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2012年3月19日
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小原篤のアニマゲ丼

とんちと波動砲と脳内補完

文:小原篤

写真:「宇宙戦艦ヤマト2199」の出渕裕総監督拡大「宇宙戦艦ヤマト2199」の出渕裕総監督

写真:「宇宙戦艦ヤマト2199」第1話から これがガミラス艦拡大「宇宙戦艦ヤマト2199」第1話から これがガミラス艦

写真:「2199」第1話の沖田艦長拡大「2199」第1話の沖田艦長

写真:私の記憶で描いた沖田艦長の「あの口」。つたない粗末な絵ですみません拡大私の記憶で描いた沖田艦長の「あの口」。つたない粗末な絵ですみません

写真:結城信輝さんがキャラクターデザインをした「2199」の沖田艦長拡大結城信輝さんがキャラクターデザインをした「2199」の沖田艦長

 すみません、また「宇宙戦艦ヤマト2199」の話です。先日、総監督・シリーズ構成の出渕裕さんにインタビューをしたので、いずれ紙面にも出ますがそれよりも早く詳しくお伝えします。

 出渕さんとはこれまでも、取材で話をうかがったりイベントでお会いしたり。「小原さんの『ヤマト』コラムを読んで、コレは近々取材に来るな、と思ってましたよ」とのこと。へいへい、その通りでございます。後輩から仕事をぶんどって、名古屋から出張してきました。

 1974年の最初のテレビシリーズをリメークし、4月7日から全7章に分け劇場公開する「ヤマト2199」。そのココロは「オリジナルへのリスペクト」と「脳内補完のビジュアル化」です。

 出渕さん「これまでいろいろなもののリメークがあったが、名前は同じでも全く別物になったりすることが多い。2199は旧作をきちんとリスペクトし、昔のヤマトをビジュアル的にブラッシュアップする。旧作を見返すと、当時としては頑張っているけどいろいろ惜しいところも目立つ。それを、僕たちは妄想を膨らませて脳内で補完して見てきた。2199はその脳内補完をビジュアル化して、『本当はこうしたかった』『本当はこうなるはずだった』ヤマトを見せる」。

 主役のヤマトはもちろんですが、敵のガミラス艦もオリジナルのデザインを踏襲しています。

 「古くさく見えるかも知れないが、完成度は高い。今のラインでデザインすればキューッととがったシャープな形になるのだろうが、それでは『ヤマト』らしくない。メカのディテールを描き込むことで重さと存在感をプラスし、画面に奥行きと厚みを持たせることで、オリジナルの武骨なアナログ感を味にしたい。ヤマト艦内の計器類もアナログ的なまま。主砲発射もワープも波動砲も、各部署で人が手を動かし、多くの作業の積み重ねで動く。でっかい機械を動かす大変さと面白さ、ワクワクするプロセスをきっちり見せるのが『ヤマト』の魅力。デジタルで自動でピピピッ、ハイ完了!じゃあ味気ない。あ、ガミラスの方は比較的デジタルっぽくしたかな」

 変えたのはテンポとスピード。

 「旧作は全体にまったりしていて、あのままでは新規のお客さんにはかったるい。3話かけてヤマトが旅に出発していたのを2話にして、次の第3話でワープも波動砲も出す。テンポよくたたみかけていきたい」

 そして知恵を絞ったのは、「あり得ない」設定をどうやって「あり得る」に変えるか。

 「大切な記憶にあるビジュアルを維持し成立させるための理屈付けです。例えば冥王星に海がある。あり得ないけれど、ガミラス基地の攻撃を受けたヤマトが海に沈んだと見せかけて…というお話をやるとなると海はほしい。ではなぜ冥王星に海があるのか。あと木星には『浮遊大陸』なんて森が茂る陸地が浮かんでいるがそれはなぜか。そこに理屈を付けた。まあ、ムリクリとんちやヘリクツをきかせて、ですけど」

 その「とんち」のアレやコレやを聞かせていただきましたが、まさかそんなところにつなげるとは!というアクロバティックなものでした。

 そして、波動砲についての深いお話も。

 「旧作を見ると、ヤマトが波動砲を撃つのはコロナや火山脈で、敵艦とか人のいるところには直接撃たない。作り手が自らを戒め、殺戮(さつりく)兵器として描くことはしないという志を持っていたんでしょう。ガミラス星での決戦は結果的にひどいことになったし、その後の作品では波動砲の扱いも違ってきますけど、あの志は貴いものだったと思う」

 出渕監督は1958年生まれ。最初の「ヤマト」は高校1年で見たことになります。

 「1話は見損ねて、2話から見た。『すごい!』『すばらしい!』とたちまちハマって、2年の時には同人誌を作って、ファン活動に熱中してアニメスタジオに見学に行くようになり、18の時には『ダイモス』(1979年のロボットアニメ「闘将ダイモス」)のやられメカのラフイメージを提供するようになって、そこからそのままプロの道へ。だから『ヤマト』で人生変わった。僕を含め『ヤマト』に導かれてこの業界に入ったという人が40代50代にたくさんいる。だから、2199をやらないかと誘う時こんな風に口説いた。『ヤマト』で転んだオレたちで『ヤマト』にケジメをつけよう、コレやってみんなでリスタート(再出発)しよう。『それは殺し文句だね』って言われました」

 インタビューを終えて、写真を撮りながら雑談モードに。

 私「今回の取材のために改めて旧作を見返したら、自分はこんなに『ヤマト』が好きだったかと再認識しました。特に旧作の沖田艦長が好きすぎて、2199の沖田が『あの口』をしてくれない!とか不満に思っちゃって」

 あの口とは、旧作の沖田がどアップで叫ぶ時、口をナナメの楕円(だえん)に開き上下の歯をぐわっとむき出す「あの口」(分かります?)。自分の口でマネして見せながらそんな話をしたら、出渕さんに「それ濃すぎ!」と笑われてしまいました。

 今回のコラムに「あの口」を添えようと、記憶でささっと絵を描いてみたのですが、旧作の当該カット(沖田が「ワープ!」と叫ぶ)を見返したら、むき出しているのは上の歯だけで楕円(だえん)のナナメ具合もそれほど極端でなし。

 ……あれれ、勝手に脳内で補完してたかなぁ?

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2010年10月から名古屋報道センター文化グループ次長。※ツイッターでもつぶやいています。

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