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2011年7月25日
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小原篤のアニマゲ丼

いとしのぶりぶりざえもん

文:小原篤

写真:DVD「クレヨンしんちゃん ぶりぶりざえもん ほぼこんぷりーと」(バンダイビジュアル、3990円)拡大DVD「クレヨンしんちゃん ぶりぶりざえもん ほぼこんぷりーと」(バンダイビジュアル、3990円)〈商品を検索〉

写真:しんのすけが「救いのマラカス」を振ると現れるが、役には立たない拡大しんのすけが「救いのマラカス」を振ると現れるが、役には立たない

写真:ブタだけに食い意地はきたない拡大ブタだけに食い意地はきたない

写真:シリアスな顔で、どんなボケをかますのか (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK拡大シリアスな顔で、どんなボケをかますのか (C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

 出ました出ました、ぶりぶりっと(下品で失礼)DVD「クレヨンしんちゃん ぶりぶりざえもん ほぼこんぷりーと」が。22日に発売された2枚組には、放映20周年を迎えたテレビアニメ「クレヨンしんちゃん」の中から、セリフつきでぶりぶりざえもんが登場したエピソード25本が収録されています。

 しんのすけが考え出した「救いのヒーロー」という設定で生まれ、ゲストキャラとして定着。高慢で強欲でうぬぼれ屋でセコくてドジで役立たずで卑怯で臆病でカッコわるくて、でもみんなに愛されたぶりぶりざえもん。タイツ一丁で腰に千歳飴を差したこのおかしなブタに、とびっきりの美声をあてた声優塩沢兼人さん(「機動戦士ガンダム」のマ・クベ、「北斗の拳」のレイ役など)が不慮の事故により46歳の若さで亡くなってから11年、「塩沢さん以外の声はあり得ない」と現在に至るも代役は立てられず、番組に登場してももうしゃべることはありません。そんなぶりぶりざえもんの往事の活躍をギュッと集めてくれるとは、何とありがたいことでしょう。

 作品を見返すと初めは単なる頼りないドジキャラで、そこからナルシストっぽい性格が強められ、キザなセリフを吐いては袋だたきにあい、コロコロ裏切ってはボコボコにされる(私は常に強い者の味方だ!が信条)というパターンが確立されていきます。天然の「おバカ」パワーで突き進むしんのすけと、どこまでも小ずるく立ち回る(そして失敗する)ぶりぶりざえもんは、いいコンビだなぁと改めて思います。

 「野原刑事の事件簿」という一連のエピソードでは、ぶりぶりざえもんがフランスから特派された捜査官という設定で登場、塩沢さんが「ぼじょれ〜ぬ〜ぼぉ〜」とか「めるしぃぶ〜く〜」と鼻に抜ける発音を思い切りキザにやってて笑えます。ヒネたギャグ声との落差もピカイチ。11年前に訃報と追悼記事を書きましたが、惜しい役者さんを亡くしたものです。「これが夢でなく現実なら、兼人、バカヤロウ、と言いたい」。同じプロダクションの先輩柴田秀勝さんが絞り出すような声で読んだ弔辞を、今も思い出します。

 「ほぼこんぷりーと」の中で特におすすめは「クレヨンウォーズ」と「クレヨン大忠臣蔵」。前者はCGも使った本格的な「スター・ウォーズ」パロディーです。ぶりぶりざえもんの役どころは宇宙一速い「ヒレにこみブリトン号」を駆る海賊レオナルド・デカぶりオ。しんちゃんたちが帝国の船に潜入するのを助けますが、案の定、敵のアーシクセイダー(←実は父ひろし)に寝返って、さらに皇帝にすり寄って、最後は調子に乗って皇帝を名乗って黒コゲで宇宙の果てへ。

 後者では、吉良上野介ぶりぶりざえもんとなって風間内匠頭のはかまを踏んづけて転ばし、「このうつけ者、何か言うてみいこのコドモ侍」といじめる憎々しーい悪役っぷりが楽しめます。塩沢節まさに絶好調。はかまのヒヅメ跡を示され「謝れ」と迫られると、ぶりぶりざえもんは腰のものをサッと抜きます。つられて殿中で刀を抜いてしまった風間くんに「バァーカ、これは千歳飴だもんねー、ペロペロ」。最後は、庭の豚小屋に隠れているところを大石しんのすけたちに見つかり、アクション仮面のビームとカンタムロボのパンチを受けてやっぱり黒コゲに。

 ぶりぶりざえもんをぶりぶり堪能した後は、1998年公開の劇場版「クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦」をぜひ。電子生命体(コンピューターウイルス)が登場したり、電脳世界にダイブしたり、リアルなガンアクションありキレのいい肉弾戦あり、何だか「攻殻機動隊」っぽいですが味わいはまるで違う、笑って泣ける原恵一監督の佳作です。

 悪の組織が世界中のコンピューターを思うがままに操るために作らせた史上最強のウイルス、それがぶりぶりざえもん。電脳空間でしんちゃんから「救いのヒーロー」道を教えられ改心したのもつかの間、生みの親の科学者の手によってデリートされ光の粒子となって消えていく。しんちゃんへの別れの言葉「じゃあな」が、しみじみとクールに、夕焼けの空に響きます。そして最後の最後、みんなの命を助ける奇跡を起こし、ついに本当の「救いのヒーロー」に…。ああ原監督、これじゃあまるで最終回みたいじゃないですか。でもいいです、ぶりぶりざえもんには、いつでも会いに行けるから。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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