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皆さん、ぼく鉄腕アトムです

2009年9月7日

  • 筆者 小原篤

写真瀬川雅人さん演じる鉄腕アトム写真「鉄腕アトム《実写版》DVD−BOX」は10月23日、ジェネオン・ユニバーサル・エンテーテイメントより発売。現存する58話を収録、34800円写真うしおそうじさん著「手塚治虫とボク」(草思社)。実写版アトムにまつわるエピソードが読めます写真「アトム」アニメ化の経緯を描く皆河有伽さん著「日本動画興亡史 小説手塚学校1」。読み応えたっぷりです

 じっしゃばん…。実写版…。何となく、もの悲しい響きがする言葉です。過去、いろんなマンガやアニメが実写化されて、それを見る度に「あちゃちゃ」とか「とほほ」とか「うぎぎ」といった思いが、胸の奥に降り積もっているからでしょうか。

 実写版「鉄腕アトム」がDVDボックスになるそうです。最初のテレビアニメ(63〜66年)に先駆け59〜60年に全65話が放映されましたが、80年代に短縮版ビデオが発売されたのみで、ながく「幻の作品」とされてきました。私も「懐かしのテレビ番組ぜんぶ見せます」みたいな番組で実写版「鉄人28号」と並んで映像の断片が流されたりするのを見た程度で、きちんと見たことがありませんでした。ちなみにこの2作の実写版は共に松崎プロダクションの製作です。

 「鉄人」の方は00年に、とある映画館で特集上映される折に記事にし、映像本編も見ました。2メートルほどの着ぐるみの鉄人が、頭でっかちでヨタヨタ歩く姿はなかなかのインパクトでした。アトムの方は、ぽっちゃり顔の男の子が肉じゅばんのような衣装でアトムに扮していた記憶があるのですが、DVDが出るとなればこれはぜひちゃんと見てみたい。何しろ、この番組を見た原作者・手塚治虫さんが「実写アレルギー」になり、後にうしおそうじさんが「マグマ大使」の映像化権をもらいに来た時、アニメじゃなく実写の企画と分かるや「実写で作るのなら許諾しません」と怒り出した(結局は許諾するんですが)という伝説を残した作品です。さっそくDVDの発売元に電話し、サンプルを送ってもらいました。

 第1話冒頭、アニメでごく短くロボット発達史が語られた後、出ましたアトム君。ぽっちゃり顔に左右にツノのあるかぶりもの、首はとっくりのセーターみたいで、体は肉じゅばんではなくプラスチックっぽい胸当て肩当てをつけていました。カメラに向かって一礼し「皆さん、ぼく鉄腕アトムです」。おや、アニメ版初代声優の清水マリさんにけっこう近いかも、と思わせる声です。「ぼくの耳は世界中のどんな音でも聞き分けます」。どうすごいのか今ひとつ分かりません。というか、聞き分けられなかったら問題じゃあ…。原作のアトムには人間と同じ形の耳があるのに、実写版アトム君は黒いヅラの下から耳たぶの下端がはみ出しているだけ。ちゃんと聞こえるのかしら? 「腕は1千馬力の力を持っています」 ええっ、十万馬力じゃないの? 初めからツッコミどころ満載です。

 悪の組織ZZZ団が世界各地で暗躍している、という説明が始まりました。第1回なのにのっけから「これまでのあらすじ」っぽい作りです。「パリー」と字幕が出て酒場っぽいところで人がバーン!と撃たれます。次に「マドリッド」と字幕が出て酒場っぽいところで人がバーン! 背景の壁の絵(ヘンなネコがラッパ吹いてる)が同じです。パリとマドリッドに店を持つ居酒屋チェーンか何かでしょうか。ようやく本編らしきものがスタート。来日した外国の科学者がZZZ団に狙われ、魔の手はその娘ミシェールに。助けに来たアトムが悪漢たちを相手に格闘している隙に、ミシェールが河にボチャーン! アトムが救い出しミシェールを抱えてビューンと飛んでいくところで、続きは来週。連続活劇の趣ですが、のんびりしたテンポに時代を感じます。

 しかし、「ゼット推進、十万馬力〜」といった歌詞が愉快なテーマ曲が終わったら、驚愕の展開が待っていました。アトム君、カメラの前に立ち手袋を脱ぎます(はて?)。ヅラも取っちゃいます(ええっ!)。一礼し「みなさん、ぼく鉄腕アトムの役をやっている瀬川雅人です。テレビは面白かったですか? では皆さんと一緒に主題歌『鉄腕アトムの歌』を歌いましょう」。また同じテーマ曲が流れますが、オープニングも同じ曲だったので、これで3度目です。本編の尺が足りなかったんでしょうかねえ?

 というわけで、アトム君より瀬川君が強烈な印象を残す実写版「アトム」、いろいろな意味で楽しめました。さあこれで、今秋劇場公開されるCG版がどんなアトムでも、もう怖くなんかないぞ!

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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