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2011年12月5日
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小原篤のアニマゲ丼

卒論、就職、今昔物語

文:小原篤

写真:中京大学・名古屋キャンパス(名古屋市昭和区)拡大中京大学・名古屋キャンパス(名古屋市昭和区)

写真:講演会場にこんな張り紙があって照れる拡大講演会場にこんな張り紙があって照れる

写真:受講者は女性がかなり多かったです拡大受講者は女性がかなり多かったです

写真:講演するワタシ拡大講演するワタシ

 名古屋の中京大学で講演をしてきました。国際英語学部英米文化学科の2年生を対象とした「就職セミナー講演会」。ちょうど3年生の就職活動が1日から本格的にスタートしましたが、2年生のうちから仕事とは? 就職とは? を考えてもらおうと毎年この時期に、様々な業界の人を呼んで話を聞かせるという趣旨だそうです。人前で話したことなんてほとんどないけどこんな私でよろしかったら、とお引き受けしました。演題は、まあこれしかなかろうということで「アニメ記者のできるまで」。

 実は弊社には「講師派遣制度」なるものがありまして、記者を記者だけでなく講師としても働かせたらいいんじゃね? という趣旨のもと、私も2年ほど前から講師リストに加えられていたのですが、ずーっとお茶をひいておりました。今回、セミナー講師を捜していた同学科専任講師の小林英里さんが、弊社に勤める友人に教えられ、アサヒ・コム内のリストを物色していたところ「この顔知ってる!」と私の写真を見つけ、こうして初めてお呼びがかかったという次第。小林さんは本欄アニマゲ丼の愛読者だそうで、ならばかしこまる必要もなし、アニマゲ流でやらせていただきましょう!と講演スタート。

 大学が楽しかったので4年で卒業するのは惜しい、と院を受けたが落っこちて留年。入学時から同人誌活動をせっせとやってきたので、文章を書く仕事がしたいと新聞社を受け内定。研修もそこそこに赴任した三重県津支局(当時)にてオン・ザ・ジョブ・トレーニングで仕事の基本を身につけ、名古屋社会部時代に「アニメは記事になる」と手応えを感じ(今年9月12日の本欄「1997年 あの時なにかが変わった」参照)、東京の学芸部(当時)に異動して「アニメ記者」宣言をし(2008年11月3日の本欄「本業に差し障りがないのなら」参照)、本欄の前身「アニマゲDON」を担当してせっせとアニメ記事を書いてるうちに、「千と千尋の神隠し」の記録破りのヒットやベルリン映画祭金熊賞受賞とアニメに追い風が吹いて…。

 といったお話を約70人の学生さんたちにしましたが、振り返って今の学生に何とも申し訳なく思うのは私の就活。確か3月に就職を決意して、マスコミ志望者向け通信講座で勉強し、5月ごろ全国紙4社の筆記試験を受け、各社3〜4回の面接試験をくぐり抜け、6月終わりごろに3社から内定獲得。就活というより感覚は「受験」に近く、当時はそれなりにせっぱつまっていたのでしょうが、振り返ると「どっかには受かるさ」とのんきに構えていた気がします。とある社は、まだ内定前の学生を集め高級ホテルで立食パーティー、内定後に個室でフレンチのフルコースをおごってくれました(注:弊社ではありません)。1990年、時はまだ「バブル」だったのです。いま考えるとどうかしてました。吹雪をついて果てのない泥沼を行軍するかのような昨今の就活を見聞きするにつけ、胸が痛みます。

 英米文化学科というのは、英米の文学だけでなく映画やドラマやアニメなど様々な文化を対象にして学ぶ学科だそうで、卒論に特撮やアニメを選ぶ学生も多いのだとか。准教授の森有礼さんによると、卒論テーマとして根強い人気は宮崎アニメとディズニー。今年は、「魔法少女まどかマギカ」と「新世紀エヴァンゲリオン」比較論、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」に見る平成世代のノスタルジー、過去には「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」とAKB48の相似性、といったテーマのものがあるのだとか。なんだか面白そう。私が卒業時に同人誌に書いた原稿用紙300枚の宮崎駿論も、今なら正規の卒論としてアリかも…。でもあんな断片の寄せ集めじゃダメか。

 講演会を終えた夜の打ち上げで、同い年の森先生とオタク話で盛り上がったのですが、おしゃべりの中で私が作品名を思い出せずにいるとすかさず「それは『コレクター・ユイ』ですね」などと教えてくださるたいそう濃い人でありまして、聞けば前回の本欄にも登場した友人のアニメ評論家・藤津亮太さんとは大学の合唱団の1年先輩だった方だそうです。いやぁ、世間は狭い!

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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