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着崩しホームズの服装問題

2010年3月8日

  • 筆者 小原篤

写真拡大「シャーロック・ホームズ」から、ホームズ(右、ロバート・ダウニーJr.)写真拡大こちらはワトソン(ジュード・ロウ)写真拡大ホームズ(左)とアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)写真拡大来日したジュード・ロウ=東京都内で

 3月12日公開の映画「シャーロック・ホームズ」を試写で見ました。昨年1月12日付の本欄「息子の奇妙な愛情、または結膜炎」でも書いた通り、自称シャーロキアン生活30年(うち休止20年)、ホームズ好きとしては見逃せません。主演は「アイアンマン」のロバート・ダウニーJr.。かなり風変わりなホームズを見せてくれました。もっとも、彼に正統派ホームズを期待していた人は少ないでしょう(正統派が見たければジェレミー・ブレット主演のテレビシリーズを見ればいいし)。ホームズとダウニーには「麻薬常用者だった」という共通点はありますが。

 さて舞台は19世紀末ロンドン。現れたダウニー版ホームズは、髪はボサボサ、無精ひげジャリジャリ、襟元も袖口もユルユルの着崩しスタイル。これで腰パンだったらもう服装問題で抗議殺到です(ちょっとネタが古いですね)。これでもサマになるのはダウニーの色気があればこそ。さすが旬の俳優です。ただホームズファンとしては、一度くらいは髪をなでつけひげを剃りノリのきいたカラーでピシッと決めた格好を見せて欲しかったのですが。まあ、「不良」っていうトシでもないので「無頼派」ホームズとしておきましょう。

 そしてこのホームズはかなりの肉体派でもあり、悪漢相手に格闘ゲームのような連続技を決めてくれます。このあたりのシーンのスローモーションや細かいカット割りは、いかにもガイ・リッチー監督らしいところ。ちなみに原作でも、ホームズは拳闘選手であり日本の武術の心得もあることになっているのでならず者をぶちのめすくらい朝飯前です。でも映画はちょいと露出が過剰ですね。

 一方のワトソン役はジュード・ロウ。様々な俳優が演じてきたワトソン史上、最高の色男じゃないでしょうか。ダンディーで頼れるタフガイ。ムカッと来ればホームズの顔面にパンチをお見舞いするという、史上最強ワトソンです(たぶん)。そんでこの刑事ドラマ風の「ケンカするほど仲がいい」コンビの間に、ワトソンの婚約者が割り込んだり、女盗賊のアイリーン・アドラーがホームズにちょっかいをかけたりして、二重の三角関係が生まれドラマの妙味となっています。ホームズの天才的な頭脳もセクシーなアドラーの前では少々歯車が狂うらしく、ワインに一服盛られたホームズが目覚めてみたら真っ裸でベッドに縛られて――って、まるでルパンと不二子ちゃんみたいなシーンも登場しますのでお楽しみに。

 さてそのジュード・ロウが来日したのでインタビューしました。「原作のワトソンは、アフガニスタンの激戦地から帰ってきた元兵士であり、優れた頭脳と強い精神力を備えた医師なんだ。でもこれまでの映画、例えばベイジル・ラズボーンがホームズを演じた映画のワトソンなんかを見ると、原作とはまるで違うんだよね」。ああ、ナイジェル・ブルースですね? 「そう、ブルースは太って間抜けでコミカルな引き立て役というワトソンのイメージを作りあげてしまった。僕の演じたタフなファイターというワトソンの方が原作に近いと思う。ホームズとワトソンは二人で一人のヒーローなんだ」

 おやおや、1972年生まれのロウから1940年代のワトソン役者ブルースの名前が出るとは。とはいっても、小太りでお人好しでちょっと間が抜けたワトソンというのは宮崎駿監督のホームズシリーズにも当てはまるし、かなり根強いイメージなんでしょうね。

 今回の映画は、大英帝国の中枢に忍び寄る秘密教団の陰謀をホームズが阻止するという物語。死人が墓から甦ったり人が急に炎上したりするオカルトな事件の謎をどう解くかがカギです。妙な秘薬やあやしげなメカなども登場しますが、予想よりは落ち着いた内容でした(あくまで「予想」よりは)。きょうびハリウッドがホームズを映像化するとなれば、どんなトンデモVFXスペクタクルになっていたって驚きゃしませんからね。それこそホームズはサイボーグか超能力者か、敵はエイリアンかロボットか? あ、これじゃ「アイアンマン」になっちゃうな。蒸気機関メカを装着したスチームパンクな「アイアンホームズ」は……ううむ、あまり見たくない。

 ジュード・ロウによれば「続編を作るかはまだ決まってないが、多くの人が望むならこのチームでぜひやりたい」とのこと。ラズボーンもブレットも「ホームズ役者」の強すぎるイメージに苦しみましたが、ダウニーはまったくのオレ流ホームズなので、そんな心配は要らないでしょう。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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