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非実在に実在する非実在

2010年5月17日

  • 筆者 小原篤

写真:石原都知事は「非実在青少年」という用語について「訳がわからない」と会見で述べたそうですが…拡大石原都知事は「非実在青少年」という用語について「訳がわからない」と会見で述べたそうですが…

写真:「児童買春・ポルノ禁止法案」についての私の記事は1998年6月18日の朝刊文化面に掲載されました「児童買春・ポルノ禁止法案」についての私の記事は1998年6月18日の朝刊文化面に掲載されました

写真:3月15日にマンガ家の(右から)里中満智子さん、ちばてつやさん、永井豪さん、竹宮恵子さんらが記者会見で条例改正案への反対を表明、弊紙では翌日朝刊で大きく扱いました拡大3月15日にマンガ家の(右から)里中満智子さん、ちばてつやさん、永井豪さん、竹宮恵子さんらが記者会見で条例改正案への反対を表明、弊紙では翌日朝刊で大きく扱いました

 何かと話題の「東京都青少年健全育成条例改正案」。マンガやアニメやゲームに登場する18歳未満と判断される架空キャラクターを「非実在青少年」と定義し、その性描写がメーンになっている作品の販売・閲覧に規制をかけたいそうです。

 この件で、とある行政書士事務所の方が都の担当者に「非実在青少年」の定義について問い合わせた、という内容のブログを読みました。これが素晴らしく面白い。もちろん、笑ってられない問題ですし、オタク記者としては先を越されたという思いもあってお恥ずかしい限りです。私もかつて「児童買春・ポルノ禁止法案」が上程されたとき警察庁に取材に赴き、「浜辺や公園でパンツ一丁で遊ぶ女の子の写真のようなものは新聞にも載せているが、それらは『衣服を脱いだ姿態』に該当するのか」「該当するが、『性的好奇心をそそるもの』でなければ児童ポルノとは言えない」「ではそうした写真ばかりを集めた本ならどうか」「ことさら胸やお尻を強調したものが1冊となれば摘発せざるを得ない」といった問答を担当者とやらかしたものです。

 さてそのブログでは、「子供に変身した100歳の魔法使いは?」「10歳から冷凍冬眠していて20歳だけど精神も肉体も10歳のままの人は?」など様々なSF的設定を質問者が繰り出し、都の人が「非実在青少年」に該当するかしないかを回答しています。ちなみに上記の2例は共に「該当せず」でした。

 私が「非実在青少年」なる言葉を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、「灰原哀はどうなるの?」という大変フトドキな疑問でした(ファンの皆さんごめんなさい)。灰原哀とは「名探偵コナン」に登場する女の子で、外見は小学生でランドセルしょって学校に通ってもいますが、その正体は、特殊な薬によって子供の体になった自称18歳の科学者です。彼女は18歳未満と判断されるのでしょうか、されないのでしょうか?

 だいたいがフィクションの世界の話ですからこんな例はいくらもあるわけで、「外見はコドモだが実は不老不死のバンパイヤだった」とか、「火の鳥の血を飲んだため体だけ若返ってコドモみたいになってしまった」とか、「外見はコドモだけど前世の記憶がよみがえって言動がすっかりオトナに」とか、「高校生の男の子と異星人のねーちゃんが一つの体に同居して外見もくるくる変わる」とか。「普通の高校生のふりをしていたが実は潜入捜査官だった」なんてオチの場合は、どうなるのでしょう。「不健全図書」に指定したけど間違いでした、なんてことに?

 くだんのブログによれば、「3歳の犬が魔法によって人間の姿に変身した場合」は「該当しない(人間ではない)」そうです。さあ、わからなくなってきました!(野球の解説みたい)

 もし「人間ではない」ことが「該当せず」の理由になるなら、「魔女のお母さんと人間のお父さんの間に生まれ、魔女として生きると決意した女の子」とかはどうなるのでしょう。魔女だから人間ではない?

 人間でも犬でも魔女でも宇宙人でもない、「実在」しないキャラだったら? 「実は主人公の妄想の産物だった」「幻覚だった」「幽霊だった」「夢オチだった」とか、「作中の人物が描いていたマンガの中でのことだった」とか。「非実在青少年」かと思ったら作中で「実在」していないので「非実在青少年」ではなかった――なんてことになったら、めまいがするくらい不条理な世界です。頭がこんがらがってきました。私の疑念は実在するのか非実在なのか、だれか答えて!

 さて与太話はこのくらいにして(念を押しますが、条例改正問題そのものは重大です)お仕事、お仕事。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から報道局文化グループ記者。

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