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マンガ大賞、いい湯だな

2010年3月22日

  • 筆者 小原篤

写真拡大「マンガ大賞2010」を獲得した「テルマエ・ロマエ」写真拡大2次選考上位10作。今年もこれだけ読みました写真拡大スクリーンにはヤマザキマリさん、壇上には奥村編集長写真拡大右は授賞式のためにヤマザキマリさんが描いたイラスト。ルシウスが「平たい顔族よ、ありがとう!!」

 2年続けて本欄で触れてきたマンガ大賞、3回目の今年も参加させていただきました。書店員を中心にした各界のマンガ好きが選ぶ2009年の一押しマンガに選ばれたのは? 17日に授賞式があり「マンガ大賞2010」がヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」(エンターブレイン)に決まったと発表されました。

 古代ローマの設計技師ルシウスが、なぜかたびたび現代日本の風呂にタイムトリップ! 銭湯で飲むフルーツ牛乳や露天風呂や温泉玉子や家庭用簡易風呂など「平たい顔族」(日本人のこと)の創意工夫と高度な文明に衝撃を受け、ローマの風呂に大変革をもたらす、という物語。古代ローマと現代日本を風呂文化で結びつけた意表を突くアイデアが秀逸で、くそまじめなルシウスととことん親切な平たい顔族のおじちゃんおばちゃんのコントラストとギャップが笑いを誘い、風呂を愛する我ら日本人の自尊心を巧みにくすぐります。

 今年のプレゼンターは何と末次由紀さん。前回「ちはやふる」でマンガ大賞を獲得しながら授賞式には出なかった末次さんが、1年遅れで登壇しました。「去年こんな立派な賞をいただきながら壇上に上がることが出来ず、この1年ずっと心残りでした。いただいた後、この賞が持つパワーと重さを感じていました」とあいさつ。実は「テルマエ・ロマエ」の愛読者で、喫茶店などで自作の案を練るとき持っていくとか。「気分転換にとてもいいんです」

 ポルトガルのリスボンに住むヤマザキさんに代わり、担当編集者であるコミックビームの奥村勝彦編集長が末次さんから賞を受け取りました。続いて、スクリーンにヤマザキさんのお顔が。まだ朝の6時半というリスボンから、スカイプによるテレビ電話でのご登場です。

 「主人がローマおたくで、さっき古代ローマから帰ってきたような会話を家でする。私は風呂桶のない家に住んで日本の風呂を渇望している。古代ローマには浴場があったのに今のヨーロッパ人はなんでー?という思いから生まれた作品です。自分の枕の匂いをかぐような、自分の体臭がするような、自分にとっては当たり前に発生したマンガです」

 いやー、なるほど! 前にも書きましたが「ネタは半径3メートル以内に転がっている」という某アニメ監督の言葉はやっぱり本当なんですね。目からウロコというか、風呂から「ユリイカ!」といった気分です(ちょっと違うか)。

 彫像のようなローマ人がフリチンで木桶を抱えてるナイスな単行本表紙については、「桶の位置を下げて隠しましょうか?」と聞いたヤマザキさんに対し、奥村編集長が「隠したらあかん、ローマだからええんや!」「じゃあバーンと行きましょう!」というやりとりがあったとか。

 授賞式でその意図を問われた奥村さんいわく「風呂入るのに隠すのは教育上よくない。中学生が修学旅行で海パンはいて風呂に入るという話を聞いて、そういうことはいかんと思った」。そうですとも、隠しゃいいってもんじゃありません。バーンと行きましょう、バーンと。

 というわけで楽しい授賞式でした。ちなみに「マンガ大賞」参加3回目にしてようやく、自分が1位に推した作品が大賞になりました。私が1次選考に挙げたのは、こうの史代さん「この世界の片隅に」、河原和音さん「青空エール」、大場つぐみさん&小畑健さん「バクマン。」、羽海野チカさん「3月のライオン」、ケイケイさん「ワンダフルライフ?」でした。89人が参加した1次投票で上位10作に入った作品の中から、私が2次投票で挙げたのはこの3作。1位「テルマエ・ロマエ」、2位「バクマン。」、3位「モテキ」。2次投票も89人が参加し1位「テルマエ・ロマエ」、2位が小山宙哉さん「宇宙兄弟」、3位「バクマン。」という結果でした。

 各選考委員が推薦作品につけたコメントが「マンガ大賞2010」公式サイトにいずれアップされるはずですが、とりあえず私が「テルマエ・ロマエ」につけたコメントを。

 「遥か時空を超えてつながるおフロへの愛。フロ愛。やっぱり肌と肌のフロ愛は大切です」

 ダジャレですって? いいじゃないですかバーンと行きましょう、バーンと!(意味不明)

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。

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