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ガキは教師の髪型をからかう

2010年2月22日

  • 筆者 小原篤

写真拡大「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」から、中央がパーシー(ローガン・ラーマン)写真拡大「デミゴッド」のパーシーは自分の能力に目覚める写真拡大「ダレン・シャン」から、ダレン(クリス・マッソグリア) 写真拡大ダレンを導くバンバイアのクレプスリー(左、ジョン・C・ライリー)とその恋人トラスカ(サルマ・ハエック)

 テリー・ギリアム監督のキテレツ幻想世界「Dr.パルナサスの鏡」、スパイク・ジョーンズ監督のしんねりむっつり心理劇「かいじゅうたちのいるところ」と、くせ玉ファンタジーが続いた後で今度は直球のファンタジー映画が2作相次いで公開されます。クリス・コロンバス監督の「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(2月26日公開)とポール・ワイツ監督の「ダレン・シャン」(3月19日公開)。共に人気児童文学の映像化だそうで、直球の狙い所はズバリ、ポスト「ハリ・ポタ」。でもエースのハリー・ポッター君に比べ、2番手ゆえか球速がイマイチな気がします。

 「パーシー…」はこんなお話。難読症に悩む17歳のパーシー君は、実は神と人間の間に生まれた「デミゴッド」で、デミゴッド仲間らが集う訓練所に入る。美少女剣士とお調子者の従者を連れて母を救う旅に出たパーシー君は、モンスターに襲われたりする内に、父ポセイドンから受け継いだ超能力を発揮して…。

 「ダレン…」はこんなお話。クモおたくの16歳ダレン君は、親友の命を救うために半分人間・半分吸血鬼の「ハーフ・バンパイア」に身を落とし、ヘビ男やサル少女のいるフリーク・サーカス「シルク・ド・フリーク」に入る。ダレン君は吸血鬼同士の抗争に巻き込まれ親友を敵に回して闘う内に、バンパイアとしての超能力を発揮して…。

 「ハリ・ポタ」の魅力の一つは英国の伝統的な寄宿学校っぽい魔法学校で、クラシカルな雰囲気が見る者のあこがれを誘うのですが、今回の2作は、ヨロイを着て湖畔のキャンプで剣術稽古、フリークスと一緒のワゴン暮らし。設定はともかく、ビジュアル面で観客をぐいっと引き込む豪華さ華やかさが足りないな、という印象でした。製作費の差でしょうか。

 くせ玉ファンタジーは、4月公開のティム・バートン監督「アリス・イン・ワンダーランド」を含め、どうも作り手の妄想やら強迫観念やらが生み出すのではないかと思いますが、王道ファンタジーの方は10代が体験する成長のメタファーなんですね。中学・高校といった新しい環境に飛び込み、初めは戸惑いながら順応していき、友達を作り、やがて新たな能力を獲得する。それを忠実にフィクションに変換しているので、似たり寄ったりなのも仕方ないかと。パーシー君は、ロクデナシ男と同棲する母親や難読症による成績不振に悩んでるし、ダレン君は「よい学校、よい会社、よい家庭」という俗っぽい価値観を押しつける両親に反発しているし、10代の抱えがちなコンプレックスをアレンジして織り込んでいるのも定石通りです。

 で、その親元を離れて出会う大人たちというのは、善玉か悪玉かによらず教師かそのメタファーなのだろうと思いますが、2作とも個性的なキャストをそろえています。パーシー君の教師ケイロン(正体は半人半馬のケンタウロス)は元007のピアース・ブロスナン、悪玉のメドゥーサは「キル・ビル」のユマ・サーマンが演じています。メドゥーサの頭はCGによる超リアルなヘビがウジャウジャのたうっていて、パーシーに頬を寄せると大小のヘビがまさぐり絡みついてくる。この強烈なビジュアルが映画の白眉です。こわいぞ、ユマ・サーマン!

 「ダレン…」で印象深いのは、サーカス団長ミスター・トール。演じるは我らが渡辺謙です。風格と威厳に満ちた団長ぶりですが、頭がタテ方向に膨らんでデコが異様に広く頭髪が二八分けという、これまた強烈なビジュアル。すごい、すごいぞ、ケン・ワタナベ!

 そういえば私も覚えがありますよ、髪型がちょっと変わっていた先生。ガキは教師の髪型をからかう、というのは世界の公式みたいなものです。天然ヘビパーマも、とんがり二八分けも、そのメタファーに違いありません(うそ)。

 2作とも「続編をお楽しみに!」って感じで終わるのですが、さてどうなるでしょう? 「パーシーってダレン?」なんてことにならず、何作も続くといいですね。

 一方、本家の映画「ハリー・ポッター」はいつ終わるんでしょう? ハリー君たちも(外見は)すっかり大人になって、同い年の子の中にはもう就職している人だっているというのに、まだまだ杖を振り回して魔法の勉強を続けるようです。何作も続くのも大変ですね。それでは、また。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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