現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 小原篤のアニマゲ丼
  6. 記事

思春期アトムは毎朝ヘアを整えるか?

2009年10月12日

  • 筆者 小原篤

写真拡大映画「ATOM」 (C)2009Imagi Crystal Limited Original Manga(C)Tezuka Productions Co.,Ltd.写真拡大大人びた表情が印象的です写真拡大こちらは手塚治虫漫画全集「鉄腕アトム」第3巻(講談社)写真拡大アトムが表紙の浦沢直樹「PLUTO」第8巻(小学館)写真拡大インタビューに答える「ATOM」のデビッド・バワーズ監督=東京都内で

 香港とロサンゼルスなどに拠点を置くイマジスタジオが「鉄腕アトム」をCGアニメ化した「ATOM アトム」が、10日から公開されました。一見してまず驚くのは、面長で大人びた顔です。何だか声変わりしてそうなATOM君、どうも落ち着きません(吹替版を見たら清水マリさんじゃなく上戸彩さんに声変わりしてた!とかそういう話ではありません)。

 いやまあ、原作マンガでもエピソードごとにアトムがスマートになったりチンチクリンになったりしているので、作者の手塚治虫さんも前書きで自らツッコミを入れていますが、顔はかわいいままです。マンガの「盗まれたアトム」というエピソードには18歳の体になったアトムが登場しますが、ラストで元に戻ります。

 そもそも「アトム」は、ハリウッド大手のコロンビア映画が99年に映画化権を得たのですが、大怪獣ゴジラを大トカゲGODZILLAに変えてしまうハリウッドの荒っぽさに驚いた手塚プロダクションが、「キャラクターのデザインは原作通りに」という条件をつけました。それゆえ、CGアトムを人間の役者と共演できるようなデザインにアレンジして実写映画に、などと考えていたコロンビアはフルCGアニメに路線変更せざるを得ず…。いろいろあってコロンビアが手を引き、イマジが作ることになってもその条件は変わらないはずと思っていたのですが、こりゃまたビミョーに同じだけどビミョーに変わったATOM君になったものです。余談ですが、「鉄腕アトム」のキャラクターを自在にアレンジしちゃった浦沢直樹さんのマンガ「PLUTO」(03〜09年)を、コロンビアのスタッフたちが見たら一体どう思うでしょうか? 「PLUTO」版アトムなら人間の役者が演じられるそうですし、人間の役者との共演もまったく問題ないでしょうねえ。

 さて、ちょっと大人なATOM君はナゼ生まれたのか? この映画のデビッド・バワーズ監督が来日したので直撃インタビューしました。

 「少し年長風にしたのはドラマ的にその方がいいと判断したからだ。この映画のアトムは、父親との関係や自分のアイデンティティーについて悩む。7〜8歳の子供はそんな悩みは持たない。ティーンの始まり、13歳くらいの姿が、この映画のアトムにふさわしいと思った。これはアトムの成長物語なんだ。はじめに上がってきたアトムのデザインは、僕の目から見ても本来アトムが持っていた魅力を失ってしまったように見えた。手塚治虫氏の長男・眞さんが『もう少し目は大きく』『顔はもう少し丸く』とアドバイスをくれたので、最終的には満足できる形に落ち着いた。まつげがないって? 実は、最初はつけてみたんだが、女の子っぽくなりすぎてしまった。そこで、少し太めのアイラインをつけることで、マンガの雰囲気に近づけたんだ」

 なーるほど。でも日本人はたぶん、チンチクリンのかわいいアトムが哲学的な悩みを抱いても実存的な不安を抱えても平気なんですけどねえ。女の子っぽいくらいのかわいらしさがアトムの魅力なんですけどねえ。

 実は顔だけでなくもう一つ気になることがありました。ATOMの髪です。アップになるとあの黒い部分が少し盛り上がり髪の毛のような細かな筋が見え、まるでアイロンパーマか何かで固めたみたい(別にアロンアルファでもいいですけど)に見えるのです。アイパーATOMとは大胆な新解釈ですね、バワーズ監督!

 「テンマ博士は事故死した息子トビーを甦らせようとアトムを作り、記憶も移植する。アトムは自分がロボットであることに初めは気づかない。だからストーリー上、自分を人間だと思いこむくらいの外見にしないといけなかった。あの髪は、もちろん人間のとは違って硬いが、トビーの髪型をロボット風に再現したもの、という解釈だ」

 ちなみに「こらアトム、早く朝ご飯を食べないと遅刻するぞ!」「うるさいな父さん! 今朝はどうも髪がまとまらないよ、やっぱアイロンかけよう(ジュ〜〜!)」なんて場面は、今回の映画には出てきません(当たり前か)。たるんだパンツの上から尻をボリボリ掻いたりするアトムを登場させた手塚治虫さんなら、面白がって描いたかも知れませんけど。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内