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アニメは現代美術か?

2009年7月27日

  • 筆者 小原篤

写真拡大「メアリー・ブレア展」ちらし写真拡大「イッツ・ア・スモールワールド」のコンセプト・アートが並ぶ会場写真拡大「三人の騎士」コンセプト・アート(C)Disney Enterprises,Inc.写真拡大「シンデレラ」コンセプト・アート(C)Disney Enterprises,Inc.写真拡大「ふしぎの国のアリス」コンセプト・アート (C)Disney Enterprises,Inc.写真拡大ホテルの依頼で描いた壁画デザイン

 東京都現代美術館で夏恒例のアニメ展が今年も始まりました。

 「現代美術館」なのにアニメの展覧会をやるとはこれいかに?

 江戸東京博物館なのに「手塚治虫展」をやるがごとし。

 ま、要するに何でもあり。中身がよけりゃ気にならないものです。都現美の昨年の「スタジオジブリ・レイアウト展」は実に面白かったし(本欄08年8月4日「宮崎アニメは『ねじれたラッパ』?」参照)、今春の江戸東京博の「手塚治虫展」も見応えたっぷりでしたし。しかし、文化庁メディア芸術祭の現在の開催場所である国立新美術館とか、かつて開催場所だった都写真美術館とか、マンガ・アニメ関係の展覧会をやる場所は「国立メディア芸術総合センター」が出来なくってもすでにいろいろあるんですよね。というか出来たらこの手の企画の争奪戦がよけい激しくなるわけで、果たして「アニメの殿堂」は生き延びることができるか?…いや、その前に生まれてくることができるかを心配しなくちゃね。

 さて、都現美のアニメ展は企画制作をスタジオジブリが担い、毎年毎年チエを絞って、ジブリ作品を軸とした企画のほかにディズニーや「漫画映画」なども展覧会のネタにしてきたのですが、今年送り出してきたのは「メアリー・ブレア展」です。メアリー・ブレア(1911〜78)は、ウォルト・ディズニーに才能を見込まれ、ディズニーランドのアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」や映画「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」などのコンセプト・アートを描いたアーティスト。コンセプト・アートとは、作品の雰囲気や色使い、キャラクターのイメージや背景のタッチなどを決めるために描かれるスケッチやイラストで、作品の出発点となるビジュアルです。06年夏に同館で開催された「ディズニー・アート展」でブレア作品が好評だったそうで(私もこのとき彼女の名前を知りました)、彼女の作品約500点を集めた展覧会開催の運びとなりました。

 彼女の絵は平面的で様式的で、ディズニーの写実的なスタイルとは異なるのですがとても魅力的。のびのびした曲線からは軽やかに弾むリズムを感じさせます。「虹のごちそう」と評される鮮やかな色使いはポップでキュート。コントラストが強烈でも決して荒々しさはなく、常に品のよさを失いません。「イッツ・ア・スモールワールド」の展示コーナーは、四方を囲む絵からウキウキした音楽が鳴り出してくるような気がします。「ファンタジア」の幻の続編用に描いた「ベイビー・バレエ」の、踊る赤ん坊のぷくぷくしたかわいらしさも見ものです。

 過去のアニメ展に比べ、ブレアの知名度が高くないので地味そうに見える企画ですが、クレーっぽい絵やマティス風の絵もあったりして、いちばん美術展らしい美術展と感じました。ついでに、グッズ売り場はかわいいものでいっぱいで、本会場に負けず充実しています。それから、「ファンタジア」やテックス・アヴェリー監督作品で腕を振るった名アニメーター、プレストン・ブレアが彼女の義兄であることを初めて知りました。プレストンの原画やラフスケッチも展示されていて、これがパワフルな線でしびれます。

 とまあ、いろいろホメてきましたが、一つ残念なことが。展示室がやや暗いので、ブレアのせっかくの「虹のごちそう」が完全には堪能できません(作品保護のために照明を弱めているので仕方がないけど)。その代わり図録が「画集」といっていいくらいの豪華版で、こちらは本来の色彩がバッチリじっくり味わえます。ちと高いけど。

    ◇

 「メアリー・ブレア展」は10月4日まで東京都現代美術館(東京都江東区)で開催。月曜休館、ただし8月10日・17日、9月21日・28日は開館。問い合わせは03・5777・8600(ハローダイヤル)。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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