現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 小原篤のアニマゲ丼
  6. 記事

私、メディア芸術記者です

2009年6月15日

  • 筆者 小原篤

写真国立メディア芸術総合センターの建物イメージ図(文化庁の資料から)写真「どうも、メディア芸術記者です」

 何かと評判の悪い「国立メディア芸術総合センター」(通称「アニメの殿堂」)ですが、一つだけ同情する点があります。「メディア芸術」という言葉の、座りが悪くてイメージがパッとつかめない分からなさに、同情してしまうのです。

 98年に、我が社の広告セクションから「アニメ・マンガ・ゲームだけのページを作りたい」という企画がS学芸部長(当時)のところに持ち込まれ、月1回の連載を私が担当することになった経緯は、昨年11月3日の本欄「本業に差し障りがないのなら」で書きました。連載スタートまで思案に暮れたのが、ページのタイトルをどうするかでした。

 広告担当者らと開いた会議で私が出した案は「月刊動画朝日」。しかし「マンガやゲームが入ってない」という理由で却下されました。さあて困りました。この三つをまとめた呼称なんてないのです。「ポップカルチャー」は対象分野が広がりすぎ。「オタク」という語は、文脈や使う人によってポジティブな意味になったりネガティブな意味になったりして、好悪の感情が絡みついているので使う気はありませんでした。

 会議で出し合ったタイトルリストの中に「アニマゲDON」がありました。アニメの「アニ」とマンガの「マ」とゲームの「ゲ」、1999年も近いことだし「ハルマゲドン」と引っかけて…。メンバーの空気は「ほかにいいのないかなあ」、しかし何度会議を開いても妙案は出ず最後は「しょうがないか」という感じで決まりました。

 これがアニメ・マンガ・ゲームを総称する言葉として一般に定着したら今ごろは、アニマゲ総合センターとかアニマゲ堂とか呼ばれているわけですが(間違いなく各方面から反対されそう)、語感がヘンテコなだけが取り柄なので、せいぜいこうして私のコラムのタイトルに流用されるのが関の山です。ちなみに「アニマゲDON」に対抗し、読売新聞で友人の福田記者と石田記者が立ち上げたページのタイトルは「POPカルチャー」でした。

 マンガやアニメやゲームを顕彰する文化庁の「メディア芸術祭」は98年から始まっていますが、文化庁でも有識者を交えて「このひとかたまりの文化を何て呼ぼうか」とあれこれ悩んだらしいです。で、ひねり出した言葉が「メディア芸術」。印刷物やネットやテレビといったメディアを通じて提供され楽しまれる芸術だからという理屈なのでしょう。現代美術には以前からメディア・アートというジャンルがあって、文化庁の言う「メディア芸術」はこのメディア・アートを含むけどメディア・アートだけじゃない、という誠にややこしいことに。でも、ほかにいいのが思いつかなかったんでしょうねえ。

 アサヒ・コムには「エンタメ」ページの中に「マンガ+」というコーナーがありますが、これも私がアサヒ・コム担当になった07年にひねり出したものです。

 「これから、小原君が得意なジャンルの記事をアサヒ・コム用に取材してどんどん書いて欲しい。ついてはそのためのコーナーを設けようと思うが、名前は何としようか?」

 うひゃあ、また名称問題が。「まとめようがないんですよ、『アニメ・マンガ』とかじゃいけませんか」「ページのデザイン上、4文字以内でないと困る」。うーむ…。

 デスクの提案は「サブカルでどうだ?」。私の頭には、セックス、ドラッグ、タトゥー、オカルトetc.本屋の「サブカル」コーナーに並んでいる本が目に浮かびました。ウーム…。これまた仕方なく、「+」に「その他」という意味を持たせて「マンガ+」としました。

 というわけで、「メディア芸術」にはちょっと同情してしまうところがあるのです。しかし、メディア芸術総合センターが開館した暁には、マンガ・アニメ・ゲームの総称として定着するのでしょうか。その時は「私、メディア芸術記者の小原です」と名乗ろうかな……何だかすっごくアヤシそう。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内