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2012年4月30日
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小原篤のアニマゲ丼

「バトルシップ」にヤマト魂

文:小原篤

写真:映画「バトルシップ」から、ナガタ(左、浅野忠信)とアレックス(テイラー・キッチュ) (C)2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED.拡大映画「バトルシップ」から、ナガタ(左、浅野忠信)とアレックス(テイラー・キッチュ) (C)2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED.

写真:リムパック開始を前に、ミズーリ艦上で式典拡大リムパック開始を前に、ミズーリ艦上で式典

写真:敵メカ(奥)に向かってミズーリが主砲を放つ!拡大敵メカ(奥)に向かってミズーリが主砲を放つ!

写真:のこぎりヨーヨーのような敵兵器。映画「バトルシップ」は全国公開中です拡大のこぎりヨーヨーのような敵兵器。映画「バトルシップ」は全国公開中です

写真:幣紙の記事から戦艦ミズーリの写真を捜してきました。これは1998年撮影。記念館への改修工事を待つミズーリ拡大幣紙の記事から戦艦ミズーリの写真を捜してきました。これは1998年撮影。記念館への改修工事を待つミズーリ

写真:これは2010年撮影。カメラマンは「ヤマト」を意識してないかい?拡大これは2010年撮影。カメラマンは「ヤマト」を意識してないかい?

 空から落ちてくるものは、日本ではもっぱらかわいい女の子ですが、アメリカではエイリアンのドでかい兵器ってことになっています。日本では優柔不断な少年とイヤンウフフなお付き合いをしますが、アメリカでは陸海軍のマッチョどもが「やったらんかーい」とどつき合いをしてきます。

 昨年、そんな映画「世界侵略:ロサンゼルス決戦」「スカイライン――征服――」を立て続けに見てゲップが出たので、「同じような映画だろうなー」と余り期待せずに見にいった「バトルシップ」(公開中)、いやぁ面白かった! 敵の圧倒的な力、工夫を凝らし弱点を突く反撃、そして最後は乾坤一擲(けんこんいってき)一発逆転! 主人公の無思慮な士官がピンチをバネに成長、というドラマも含め定石通りですが、CGスペクタクルの派手さで押しまくるばかりでなく、それなりに作戦を立てた海戦をきちっと見せた「武骨なアナログ感」が効いてます。何よりツボを押されまくったのは、「これこそ正しい実写版ヤマトじゃないか!」と言いたくなるほどの「ヤマト」っぽさ。ヤマト魂が注入されているのです。

 冒頭、地球に似た惑星を見つけたからリキ入れて通信おくってみたゼ!(コレが災いの元)というシーンがあるのですが、この描写から既に「この通信衛星、何だか反射衛星砲みたい…」と思わせます。で、ハワイ沖のリムパック(環太平洋合同海軍演習)のさなかに飛び込んできた小山のような敵メカは、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の巨大要塞(ようさい)にちょっと似てるのですが、コレがハワイ一帯を半球状のバリヤーで遮断し、取り込んだ日米の艦船に砲弾の雨あられ、さらにのこぎりヨーヨーみたいな武器を放って基地も街もギタギタにして、人間側は打つ手なし。

 兄の艦長を殺された主人公アレックス(テイラー・キッチュ)は唯一残った米駆逐艦を指揮し、救助した海自のナガタ艦長(浅野忠信)と協力して、レーダーに頼らず津波ブイの潮位データを頼りに敵の位置を予測してミサイルを撃ちます。発射! ピコーンピコーン………命中! とまあ、懐かしの潜水艦ゲームみたいな作戦で「イケるか?」と思わせておいて、ヨーヨー無双であわれ駆逐艦は真っ二つ。このあたりで私のアタマに「?」が点灯します。「さっきからデストロイヤー(駆逐艦)ばっかで、タイトルのバトルシップ(戦艦)はいつ出るの?」

 そのとき主人公がニヤリ、「俺たちにはまだバトルシップがある!」(このあたりからかなりのネタバレです)。

 何とパールハーバーで記念館として一般公開されている戦艦ミズーリ(太平洋戦争の降伏文書調印式の舞台としておなじみ)を復活させるぞ、とムチャを言い出します。「動かし方がわかんねえよ!」と部下が文句をたれると、ジャジャ〜ンと勇壮な音楽に乗って退役軍人のじいさんたちが現れて……。

 老朽戦艦をよみがえらせて宇宙人と闘うんですよ、しかも外見もヤマトそっくり! つなぎとめてた鎖がパンパンと切れて発進するカッコいいシーンなんて、このあいだ「ヤマト2199」で見たばかり。よく考えたら主人公は優秀な兄を敵にやられた熱血(バカ)だし、そうなるとコワモテの提督(リアム・ニーソン)は沖田艦長に似てくるし、さらにミズーリは敵の攻撃をかわすのにロケットアンカー使うし!(ロケットじゃないけど) 集中砲火を浴びながら自慢の主砲をぶっ放し、1トンの砲弾をみんなで担いで「ファイトー! 一発!」で装填(そうてん)完了。「撃てぇ!」ドカーン!!

 闘い終えて夕日に向かうミズーリの後ろ姿と来た日にゃあもう、「うわぁ…ヤマトだ」とため息が出ました(ミズーリですけど)。というわけで、タイトルにSPACEもYAMATOも入っていませんが「バトルシップ」はまごうことなき真正のヤマト魂があふれていますので、「CGインフレの米軍バンザイ映画はもういいよぉ」などとは言わずに、でっかいスクリーンでぜひご覧ください。

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2012年4月から名古屋報道センター文化グループ担当部長。※ツイッターでもつぶやいています。

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