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夏の悩みは読書感想文

2010年8月2日

  • 筆者 小原篤

写真:ジブリはただいま豆本で「借りぐらしのアリエッティ」キャンペーン中拡大ジブリはただいま豆本で「借りぐらしのアリエッティ」キャンペーン中

写真:宮崎駿監督拡大宮崎駿監督

写真:「海底二万海里」(ベルヌ作、ド・ヌヴィル画、清水正和訳、福音館書店)
拡大「海底二万海里」(ベルヌ作、ド・ヌヴィル画、清水正和訳、福音館書店)

写真:「西遊記・上」(呉承恩作、瀬川康男画、君島久子訳、福音館書店)拡大「西遊記・上」(呉承恩作、瀬川康男画、君島久子訳、福音館書店)

写真:「クマのプーさん プー横丁にたった家」(ミルン作、シェパード画、石井桃子訳、岩波書店)拡大「クマのプーさん プー横丁にたった家」(ミルン作、シェパード画、石井桃子訳、岩波書店)

 前回はオトナ(オッサン)向けの本を紹介したので、今回は子どもの本を。そんな気になったのは「岩波少年文庫の50冊 選・宮崎駿」を読んだから。宮崎監督がオススメの50冊について推薦文をしたため、スタジオジブリが小冊子(豆本)にまとめたものです。

 私は偉人伝やら「良い子のジドウブンガク」っぽいものはまるで受け付けない子どもで、岩波少年文庫にはほとんどなじみのない少年時代を送りました。なので、宮崎さんが「ぼくにもこんな夏休みがあったらなあ…」とため息をつく「ツバメ号とアマゾン号」も、「この世界に楽園があるとするならば、やかまし村がそれです」と宣言する「やかまし村の子どもたち」も、「ぼくは、セドリックと正反対で、ためらい、ものおじし、はっきりいえない子供でしたが、セドリックは好きでした。こういう子がどこかにいると今でも思っています」と述懐する「小公子」も、題名はもちろん知っていますが読んでいません(いまムラムラと読みたい気持ちがわき上がってます)。

 私がたどった道を思い返せば「大どろぼうホッツェンプロッツ」「ドリトル先生」「ホームズ」「少年探偵団」、落語、理科系や歴史系のものしり百科……。こんなものを区立図書館の児童室で毎週借りてきて読みふける子どもでした。宮崎さん推薦の50冊のうち子ども時代に読んだのは「シャーロック・ホウムズの冒険」「クマのプーさん」「海底二万里」「ドリトル先生航海記」「西遊記」のみ。なんということでしょう。ちなみにどれも岩波少年文庫でなく、大きめの判のハードカバーで読みました。

 大人になると、かさばらない文庫がありがたく思えますが、子どもというのは(少なくとも私は)ハードカバーのしっかり厚みのある本が好き。大判の方が挿絵も大きいですしね。ドリトル先生シリーズをいっぺんに4冊借りて図書館の手提げ袋をパンパンにして帰って、スナック菓子をかじりながら読み始めたらやめられない止まらない、その日のうちに全部読んでしまった、という思い出があります。ツバメが導く船の旅、博物館で暮らすネズミのハラハラドキドキのドラマ、カナリアの語る大河ロマンに時を忘れました。作者ロフティングによる素朴なタッチの挿絵も魅力の一つ。現在わが家にある岩波少年文庫版の「航海記」を今もときおり開きます。お気に入りは、河岸に座って脚をブラブラさせながら船を見送るスタビンズ少年の絵。彼にはこれからドリトル先生との出会いと冒険の日々が待っています。ああ、いいなあスタビンズ君。もしフィクションの中の誰かになれるとしたら、迷いなく彼を選びます。宮崎さんも「ムシャクシャして、イライラしている時、くたびれて、すっかりいやになっている時、この本を読むと、ホワーンとあたたかい雲の中に入ったように心も身も軽くなります。なんだかうまくやれそうな気がして来るのです」と、どう見ても子ども向けとは思えない推薦文を寄せています。

 ベルヌの海洋冒険ロマン「海底二万里」は、福音館書店の分厚いハードカバー(書名は「海底二万海里」)で読みました。とらわれの身のような主人公、暗い影を抱えた謎の男ネモ船長、そして深海の圧迫感、潜水艦の閉鎖空間――まさに息詰まる緊迫のドラマの連続。原書の精緻(せいち)な銅版画が驚異と神秘の世界へいざなってくれます。実は昔、本はいろいろ読んだけどどれも夏休みの読書感想文向きじゃなくて窮地に陥り、2年続けてこの「海底二万海里」を題材にしたことがあります。担任は同じ先生じゃないのでバレやしません。もう時効なのでここで告白しておきましょう。

 「西遊記」もやはり福音館のハードカバーで読みました。しかも上下巻1200ページ超の特大ボリュームで、今なら買うと計5250円! 図書館で借りた私が言うのも何ですが、それだけの価値はあります。訳文は漢語の響きが美しく、見慣れぬ文字や言葉が魔術的なオーラを放ち、それでいて不思議と子どもにもわかりやすく、原書にかなり忠実に天界での大暴れからたっぷり語って飽きさせません。そして見開きいっぱいの細密画にウットリ。ギザギザした線でびっしり描き込まれた怪物や服や家の形は「異国情緒」にあふれ、子どものころは中国の画家が描いたものと思いこんでいましたが、よく見たら「いないいないばあ」(松谷みよ子作)の瀬川康男さんによるもの。作風違いすぎ!

 ミルンの「クマのプーさん」は、手に取った時にはすでに「懐かしいなあ」という気がしました。E・H・シェパードの挿絵をあしらったお弁当箱を幼稚園のときずっと使っていたからです。そういう意味ではプーとクリストファー・ロビンは私の幼年期の象徴です。でも、「プー横丁にたった家」のラストを子どもの私が読んで理解できたとは思えません。「ぼくがいちばんしてたいのは、なにもしないでいることさ」と言うクリストファー・ロビンがプーに告げるのは、せつないせつない別れのことばです。「ぼく、もうなにもしないでなんか、いられなくなっちゃったんだ」。かつての私がそうだったように、これを読んだ子はきっとあるとき突然、ロビンとプーの後ろ姿と一緒にこの言葉を思い出すことでしょう。私はもう、それがいつだったか覚えていませんけど。

 宮崎さんの推薦文は「私が学生の頃、近所の小さなガールフレンドにプーを読んであげました。まあその時のその子のよろこびようは感動的ですらありました」。へえ〜。その幸せな子は、プーさんのお話を読んでくれた学生さんがミヤザキハヤオであったことを、覚えているんでしょうかねえ。

 というわけで「岩波少年文庫の50冊 選・宮崎駿」、読書感想文の宿題に何を読んだら(読ませたら)いいかお悩みの方にはヒントになるかもしれません。冊数限定で、全国5会場で開催される「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」で入手できるそうです

 最後に、宿題がユーウツなよい子のみんなに、とっても役に立つ実用情報を。友人のアニメ評論家・藤津亮太さんがネットに書いていた読書感想文のコツです。こういう流れで書けばよいのだそうです。

・その本をどこで手に取ったのか

・その本のどこをおもしろそうと思ったか

・本の概要

・実際に読み始めてみてどう思ったか(長い文章にするには、ここをストーリーの展開に合わせてやる)

・一番心に残った場面はどこか

・どうして心に残ったのか

 なるほど!と目からウロコです。子どものときコレを知っていれば、もっと楽ができたのに。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から報道局文化グループ記者。

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