。僕の考えでは、カークとスポックは兄弟というか、陽と陰というか、互いにない部分を持っていて2人で完結する一つのチームみたいなもの。互い尊敬し、そういう意味では深い『愛』がある。エンタープライズ号の乗組員たちはみんな、そんな絆で結ばれているんだ。この映画がスラッシュの元ネタとして魅力的だって? 僕もそう思うよ(にやり)」

 ちなみに今回の「スター・トレック」は、シンプルで楽天的なSF冒険物語です。SFはかつて持っていた「明るい未来」を取り戻すべきだ、という作り手の思いを感じました。エイブラムズ監督は、プロデューサーを務めた映画「クローバーフィールド/HAKAISHA」でゴジラと9・11を見事に融合してリアルな恐怖と終末を描き出してみせましたが、今回の明朗な活劇はその対極。何となく「クローバー〜」とは陰と陽の対をなしているのでは、と思いますので、ぜひご覧下さい。腐女子の方もどうぞ!

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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