2009年12月21日
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」 (C)2009「大怪獣場バトル ウルトラ銀河伝説」製作委員会
「Disney’s クリスマス・キャロル」 (C)Disney Enterprises,Inc.
「ティンカー・ベルと月の石」 (C)Disney Enterprises,Inc.
前回は途中で放り投げてしまいましたが、さあ、行き当たりばったり冬休みアニメ(&特撮)紹介を再開しましょう。
「レイトン教授と永遠の歌姫」は、大人気のナゾトキゲームシリーズをアニメ化。「永遠の命」を得るための生き残りゲームに巻き込まれたレイトン教授とルーク少年の冒険を描きます。柔らかな描線とソフトな色彩でまとめられたキャラクターと背景が、いい具合にマッチ。今時のアニメらしからぬシンプルな顔のレイトン教授がナゾトキとアクションに挑みますが、最大のナゾはストーリーそのもの。レイトン教授はゲームから脱落していく参加者を放ってナゾトキまたナゾトキ。主人公としてそれはどうなの?脱落者が死んじゃってたらどうすんの?とツッコミたくなります。不老不死伝説の古代王国を復活させる方法は?というのが最大のナゾトキなのですが、レイトン教授は復活を止めようとしてた直後に「こうやるんだ」と復活させようとするし、しかも復活すると何が起こるのか敵もレイトンも分からないまま闘っているみたい(私も分かりませんでした)。というわけで、あなたも劇場でこのナゾに挑んで下さい。
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」は、「光の国」の人工太陽を奪った悪のウルトラマン「ベリアル」とウルトラマンたちの闘いを描きます。つり目で口が裂けたガラの悪いベリアルに立ち向かうウルトラマンゼロは、ウルトラセブンの息子ながら、かつてとある事件で逮捕された不良で、レオとアストラに預けられ厳しい特訓で根性をたたき直されたという経歴の持ち主。2本のアイスラッガーはちょっとリーゼントっぽくて、目つきもこわいです。ガン飛ばしてます(瞳がないけど)。そしてクライマックスは〈ウルトラヒーロー連合〉対〈ベリアル率いる100体の怪獣軍団〉! こう書くとなんだか番長マンガかヤンキーマンガみたいですね。最大のナゾは「ゼロの母親は誰?」ってことなんですけど、本編ではスルー。続編があれば明かされるのでしょうか?
ディケンズの古典をディズニーがCG映画にした「クリスマス・キャロル」は、ビクトリア朝ロンドンの大パノラマが圧巻のデジタル絵巻。俳優の演技を取り込んでCGキャラを動かす「パフォーマンス・キャプチャー」なる手法は、同じロバート・ゼメキス監督の「ポーラー・エクスプレス」(2004年)よりグッとこなれて、生き生きした動き、というか生々しい動きを作り出しています。これがシワやシミや毛穴を描き込んだ濃ゆいCGキャラクターと相まって、シーンによってはちょっと不気味。主人公スクルージのビジネスパートナーが死ぬ冒頭シーンなどはホラーチックです。お話は、精霊の導きで自分の過去や未来を見、哀れな子供の運命にショックを受け、人の優しさや誠意を知った主人公が改心して極端な「いい人」になっちゃうわけですが、他愛ないくらいシンプルなストーリーに、こんな濃ゆーいキャラとデラックスな映像は合わないんじゃあ…というのが正直な感想。ちなみに原語ではジム・キャリーが何役もこなして七変化、吹き替え版では山寺宏一さんが七変化。カメレオン声優対決も聴きどころです。
ディズニーのもう1本「ティンカー・ベルと月の石」は、「ピーター・パン」(1953年)のキュートな妖精ティンカー・ベルがピーター・パンと出会う前を描くCGアニメ第2弾。前作に続きCG制作をインドに外注しているのですが、前作よりシャープでクリア、洗練された印象です。インドあなどりがたし。妖精の国の大事な大事な宝物「月の石」を預かったティンカー・ベルが、自分のかんしゃくと不注意から粉々に壊してしまってさあ大変、というお話なのですが、コロッと改心したスクルージに対抗してか、驚いたことにティンカー・ベルは改心しません。なかなか大したタマです。内心では反省してるのですが、結局上司に報告しないまま、願いを叶えてくれる魔法の鏡を捜す旅に出てしまいます。鏡の力で石を元に戻そうってハラですが、主人公としてそれはどうなの? しかも意表を突く奇策で最後にはホメられちゃうなんて、桜の木を切ったのを正直に認めたワシントンの国の映画とは思えません。インド人もビックリです。
とはいえ、ティンカー・ベルは「ピーター・パン」ではトラブルメーカーの「困ったちゃん」なのでこれでいいのかも? もの作りの妖精(工芸職人みたいなもの)なのにかんしゃくを起こしては物を手荒に扱う彼女が、次の作品でどんな目に遭いどんな性格になっていくのか、見守っていくことにしましょう。それではこのへんで、冬休みアニメ紹介はおしまい。
1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。