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2011年11月14日
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小原篤のアニマゲ丼

びっくりフジツボ!

文:小原篤

写真:「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」 (C)2011 Paramount Pictures.All Rights Reserved.拡大「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」 (C)2011 Paramount Pictures.All Rights Reserved.

写真:「映画 怪物くん」 (C)藤子スタジオ、小学館/2011「映画 怪物くん」製作委員会拡大「映画 怪物くん」 (C)藤子スタジオ、小学館/2011「映画 怪物くん」製作委員会

写真:「源氏物語 千年の謎」 (C)2011「源氏物語 千年の謎」製作委員会拡大「源氏物語 千年の謎」 (C)2011「源氏物語 千年の謎」製作委員会

 コラムのネタにならないかと、スティーブン・スピルバーグ監督がベルギー生まれの世界的に有名なコミックを映画化した「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」(12月1日公開)の試写に見に行ったら、主人公タンタンに同行してドタバタを繰り広げるハドック船長が、驚いた時に「びっくりフジツボ!」なる奇妙な感嘆詞を連発してました。見ている私もビックリふじつぼ!

 はて、字幕を担当した戸田奈津子さん考案のギャグか? と思ったら、同僚のM記者によると英語のセリフに「フジツボ」が入っているのをそのまま訳しているそうです。ハドックはおかしなののしり言葉を繰り出す口の悪いキャラクターで、原作の日本語版では「なんとナントの難破船!」などと訳されているとか。すみません、「タンタン」読んだことがないので知りませんでした。

 ネットで調べたら、「びっくりフジツボ!」の基になったハドックのセリフはどうやら「Billions of blue blistering barnacles」(何十億もの青いひどいフジツボ?)、原作(フランス語)では「Mille millions de mille milliards de mille sabords」なのかな。「mille sabords」は水夫らが使うののしり言葉(ちくしょう!のたぐい)だそうで、百万の、十億の、とmで始まる数詞を重ねて大げさにした原作のセリフのニュアンスを、英訳者はbillionsを先頭にbで始まる単語で、和訳者は「な」で始まる海にまつわる言葉(ナントはフランスの港町)を連ねて何とか再現しようとしたのですね。

 だとすると「びっくりフジツボ!」も何とか工夫したいところ。「びっくりフジツボ足のツボ」とか言うとハドックが広川太一郎さんになっちゃうなー。「ウツボフジツボわし脱帽」と語呂を合わせてみたけど長いかなー。「びっくり+海洋生物」で「びっくりハマグリ」…いまいち。じゃあ「びっくりハマグリあっさりシジミ」とか「びっくりビンナガマグロの刺し身」……うーん、ダメか。

 さて肝心の映画の中身は、少年記者タンタンと酔いどれハドック船長が、卑劣な悪党サッカリンと沈没船の財宝を巡って争奪戦を繰り広げるというもの。暗号の手紙の発見、誘拐、船からの脱出、海で遭難、セスナで墜落、砂漠を放浪、最後はモロッコの王国でバイクアクションと、始めから終わりまでドタバタアクションてんこ盛り。ですが、いま一つギャグのキレが悪くて……。スピルバーグ監督のコメディー「1941」の苦い思い出がよみがえります。もっとハデなスペクタクルを入れた方が、とも思いますが、クラシカルな連続活劇の趣は原作のムードに沿ったものなのでしょうし(読んでないけど)、スピルバーグ監督もそれがやりたかったんでしょう。ちなみに、この映画は英語なのでタンタン(TINTIN)は「ティンティン」と呼ばれてます。

 「アバター」でも使われた、役者の動きや表情をCGキャラクターに移しかえるパフォーマンスキャプチャーと呼ばれる技術によるフルCGの3D(立体)映画。タンタンの顔は、リアル人間9にマンガ風味1をブレンドしたような、と言えば伝わるでしょうか? 違和感はありませんが、あんまりカワイクなし。時々えなりかずき君に見えました(えなり君がカワイクないという意味ではありません)。

 「これなら、原作のまんまの絵か、実写の役者でいいのになー。そうだ!『怪物くん』を見事に演じている大野智さんなら、あのままタンタンだってできるのに。同じようなセーターとズボンはいてるし…」などとボンヤリ考えつつ、今度は「映画 怪物くん」(11月26日公開)へ。スケール感やCGの質はハリウッド大作には及びませんが、しかめっ面と猫背でユカイツーカイ怪物くんを演じる大野さんをはじめ、ドラキュラ=八嶋智人さん、オオカミ男=上島竜兵さん、フランケン=チェ・ホンマンさんの怪物3人組も敵役の上川隆也さんもハマってハジケて、気楽に楽しめました。

 お話は、怪物ランドからインドの「カレーの王国」にやって来た怪物くんたちが、国を乗っ取ろうとする怪物を懲らしめるというもの。得意の念力を封じられた怪物くんがクライマックスで復活し怒りの大噴火! インド人もビックリです(まだネタをひきずってる)。

 似合いすぎるコスプレショーを堪能した後は、衣冠束帯と十二単(ひとえ)の平安絵巻ショーへ、ということで(どういうことだか)「源氏物語 千年の謎」(12月10日公開)にも。源氏物語の世界と紫式部(と藤原道長)の物語を並行して描く構成は、知る人ぞ知る怪作「千年の恋 ひかる源氏物語」(2001年)と同じです。製作会社が違うというのに、10年たってナゼまた同じ趣向で?というのは「千年の謎」ならぬ「十年の謎」です。安倍晴明(窪塚洋介さん)が紫式部(中谷美紀さん)を危険人物扱いしたり、源氏物語の中に入り込んだりする展開には、ちょっとビックリしましたけど。

 豪華ケンランぶりは、東映が創立50周年記念として力を入れた「千年の恋」に残念ながら及びませんが、絶世の美男子・光源氏役の生田斗真さんは、憂いを帯びた雰囲気をまとってなかなかの力演です。ただ一人ヌード(上半身)になって気を吐いています。道長の東山紀之さんも色気と貫禄十分、紫式部が道長と光源氏を重ね合わせるというドラマにがっちりハマっていますが、映画は出家した藤壺を光源氏が呆然と見送るところでEND。もうちょっと先が見たかったなー、女の子さらって囲って自分好みに育てる話とか……。

 あ、「びっくりフジツボ! どっきりキリツボ!」っていうのはどうでしょう? やっぱりダメか。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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