現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 映画・音楽・芸能
  4. コラム
  5. 小原篤のアニマゲ丼
  6. 記事

超強台風がやってきたッ

2010年11月22日

印刷印刷用画面を開く

Check

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:「超強台風」は現在、名古屋と札幌で公開中。このあと静岡や大阪でも拡大「超強台風」は現在、名古屋と札幌で公開中。このあと静岡や大阪でも

写真:こちらはパンフレットです拡大こちらはパンフレットです

 特撮がどっぱーん! 特撮がざっぱーん!! いやあ面白かったです、中国映画「超強台風」。9月に東京で公開された時には見そびれたのですが、遅れて11月に名古屋で公開されたのです。でも公開2日目の日曜日に見に行ったのに客席のさびしいこと。「ディザスター(災害)ムービーなんて見飽きたよ」とか「ハリウッドのCGにゃかなわないだろ」と思われたのでしょうか。今ごろレビューして言うのも何ですが、もっと注目されてもいい作品です。

 中国沿岸部の人口120万人の都市に超強力な台風が襲来。大変だ!研修医しかいない離島で妊婦が大量出血し命が危ないッ! 船を守ろうとした漁師たちが避難せずまだ港にいるぞッ! ダム湖の水位が急上昇、ダムは持つのかッ? 次々と襲いかかる危機から120万の命を守るため、市長が立ち上がった!――という物語。

 見どころは水の特撮です。部分的にCGも使ってはいますが、荒れ狂う暴風雨と大地を揺るがす大波を、ど根性の泥くさい特撮で、これでもかこれでもかとたっぷり見せてくれます。脚本・撮影・特撮美術・編集を兼ねたフォン・シャオニン監督らスタッフが、数カ月かけて実際の台風を追いかけ大量の映像素材を確保、さらにミニチュアの車や船や建物に「洪水発生マシーン」で作った波をぶつけてガッチャンドッカン。堤防に群がる人に波が襲いかかり、港の船を押し寄せ吹き飛ばし、建物をのみ込んでなぎ払い、そして船同士がガンガンぶつかってひっくり返り、建物がグチャグチャとつぶれていく様を見ていると、脳内にいい感じの何かが分泌されて楽しくなってきます。子どものころ特撮映画を見て体に刻み込まれた快感が呼び覚まされるのでしょう、この気持ちよさは豪勢なCGでも味わえません。やっぱりホンモノはいい、ナマモノはいいのです。合成がなかなか巧みで、しかもけっこう大きな模型を使っているらしく、どこまでが実景でどこからがミニチュアなのかかなり分かりにくいのも憎らしい。

 もう一つの見どころは、ちょっと猪瀬直樹に似ている市長(ウー・ガン)のスーパーマンぶり。冒頭から、カンフー・スターばりのアクションでスリを捕らえ、「オレのシマで悪事は許さない(キリッ)」。

 嵐の迫る港で漁師たちと町長がモメていると、対策本部を抜け出したこの猪瀬直樹似の市長がジャジャ〜ンとカッコいいテーマ曲にのって登場。町長に殴りかからんばかりだった漁師たちは途端にしおらしくなり「ただの漁師のために市長がどうして…」と感激して涙ぐむと、「市民はみな、私の家族だ(キリッ)」。

 市長に従いみんなで港の倉庫に避難していると、そこに大波に乗って船がドッカーンと突っ込み、壁の大穴から波がザッパ〜ン、おまけにサメまでグワォー(おいおい)。市民を助けるため、この猪瀬直樹っぽい市長は鬼の形相でサメにとびかかります。「市長、危険です!」「オレは特殊部隊にいたンだッ(キリッ)」。中国の特殊部隊はサメをどつき倒す訓練までするんでしょうか?

 市長は暴風雨だって雨がっぱなどという無粋なものは着ず、スーツで駆けつけます。カッコいいテーマ曲にのって、スローモーションで駆けてきます。そして次のシーンではスーツもシャツもさらっと乾いています。そこがいいんです(すぐまたズブ濡(ぬ)れになりますけど)。

 市長は口の中にジャブジャブ水が入ってくるような暴風雨の中でも携帯でガンガン指示を飛ばします。さすが市長、携帯は完全防水なのかと思ったら、次のシーンで(晴れているのに)濡れたせいか使えなくなったりします。そこがいいんです。

 この手の映画にありがちなセクシー美女や甘ったるいロマンスが一切ないところが潔いのですが、その代わり役人や軍人が徹底して人民のために力を尽くす存在に描かれています。そこはまあ鼻白むところなのですけれど、その中心に置かれた市長の市民愛と万能ぶりは度を超えていて、もはやギャグです。ギャグと受け取ることにしましょう。

 おまけに終盤、ダムからの緊急放水を決断するのですが、それは排水設備がまだ出来ていない開発区を台なしにすることを意味します。「市長が命をかけて進めてきたプロジェクトだったのに」と嘆く幹部に対し、眉間(みけん)に深いシワを寄せて市長が言います。「市民の命の方が大切だ(キリッ)」。こんなプロットをわざわざ持ってくるというのは、開発に絡む不正でうまい汁を吸う腐敗官僚らに対する痛烈な皮肉というか、あてこすりとしか思えません。実はしたたかな映画なのではないかという気がします。

 というわけで、熱い特撮魂に触れたい方は、お近くで上映していたらぜひ「超強台風」をご覧下さい。

プロフィール

写真

小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

検索フォーム

おすすめリンク

空気をあむという発想から生まれた、繊細な作りのマットレス。これまでにない快眠環境をもたらします…KIDS用も!

努力はムダなもの?報われるもの?異なる価値観を持つ世代の声から見えてくる日本社会。

離婚のきっかけにも…他の女性とはできるのに、妻とだけできない既婚男性。その心理は。

空になったらクルクルと丸めて、コンパクトに持ち運べる便利なマイボトル

アウトドアで活躍する活躍するカメラグッズはこれ!お出かけの際はお忘れなく

システムが一新されて再スタートを切る「ファイナルファンタジー14」や、「世界樹の迷宮」の新作に、「真・女神転生」のナンバリングタイトル…

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介