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2012年7月30日
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小原篤のアニマゲ丼

あれれ、いつからこうなった?

文:小原篤

写真:「マダガスカル3」は8月1日公開 (C)2012 DreamWorks Animation LLC.All Rights Reserved.拡大「マダガスカル3」は8月1日公開 (C)2012 DreamWorks Animation LLC.All Rights Reserved.

写真:「メリダとおそろしの森」は全国公開中 (C)Disney/Pixar All Rights Reserved.拡大「メリダとおそろしの森」は全国公開中 (C)Disney/Pixar All Rights Reserved.

写真:「映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス」は8月11日公開拡大「映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス」は8月11日公開

写真:「ROAD TO NINJA――NARUTO THE MOVIE――」は全国公開中 (C)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C)劇場版NARUTO製作委員会2012拡大「ROAD TO NINJA――NARUTO THE MOVIE――」は全国公開中 (C)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ (C)劇場版NARUTO製作委員会2012

写真:「放課後ミッドナイターズ」は8月25日から、日本だけでなく韓国・台湾などでも同時公開だそうです (C)AFTER SCHOOL MIDNIGHTERS PARTNERSHIP拡大「放課後ミッドナイターズ」は8月25日から、日本だけでなく韓国・台湾などでも同時公開だそうです (C)AFTER SCHOOL MIDNIGHTERS PARTNERSHIP

 CGアニメ映画で覇を競うピクサーとドリームワークス。前者は最先端をゆく洗練された優等生、後者は泥臭くベタで時に毒気を振りまき…といったイメージですが、この3年ほど日本では夏休み興行に新作同士が激突しています。観客動員数はさておいて、ワタクシ的にはドリームワークスの3連勝! 作品を並べて振り返ってみるとそうなんですが、あれれ、いつからこうなった?

 2010年は「トイ・ストーリー3」対「ヒックとドラゴン」。2011年は「カーズ2」対「カンフー・パンダ2」。そして今年は「メリダとおそろしの森」対「マダガスカル3」。傾向としては、ピクサーは映像のリアルさやゴージャスさを増しているもののスペクタクル偏重で、軸となるドラマにもうひとひねり足りない。対するドリームワークスは、細緻(さいち)なリアルさよりカートゥーン的な明快さをCGに求め、伏線を張り段取りを組んでクライマックスにもっていく構成がしっかりしているように見えますが、これはどちらかというと、ピクサーのドラマ作りのレベルが後退していると言うべきなのかも。あなたの評価はいかがです?

 さて公開中の「メリダ」と8月1日公開の「マダガスカル3」。前者は「ピクサー版もののけ姫か?」と大いに期待していました。後者は、まあ正直「動物たちがドタバタギャグを演じるCGアニメなんて今さらもう……」なんて気分でしたからなんにも期待していなかったのですが、面白かったのは予想に反して後者。まさかシリーズ3作目にこんなにハジけるとは!

 「マダガスカル3」は、ニューヨークの動物園の人気者だったライオンのアレックスにシマウマ、キリン、カバを加えた「4人組」が、アフリカからNYへ帰ろうとするが、モンテカルロのカジノで大騒ぎを起こし、動物の首を壁に飾るのを生きがいとする女警部に付け狙われ、サーカス団に紛れ込んでついにはショーに出演!という物語。悪知恵の働くペンギンズ(これがアレックスたちをいつもトラブルに巻き込む)が改造4WD車から奇想天外なメカを繰り出し、手下のチンパンジー軍団が追っ手に向かって特製バナナ砲からバナナを雨あられとぶっ放し、コワモテで執念深い女警部はスクーターでビルの壁を突き破って網やらムチやら振り回す……。追っかけギャグとアクションが、スピードもタイミングもバッチリきまって快感です。ドリームワークスのチームは、米ギャグアニメの黄金時代に学び、かなりの完成度で会得してきているのだなぁ、と感じます。

 アレックスは、落ち目のサーカスの動物たちを奮い立たせてまったく新しいショーを提案します。それが何とシルク・ド・ソレイユを彷彿(ほうふつ)とさせる幻想的なアクロバット! アニメならではの誇張とショーアップでウットリさせてくれます。花形スターだったトラの復活劇も見事。指輪ほどの輪をトラがくぐるという「ありえない」芸を、巧みなカット割りで強引に納得させてしまうアイデアが秀逸です。

 このあとサーカスの動物との仲たがいがあり、NYに帰れたものの心は空しく、そこへまたしても女警部の魔の手が! となってさらに二転三転した上で、華々しいショーと痛快な勝利と「本当の居場所」を見つけるドラマとが一体になったクライマックスへ。いいものを見せてもらいました。

