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ゲゲゲの女房、アニマゲの女房

2010年9月13日

  • 筆者 小原篤

写真:ドラマの原作、武良布枝著「ゲゲゲの女房」(実業之日本社)拡大ドラマの原作、武良布枝著「ゲゲゲの女房」(実業之日本社)

写真:ドラマ「ゲゲゲの女房 完全版」DVDボックス1(東映)拡大ドラマ「ゲゲゲの女房 完全版」DVDボックス1(東映)

写真:「総員玉砕せよ!」(講談社文庫)拡大「総員玉砕せよ!」(講談社文庫)

写真:こちらは富野由悠季監督の自伝「だから 僕は…」。熱き青春の書。私の持っているのは今はなきアニメージュ文庫版(徳間書店)拡大こちらは富野由悠季監督の自伝「だから 僕は…」。熱き青春の書。私の持っているのは今はなきアニメージュ文庫版(徳間書店)

 追悼原稿が2回続いて気分が重いので、今回はゆるくて他愛ない話を。カミさんにつられて、NHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」を見ています。朝の連ドラをちゃんと見るなんて、もしかしたら人生初めてかも。

 腐る直前のバナナはうまいとか、夫婦で連合艦隊の模型を作ったといった水木しげるさんの厳しくも愉快な貧乏時代は、自伝「ねぼけ人生」(マンガじゃありません)や「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」(後に「完全版 マンガ水木しげる伝」に改題)などで読んでますし、奥様の武良布枝さんが書いた「ゲゲゲの女房」も刊行されてすぐ読んだので、私にとってはなじみのある世界です。

 肝心の貧乏ぶりは、ドラマのきれいなセットや清潔な衣装では水木マンガのリアリティーに及ばず。むしろ、いろんな本で読んだマンガ関係の人たちがゾロゾロ出てくるのがオモチロイ(水木しげる的表現)。「ガロの長井勝一さん(とおぼしき人)はずいぶん背の高いイケメンになったなあ。でも桜井昌一さん(とおぼしき人)はマンガのイメージ通りだな」とか、「このアシスタントがつげ義春さん(にあたる人)、こっちが池上遼一さん(にあたる人)か」「こないだ渡辺亮徳さんにお会いしたけど、ドラマの渡辺さん(にあたる人)はいい感じにアヤシゲだなあ。ご本人も大笑いして見てるだろうなあ」とか、こんなことをぼんやり考えニマニマ笑いつつ、のんびりした朝めしタイムを過ごさせていただきました。ちなみに桜井さんはマンガ家で出版社経営者で、水木マンガでおなじみのメガネで出っ歯でたいがい不運な目にあうキャラクターのモデル。渡辺さんはテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」「マジンガーZ」などを手がけた東映の大プロデューサーです。

 「鬼太郎」が当たって貧乏から抜け出すと物語は失速しちゃうかな、と予想していたのですが、上官との再会から戦地の回想に入ったくだりは秀逸でした。「個」を押しつぶす軍隊の話と並行して、主人公しげるの長女が級友とのトラブルに悩み、それをしげるの母がピシッとたしなめ励ます、というドラマが語られ、「孤立をおそれず意志を貫く難しさ」という普遍的なテーマを浮かび上がらせるという構成。そして一連のエピソードを締めくくるのは、しげるが満を持して「総員玉砕せよ!」にとりかかるシーン! 思わずテレビの方へ身を乗り出し「フハッ」。

 「これウチにある?」とカミさん。「モチロン!」と私。

 文庫版「総員玉砕せよ!」を差し出します。「ゲゲゲの女房」が始まって以来、貸本版「悪魔くん」や初のメジャー誌作品「テレビくん」など私の本棚の水木マンガをあれこれ読んできたウチのアニマゲの女房は、ついに戦記マンガの金字塔「総員玉砕せよ!」を手に取ることに。いさましい戦いなど何もなく、ワニに食われたり魚をノドに詰まらせたりしてあっけなく死んでいく兵士たち。そしてむなしい最後の突撃。死体が骨となり、やがて風景と同化していくラストは読むたびに粛然とした気持ちになります。

 その夜、帰宅して感想を聞くと「すごい! これは『一家に一冊』って本だねえ」。

 ドラマ「ゲゲゲの女房」、視聴率は出足こそ低調でしたが尻上がりに人気を上げ、8月はコンスタントに20%超え。NHKとしても朝の連ドラ久々のヒットとなりました。風変わりな夫を信じて支える妻の一途な姿、極貧からのサクセスストーリー、そして誰もが知る名作の生まれた舞台裏を知る面白さ。そんなあたりが受けたのでしょう。

 さて、しばらく前に友人たちと飲んでいて「今こそNHKは『ガンダム』をやるべきではないか諸君!」なんて話題で盛り上がったことがありました。「『未来少年コナン』を放映した栄光の火曜7時半のアニメ枠を復活させよう」「いやもう、いっそ大河ドラマで」「それなら朝の連ドラもありじゃない?」

 というわけで、見たいなー、朝のガンダム連ドラ「トミノの女房」(富野監督、ごめんなさい)。でもまずは原作か。富野由悠季監督の奥様には何度かお目にかかっているのですが、半生記お書きになりませんかねえ。ものすごく面白そうですけど……。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から報道局文化グループ記者。

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