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2012年2月27日
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小原篤のアニマゲ丼

ヤマトとアホ毛と青い顔

文:小原篤

写真:「宇宙戦艦ヤマト2199」より、右が沖田艦長(声:菅生隆之) (C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会拡大「宇宙戦艦ヤマト2199」より、右が沖田艦長(声:菅生隆之) (C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会

写真:左から森雪(声:桑島法子)、島大介(声:鈴村健一)、古代進(声:小野大輔)拡大左から森雪(声:桑島法子)、島大介(声:鈴村健一)、古代進(声:小野大輔)

写真:まだ目を覚まさぬヤマト拡大まだ目を覚まさぬヤマト

写真:5月25日に発売されるブルーレイ第1巻(バンダイビジュアル)拡大5月25日に発売されるブルーレイ第1巻(バンダイビジュアル)〈「宇宙戦艦ヤマト 2199」を検索〉

写真:「『宇宙戦艦ヤマト2199』発進式」会場ロビーでは、旧作の森雪のコスチュームの女性が迎えてくれました拡大「『宇宙戦艦ヤマト2199』発進式」会場ロビーでは、旧作の森雪のコスチュームの女性が迎えてくれました

写真:発進式会場のよみうりホール(東京・有楽町)でスタッフ、キャスト、観客が「敬礼!」=「2012 宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会」提供拡大発進式会場のよみうりホール(東京・有楽町)でスタッフ、キャスト、観客が「敬礼!」=「2012 宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会」提供

 1974年のシリーズ第1作「宇宙戦艦ヤマト」をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」が、4月7日から劇場で公開されます。全26話を7章に分け順次上映し、4月7日公開の第1章(1&2話)は5月25日にソフト発売開始、そのほか配信、ネットラジオ、マンガ化、さらにその先のテレビ放送(予定)……と、「全砲門開け!」的なフルアーマー装備のマルチウインドウ展開によるオールレンジ攻撃が待っているわけですが(書いていてよく分かりません)、とりあえず2月18日に東京で開催された「『宇宙戦艦ヤマト2199』発進式〜俺たちのヤマトSP〜」で、第1話を見せてもらいキャスト&スタッフトークを聞いてきたので、楽しかった「アホ毛」と「青い顔」の話をします。

 オリジナルキャラクターのデザインを「2199」では結城信輝さんがリファイン。ヤマト搭乗員に新たな女性キャラが何人か加わっているのですが、その中にいるのです、アホ毛(注:いまどきのアニメキャラに特徴的な、オデコあたりからピョコンと触角のように伸びている毛)の人が。

 「2199」で総監督・シリーズ構成を務める出渕裕さん、声優陣と一緒に登壇しスクリーンに映し出されたキャラ表を見ながらいきなりぶっちゃけモードに。「1話で古代が沖田に詰め寄る場面で、シリアスなシーンなのにこのアホ毛のキャラクターが後ろに立ってて、それが気になっちゃって……」。

 結城さん「実は私も……」。

 「オレ、けっこう反対したよね?」「いやー、でもいまどき女性キャラクターにアホ毛ぐらいついてないと」「総監督なのに周りの圧力に負けたオレ(笑)」

 そして出渕さん、今度は敵であるガミラス星人の顔が青い件について。

 「第1作では、プロデューサーが『宇宙人らしく顔を青くしろ』と放送が始まってから言い出した。最初にそう言ってくれってハナシですよね。だから(序盤に出てくる)冥王星基地のシュルツとガンツは肌色で、デスラー総統は途中で肌色から青色になっちゃった」

 旧作を見てない方には信じがたい話かも知れませんが、第11話冒頭、デスラーが臣下たち(←肌は青色)の列の前を歩く場面で、歩いているうちにデスラーの肌が黄色っぽくなり赤っぽくなり最後に青色になって落ち着く、という珍妙なシーンがありまして。今まで肌色っぽく見えていたのは光線の具合だったってことにしてくれよ〜、という声なき声が画面の奥から聞こえてくるようです。当時のスタッフは苦労して知恵を絞ったんでしょうねえ。

 しかし、スクリーンに映る新シュルツと新ガンツは、やっぱり肌色。

 出渕さん「アレ、今回も肌色じゃん。じゃあ彼らはガミラス人じゃないのかな〜」。

 結城さん「色ミスまで再現したい、という出渕さんの思い入れでしょ」

 出渕さん「実はシュルツとガンツを今回も肌色にしたのは、ガミラスは植民地化した星の人間を取り込んで帝国を築いているので、彼らはガミラス人じゃなくいわば二級市民の扱いを受けている、という設定なんです」

 なるほど、「2199」のスタンスは、74年版の「らしさ」「面白さ」を維持しつつ「理屈付けが可能な部分やファクターは徹底的に理屈付けする」というものなのだそうで、肌色問題にもその姿勢が現れていると思います。

 そのほか、現在までの科学的成果を反映して呼称は「大マゼラン星雲」から「大マゼラン銀河」へ、距離も14万8千光年から16万8千光年に改め、「イスカンダルから設計図が届いてから3日くらいでヤマトに波動エンジンができちゃってる」みたいに見える旧作の展開もきちんと理屈が合うよう改良が施されているそうです。地球は放射能で汚染されているのではなく、ガミラス人が「テラフォーミング」つまり環境を改造しようとしてそれが地球人には有害で、という設定になっています。いろいろと考えていますねえ。

 拝見した「2199」第1話は、冥王星会戦(沖田艦長の名セリフ「バカめ」もあります)、火星でのカプセル回収、沖田と古代の出会い、朽ちた姿で眠る戦艦大和と、旧作第1話を踏襲しつつも細部の密度を上げスピードアップ&パワーアップ。ところどころに新解釈を織り交ぜ(例えば冥王星会戦は陽動だった、とか)全体の印象はすっきりスマート、かつてファンを悩ませた作画のデコボコした乱れなどもちろんありません。その分、旧作の持っていた泥臭さとか粗っぽいけど彫りの深い味わいとかはなく、沖田艦長なんかは正直「顔も声ももっとドスをきかせてほしい」と思わなくはないのですが。

 しかしその辺は作り手も重々承知の上。出渕さんはこうおっしゃいました。

 「4年以上前にこの企画の話をいただいた時は、周りから『危ないからやめておけ』『火中の栗を拾うようなものだ』と言われた。しかしこの『火中の栗』は拾わなければならないと思い、4年間やってきた。100人いれば100人の『ヤマト』像がある。全部を満足させるのは不可能だが、だいたいの人が『これがヤマトであろう』と思う最小公倍数か最大公約数のようなレベルまでは持っていけたのではないか。本日は『ヤマト2199』に乗船いだたき、ありがとうございました」

 というわけでもう「ヤマト2199」に乗っちゃったので、あとは旅の最後までお付き合いするしかありません。今回のコラムを見て、もしいろんな意味で心がぞわぞわしたら、アナタもぜひご乗船下さい。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。

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