 「メリダ」は、お姫様が主人公の「おとぎ話」というディズニーのような題材です。厳格すぎる母から望まぬ結婚を強いられた姫メリダが城を飛び出し、あやしい森の中で魔女に「母を変えて」と頼んだら母がクマになってしまったため、戸惑う母を守りつつ魔法を解こうと奔走するお話。ドラマの軸は「自由に生きたいの!」「わかったわ認めましょう」という、いたってシンプルというか今時シンプル過ぎるもので、ヒロインのフッサフサのカーリーヘアとかドレスの質感とかこけむす森の神秘的な雰囲気とか、映像には感服しますがドラマには物足りなさを覚えました。

 ディズニーのCGアニメ「塔の上のラプンツェル」も姫のたっぷりとした美しい金髪のCG表現に力を入れていましたが、あの髪はドラマのカギでした。燃えるように赤く、風のままになびかせているメリダの髪は、彼女の強い個性と意志を象徴していますが、全編通じて目立ちまくってるその髪がなびくたび、何やら「力を入れたのは(ドラマより)技術だよ!」と誇示されているような気分になったのでした。

 そういえば「自由になりたいお姫様」は、8月11日公開の「映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス」にも登場していて、コチラは「結婚なんてイヤ! それならお城を出て少女マンガ家になるわ」なんて王をおどかして映画開始から10分か20分で撤回させてました。で、そのスウィーツランドのマーナ姫に屈辱を味わわされた婚約相手の公爵が、危ないモンスターを放って王国を危機に陥れるが、ジュエルペットたちが解決するという物語。テレビ版ではアニメの画面の中に実写のヤギを無造作に合成するといった大胆な試みをぬけぬけとやってのけるシリーズですが、映画は割とオーソドックス。芦田愛菜ちゃんが声をあてているマーナ姫(そのまんま)が、こげどんぼ風のマンガ執筆に打ち込む風変わりなところも含めて、なかなかのかわいさでした。

 この映画、客席に向かって「ちからをかして!」とか「いっしょにおどろう!」といった感じで呼びかけたりして、ライバル番組である東映の「プリキュア」シリーズの成功にしっかり学んでいらっしゃいます。お菓子の国へ行く話も、確かプリキュア映画に既にあったはず…。ま、何にせよ、東映がスーパー戦隊と仮面ライダーをあれだけの頻度で映画館にかけてちゃんとお客が入っているんだから、映画版プリキュアがやってない時期に女児をターゲットにした映画をかけたらお客が来るはず、というもくろみなのでしょう。果たして結果やいかに。

 ついで、といっては失礼ですが夏休み公開の映画をあと2本ご紹介します。7月28日に公開された「ROAD TO NINJA――NARUTO THE MOVIE――」。少年忍者ナルトの活躍を描くシリーズ9本目の長編は、原作者・岸本斉史さんが自ら企画・ストーリー・キャラクターデザインを手がけた力作。ナルトの体内に封印された魔獣「九尾」の力を狙うマダラが、ナルトとくノ一のサクラを幻術で別の世界へ飛ばす。そこは、ナルトと里を守るために死んだはずの父と母が生きている世界だった、というお話。ナルトは、目の前の父と母を「ニセモノだ」とはねつけようとしますが、偽りのない親の情に触れ、夢見ていた親子3人の暮らしに心が揺れる――巧みな設定が生み出すドラマは、見応えがあります。両親の性格が途中でぶれるのが少々気にかかるのですが、あのくらいは「作劇上のさじ加減」といったところでしょうか。ナルトの仲間たちの性格がことごとく正反対に変わっているところが、ファンにはお楽しみ。

 8月25日には異色作「放課後ミッドナイターズ」が公開されます。小学校の理科室の人体模型キュンストレーキ(短気で実は怖がり/声・山寺宏一さん)が、子分の骨格標本ゴス(なぜか博多弁/声・田口浩正さん)と共に、自分にイタズラ書きをした女の子3人を怖がらせてこらしめようとする物語。モーションキャプチャーで動くCGキャラクターは、ハリウッドのCGアニメに比べたらシンプルなものですが、ルックスが個性的です。願いがかなう伝説のメダルとか、キュンストレーキが開発したタイムマシンとか、旧校舎に封印された恐怖のモンスターとか、盛りだくさんの大騒動が、深夜の小学校を舞台に繰り広げられます。

 しかし、せっせと試写に通っても、劇場版ポケモンもアンパンマンも「なのは」もまだ見てないから劇場に行かないと。これから「コードギアス」も「FAIRY TAIL」も「マクダルのカンフーようちえん」も公開されるし、9月には「タイバニ」「アシュラ」「マルドゥック」、そして10月は……。うわー途切れませんねぇ、いつからこうなった?

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2012年4月から名古屋報道センター文化グループ担当部長。※ツイッターでもつぶやいています。

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