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人生を変えた1本のアニメ

2010年10月4日

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写真:DVD「王立宇宙軍オネアミスの翼」はバンダイビジュアルから発売中拡大DVD「王立宇宙軍オネアミスの翼」はバンダイビジュアルから発売中

写真:山賀博之監督。昨年8月、スイス・ロカルノ映画祭で学生相手にセミナーを開いているところです拡大山賀博之監督。昨年8月、スイス・ロカルノ映画祭で学生相手にセミナーを開いているところです

写真:貞本義行さん。こちらも昨年8月のロカルノで「サマーウォーズ」の公式記者会見に臨むところ拡大貞本義行さん。こちらも昨年8月のロカルノで「サマーウォーズ」の公式記者会見に臨むところ

画像:ちょうど9月30日に朝日ノベルズで飯野文彦さんによるノベライズ「オネアミスの翼 王立宇宙軍」が復刻されました:ちょうど9月30日に朝日ノベルズで飯野文彦さんによるノベライズ「オネアミスの翼 王立宇宙軍」が復刻されました拡大ちょうど9月30日に朝日ノベルズで飯野文彦さんによるノベライズ「オネアミスの翼 王立宇宙軍」が復刻されました

 作品を見た時の衝撃が一番大きかったのは「ルパン三世 カリオストロの城」で、そのことは2008年5月5日の本欄「ハハッ、ロリコンだぁ!」にも書きましたが、自分の人生を変えたとなるとこの1本、ホリエモンが愛する作品としても知られる「王立宇宙軍オネアミスの翼」です。あれは公開から5年後の92年ごろのこと、私はちょうど今と同じく独り暮らしをしていました(当時は独身、今は単身赴任)。あれが「人生の転機」なんて、あとからほのぼの思うもの〜。今回はまあ、そんなお話です。

 当時の私は入社2年目。事件・事故、町ダネに高校野球と地方支局勤務は目の回る忙しさで、風呂は2日に1度にして少しでも睡眠時間をかせぎ、たまの休みは昼過ぎまで死んだように寝て、掃除して洗濯してあとはボンヤリ本でも読んでオシマイ。アニメなんか見やしません。そんな私が、支局の近くにできた大型古書店で「オネアミス」のビデオソフトを見つけ、「あぁ、なつかしい」と吸い寄せられるように手に取って、「欲しいから買っちゃおう」と迷いもせずにレジへ。我ながらフシギです。ビデオソフトなど買うのは初めてだし、だいいち、ビデオデッキを持っていなかったというのに。

 舞台はある星の王国オネアミス。戦争もせず「宇宙を目指すだけ」のお荷物集団「宇宙軍」のぐうたら士官シロツグが、色街で宗教ビラをまく少女リイクニにホレて舞い上がり、人類初の宇宙飛行士に志願する。ヒネてしらけていた仲間たちや、老いても夢を追い続けてきた科学者らが、力を合わせてついにシロツグを乗せたロケットを宇宙へ打ち上げる。観客も「打ち上げ成功!」の一点に向かってキャラクターと共に笑い、共に泣く。後に「エヴァ」を手がける貞本義行さんの絵柄に少々クセはありますが、爽快(そうかい)な作品です。

 公開時、大学の文芸サークルの同人誌にベタぼめの映画評を書き、卒業間近にリバイバル上映された折には日がな一日映画館にこもり、3度も4度も見続けました。シニカルになりきれない若者像や、「ワケのわからない生き物」として描かれる女の子との微妙な距離感がリアルで好きだったのですが、思い返すと、社会に出てちゃんとやっていけるか不安だった私にとって、「大人は汚い!分かり合えない!」なんてドラマでなく「ガキがオヤジと何とかやっていく」話だったことがポイントだったのかもしれません。内田稔さん、飯塚昭三さん、大塚周夫さん、槐柳二さん、納谷悟朗さん、熊倉一雄さん…と、オヤジ連の声がむやみと豪華でシビれましたし(ちなみにシロツグは森本レオさん。ナレーションで人気を博すのはこの作品の後です)。

 貧乏軍隊と落ちこぼれ青年と半分ぼけたジイさんたちが、「歴史の教科書に載るくらいリッパだよ!」(byシロツグ)といわれる偉業をどうしてなしとげられたか、よく考えると「??」なのですが、脚本・監督の山賀博之さんは抜かりなし。アクション(バイクで疾走)、死(頼りにしていた博士の事故死)、悩み(目的を見失うシロツグ)、性(レイプ未遂)、暴力(暗殺者との死闘)、陰謀(軍中枢の策略)、クライマックスは戦争(王国軍vs共和国軍)のさなかのロケット打ち上げとてんこ盛り。これと並行して宇宙服やロケットが徐々に形をなしていく様を描いて高揚感を演出、物語をグイグイ進めていきます。とても「それまで脚本を書いたこともない」24歳の青年の初監督作とは思えません。

 さて、つい懐かしさに負けてソフトを買ってしまった若き日の私は、「んじゃあデッキも買わないと」「給料もらってるんだから思い切って高級機にすっか」「やあ、いいねえアニメは。どれ、近所のレンタル屋に行ってみようか」てな感じで、就寝前のひととき「おにいさまへ…」のビデオに見入るような戻りオタクに。ちなみに当時あれこれ借りて見たはずなのですが、ほかの作品の印象をかき消すくらいインパクトがあったのが、池田理代子さん原作の少女マンガを杉野昭夫さん(キャラクターデザイン・作画監督)&出崎統監督のコンビで映像化した、この「おにいさまへ…」。名門女子校の乙女たちが秘密の花園で繰り広げるドロドロの愛憎劇。ドスの効いたラメ入りの「マリア様がみてる」みたいなものと思って下さい(違うかな?)。

 現在、17年半ぶりに独り暮らしを始めると何だか時間をもてあましてしまいます。自炊するにしたってひとり分では作りがいがないし。しょうがないので(?)せっせとアニメを見ましょうか。10月からの新番組が、どうか豊作でありますように。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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