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2012年1月9日
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小原篤のアニマゲ丼

新聞にアニメの全面広告が載った理由

文:小原篤

写真:弊紙に載った「ギルティクラウン」(手前)と「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の全面広告拡大弊紙に載った「ギルティクラウン」(手前)と「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の全面広告

写真:「ギルティクラウン」の広告を持つ大山良プロデューサー拡大「ギルティクラウン」の広告を持つ大山良プロデューサー

写真:元日の紙面にこんな風に載りました拡大元日の紙面にこんな風に載りました

写真:「ギルティクラウン」ブルーレイ第1巻(アニプレックスから1月25日発売)拡大「ギルティクラウン」ブルーレイ第1巻(アニプレックスから1月25日発売)〈ブルーレイ「ギルティクラウン」を検索〉

 今年は元日からアニメの記事を書きました。といっても載ったのが元日で、取材も出稿も昨年のうち。朝刊の別刷り「ラジオ・テレビ特集」のアニメコーナー1ページを担当しました。目玉は「新聞に深夜アニメの全面広告を出すのはどんな狙いがあるのか?」を探る記事です。

 昨年10月13日の朝刊(東京本社版)に、その日の深夜からフジテレビ系で始まるアニメ「ギルティクラウン」の全面広告(しかもカラー)がデーン!と載りました。そのわずか9日前の10月4日に、やはり深夜アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の全面広告(やっぱりカラー)が載って、めんま(ってあだ名の女の子)のちょいロリ水着姿に「うおっ!」と驚いたばかりでした。ライバルの読売新聞にも「魔法少女まどか☆マギカ」や「アイドルマスター」が全面広告で登場しました。深夜アニメのファン層と新聞読者層は、誰がどう考えたってあんまり重なりそうに思えないので(涙)一体どんな効果を期待してるのか、かねてより興味があったのです。

 「新年別刷りで、アニメで1ページ作ってほしい。中身は任せます」と依頼してきたラジオ・テレビ欄担当のM編集長に、「うーん、アニメで今、景気のいいおめでたい話ってあるかなぁ…」とか「正月は番組改編期じゃないから新番組のネタも少ないし〜」「テレビ限定だから、映画やパッケージソフトの話は不可ですよねぇ」などとボヤいて電話を切ったあと、この「全面広告のナゾ」がパッと思い浮かびました。

 おとそ気分で読んでもらうには少々ヒネった変化球ですが、このご時世、新聞にとってカラーの全面広告をポンポン出してくれるなんて「景気のいい話」です。企画を出したら、M編集長も「初めはどうかと思ったが、面白そうですね」とOKが出て、さっそく上記4作を制作しているアニプレックスの人に「この全面広告、狙いは何ですか?」と聞いてきました。

 インタビューに答えてくれたのは「ギルティクラウン」担当の大山良プロデューサー。その答えは簡潔でした。「狙いはメッセージ力、ギャップ感、イベント性の三つです」

 「ギルティクラウン」は原作のないオリジナルアニメ。秋の番組改編で30本ほどの深夜アニメがゾロゾロ始まる中、ヒットしているマンガやライトノベルを原作にした作品に比べれば知名度は劣ります。過酷なレースに勝ち残るには、まずは確実にスタートラインに立つことが大事、「第1話を見てもらわなければ何も始まらない」というわけで、取った手段が「新聞に全面広告」というでっかい花火なわけです。

 「大きな広告でタイトルを知ってもらい、それだけ力を入れた今季のイチオシ作品だとアピールする。新聞という媒体には『格』があるので、そこに広告を出すことで、この作品はクオリティーが高く、コアなアニメファンだけでなく幅広い層に訴えるストーリー性とテーマを持っているんだ、というメッセージを送ることができる」

 「格」というお言葉、ありがたいやらこそばゆいやら。

 「ギルティクラウン」は国際組織の統治下に置かれた日本が舞台。友人の体から『武器』を取り出す特殊な力を身につけた高校生の主人公がレジスタンス組織と共に戦う物語は、「平凡な少年に思わぬ能力が」という王道を行きつつ、ヒロインの体に手を突っ込んで武器を抜き出す描写にちょっとドキドキする要素を潜ませ、学園生活あり生死をかけた戦闘ありというイマドキの学園ファンタジーバトルです。「テーマは少年の成長、友人=他者との関係性、そしてボーイ・ミーツ・ガールです」と、大山プロデューサーは同作に込めた普遍的なテーマを挙げてくれました。

 さて、狙いの二つ目「ギャップ感」とは?

 「硬いニュースが並ぶページをめくって突然アニメのキャラクターがドン!と飛び込んできたら、朝刊を広げたお父さんは『何だ?』と目をむき、のぞき込んだ息子は『すごい!』と驚く。人の目をひくのは広告の重要なポイント。大きなギャップが話題性を生む」。そして「本命」のイベント性につながります。

 「全面広告が一つの事件、一つのニュースとなってネットを駆け巡る。早朝からツイッターや掲示板にたくさんの人が書き込み、それを読んだ人が新聞を買いに走り、ネットの反響をまとめたサイトができ、と一種のイベントに参加したようなお祭り感覚が味わえる。新聞というメジャーな場に大きな広告を出すインパクトが、口コミを生むんです」

 期待通り「ギルクラ」の全面広告にはネットで「本気だな」といった反応がわき上がりました。「まどマギ」しかり「あの花」「アイマス」しかり。「この広告戦略は、ソーシャルメディアの存在も前提の一つ。ビビッドな反応に手応えを感じている。新聞を使ったらさらにどんなお祭りができるか、今後もアイデアを出して挑戦していきたいですね」と大山さん。

 思い返せば本欄の前身である夕刊連載「アニマゲDON」は、社内の広告局が「アニメやマンガやゲームといった勢いのあるジャンルの広告を取ってくる武器にしたい」と主導して、1999年にスタートしたページでした。記事部分は編集局に、というか私にお任せで(2008年11月3日の本欄「本業に差し障りがないのなら」参照)おかげで好き勝手にやらせてもらいましたが、広告局としては随分と苦労したらしく4年と10カ月で連載終了。そこにはやはり、ファン層と新聞読者層のギャップがあったのだろうと推察します。

 あれから実質13年、夕刊で週1回掲載している「ポップ面」をはじめ、そのほかのページでもアニメやマンガの記事が載る機会は増えたはずなのですが、今回うかがったお話は「新聞とアニメのギャップ」がネットでの「口コミ」の起爆剤になった、というもの。うーん、やはりまだ「ギャップ」なのかぁと、わかっちゃいるけどフクザツな気分……。

 いやいや、このご時世、カラーの全面広告をポンポン出してくれるなんて「景気のいい話」なんですけどね。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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