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オモチャに心を ドラゴンに愛を

2010年7月5日

  • 筆者 小原篤

写真:「トイ・ストーリー3」は7月10日公開拡大「トイ・ストーリー3」は7月10日公開

写真:「ヒックとドラゴン」は8月7日公開拡大「ヒックとドラゴン」は8月7日公開

 ピクサーとディズニーが「もう別れましょう」(提携解消)と言ってた頃には、ディズニーが独自に作るはずだった「トイ・ストーリー3」。しかしピクサーとディズニーが結婚してしまった(ピクサーがディズニーグループ傘下に)ので、両者仲良く製作・配給したその映画が、10日から日本で公開されます。

 前2作はアイデンティティーや「生き方」をめぐるお話でした。第1作で、カウボーイ人形ウッディは「アンディの一番のお気に入り」の座が揺らぎ、新入りのバズは自分が本物のスペース・レンジャーでなくオモチャだと知りショックを受けます。第2作でウッディは、いずれ大人になるアンディのそばにいるより、「プレミア人形」として博物館の陳列ケースにおさまった方が幸せかも、と迷います。ウッディの縫い目がほつれたように、オモチャはやがて壊れる。そして、ご主人様はいつか大人になる。その未来を見すえながら、自分の使命をまっとうしようと覚悟を決めたウッディとバズの姿は感動的でした。

 ジョン・ラセターら作り手は、自分たちの選んだコンピューター・グラフィックスという手法に自覚的だったんでしょう。「無機的」と形容されるCG、劣化することのないデジタルデータの世界に、「揺れるこころ」や「時のながれ」を持ち込めるか。そのチャレンジ精神が、世界初の試みだった長編CGアニメを成功に導いたのだと思います。

 そして第3作は、家を出て大学生活を始めることになったアンディとオモチャたちの別れの物語。みんなまとめて屋根裏行きか、と思ったらゴミとして捨てられた? それじゃあ新天地を求め保育園へ! ところがそこは「オモチャの地獄」、そしてクライマックスは恐怖のゴミ処理場で危機一髪! めまぐるしい展開は一瞬も飽きさせませんし、技術の向上で映像は細密、上品な質感を出しています。

 でも、オモチャたちが屋根裏行きをどう受け止めるかでモメたりするのは第2作の高邁(こうまい)なラストより後退している感じ。保育園がいい子ばかりの天国クラスと乱暴な地獄クラスに分かれているというのもやや無理が……。ピンチを次々切り抜けるスペクタクルが増量された代わりに、心のドラマの掘り下げが乏しいところが、ちょっと残念です。10年以上使われているのにオモチャたちが新品同然というのもひっかかるところ(時のながれはどこ行った?)。たとえば、遊んでもらえなくなったためにオモチャたちから「こころ」が消えてただのモノになっていく――といった大胆な切り口を期待したんですが……。

 とかなんとか不平を言っても、あの涙のラストにはあらがえません。無表情のウッディの顔が何より雄弁に思いを語る。あれを最後に持ってくるなんて、いやあ、ズルいなあもう。

 夏休みに公開される米のCGアニメをもう1本ご紹介しましょう。8月7日公開の「ヒックとドラゴン」。監督はクリス・サンダースとディーン・デュボア。ディズニーで手がきアニメの傑作「リロ&スティッチ」を手がけた名コンビが、ドリームワークスに移って本作を仕上げました。

 バイキングとドラゴンが対立する世界で、族長の息子なのに弱虫の少年ヒックが、けがで飛べなくなった最強のドラゴンと友情をはぐくみ、共に闘う物語。ヒックとドラゴンが少しずつ距離を縮めていき、ヒックは自信と勇気を得、凶暴だったドラゴンはかわいくて頼りになる相棒に。そんなドラマが丁寧に語られます。

 人工の翼をヒックにつけてもらったドラゴンと、背中に乗ってその翼を操作するヒックは、力を合わせて大空へ飛び出します。その爽快(そうかい)感とスリル、巨大ドラゴンに挑む空中戦のスピード感が本作最大の見どころ。「リロ&スティッチ」公開時のインタビューで「空中アクションに宮崎アニメっぽさを感じた」と言う私に、サンダース監督は「宮崎駿監督は私のヒーローだ」と答えてくれました。「シュレック」に代表されるドリームワークスらしいアクや毒気が、ほとんど感じられないのも特徴。「リロ&スティッチ」同様、脚本も手がけたこのコンビは、どこのスタジオでもきっちり自分たちの味を出してくるようです。

 ただ映画を見ながら「惜しい!」と思ったのは、このドラゴンがオス(男の子)だってこと。もし女の子なら、ヒックの女友達にちょっとイジワルをする場面なんてまったく違う読み方が出来るのに。続編を作るっていうし、ドラゴンとの「三角関係」萌えるなー、見たかったなー。

 とまあ、極東の中年オタクのつぶやきはさておき、よく練れた語り口の米アニメ2作、おすすめです。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から報道局文化グループ記者。

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