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ゆがんだ教育と周囲の無理解

2009年6月8日

  • 筆者 小原篤

写真映画「ターミネーター4」から、ジョン・コナー(クリスチャン・ベール)写真インタビューに応じるマックG監督=東京都内で写真ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給で13日から全国公開

 映画「ターミネーター4」が13日から公開されます。ターミネーター(とどめを刺す者)と名乗りながら、いつまでたっても人類にとどめを刺せないわけですが、今度は未来の話。軍事用スーパーコンピューター「スカイネット」が自我に目覚めて全人類に核攻撃をしかけ、生き残ったわずかな人々が抵抗軍を組織して闘っている中、「将来の救世主」であるジョン・コナーが、自らの部隊を率いて死闘を繰り広げつつ、スカイネットに狙われたカイル・リース少年の救出を図る物語。カイル君は大人になった後、コナーの命令で過去に飛び、コナーの母サラと恋に落ちてコナーの父になる人(シリーズ第1作のお話ですね)。なので、絶対に死なせちゃいけないのです。

 爆発好きのマックG監督のド派手な演出とか、いろんなターミネーターが登場するとか(バイク型、ウミヘビ型、巨大ロボ型…)、デジタル・シュワちゃん(笑)とか、たくさん見どころがあるわけですが、でもねえスカイネット君、抹殺リストの筆頭にカイル君を挙げておきながら、どうして捕まえてすぐとどめを刺さないの?そんなお人好しだから人類を絶滅させられないんですよ。

 とまあ、それはさておき、全編通して「うーん…なんだかなあ」と思ったのが、クリスチャン・ベールが演じるジョン・コナーの性格。ウデは立つし、統率力はあるし、敵を倒すために先頭切って危地に飛び込んでいくところはさすが「救世主」なのですが、かなりのオレ様っぷりです。

 潜水艦で指揮を執る司令官に直談判しようとして断られると、潜水艦が潜んでいるとおぼしき荒海にヘリからダイブ!パイロットには「司令官に、ダイバーを出してオレを救助に来いと言っとけ!」。すごい強引。これじゃ司令官ももてあますでしょう。

 カイルら捕虜を見殺しにして総攻撃をかけようとする司令部にくってかかり「それじゃ人類が終わりになるぞ!」。それと、自分を救うために仲間が犠牲になろうっていう時は、受け入れるのにもう少しためらったり、相手を思いやって悲しんだりした方が、人望が高まるんじゃないかなあ、とかそんな余計な心配をいろいろしてしまいます。

 マックG監督が来日したので、さっそく直撃インタビュー。

 「ジョン・コナーがゴーマンに見えるって?そんな風に描いたつもりはないな。あの世界で、自分が世界を救うことになる、という真実を知っているのは彼だけ。でも周りは信じようとしないからぶつかってしまう。母のサラだって、言ってることをただの妄想と思われて精神科医に相手にされなかったろう?でも、彼もサラも信念に従ってやりとげるしかない。観客は真実を知っているから、彼らを応援したくなるんだ」

 なるほどそういうものですか。性格問題について宣伝担当の方に感想を話すと「それは小原さんの見方がイジワルだからです」とピシリ。「ジョン・コナーは、生まれてからずっと母親に『あなたが人類を救うのよ』と言われて育てられたんですから、特別なんですよ」

 「ああかわいそうに、そんなゆがんだ教育と周囲の無理解のために、あんな子に」。宣伝担当の方には「もう知りません」というような顔をされてしまいました。

 しかし、人類の救世主はもう少しいい人であって欲しいじゃありませんか。そうだ、あんまりオレ様にならないよう、子供のジョン・コナーを正しくしつけてやるロボットを過去に送り込めばいいのです。次からのシリーズは「エデュケイター」(教育者)でどうでしょう?でも何だか「ドラえもん」みたいだなあ。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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