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2012年11月26日
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小原篤のアニマゲ丼

裏切りのサービス

小原篤

写真:映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」総監督の庵野秀明さん。今夏の「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」開会式で撮影しました拡大映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」総監督の庵野秀明さん。今夏の「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」開会式で撮影しました

写真:その「特撮博物館」で上映された「巨神兵東京に現わる」が映画館で「Q」と同時上映中です。左が「巨神兵」監督の樋口真嗣さん、中央が庵野さん、右がスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー拡大その「特撮博物館」で上映された「巨神兵東京に現わる」が映画館で「Q」と同時上映中です。左が「巨神兵」監督の樋口真嗣さん、中央が庵野さん、右がスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー

 公開中の映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を見ました。テレビシリーズの筋をなぞった感の強かった前々作「序」から前作「破」のラストで一転、使徒に飲まれたヒロインのレイを主人公シンジが救い出し熱い抱擁!というまさかの「リア充」展開で、こりゃあ「Q」では二人で乗った無敵のエヴァ初号機で世界を救うラブラブ天驚拳(「機動武闘伝Gガンダム」参照)というか天Q拳でも繰り出すのかと思ったら、今度はまさかのドップリ鬱(うつ)展開! 驚きました。誰ですか、監督がリア充になったから「エヴァ」もリア充になったんだ、なんて言ったヒト?

 お断りしておきますがネタバレです。この映画、序盤から驚きの展開なのでそこを書いただけでもうネタバレです。開巻冒頭、衛星軌道上のナニかを捕まえるミッションに携わるのはエヴァ2号機、プラグ内の操縦席には眼帯つけたアスカ! 前作で使徒に侵食されてシンジのエヴァ初号機にツブされちゃったはずが、見事に復活です。眼帯アスカの超「男前」演技とアクションがこの映画の華です。でもツギがあたってボルトが刺さってるから、思わず「フランケンウィニー」かよ!スパーキーかよ!とツッコみたくなります。

 捕まえた十字架っぽい棺みたいな箱には使徒がくっついててアスカを攻撃。窮地のアスカが「なんとかしなさいよ、バカシンジ!」と叫ぶと箱の中からビームが光って使徒を瞬殺。箱の切れ目から気味の悪い目がギロリ。後の説明だとこれ、シンジの乗った初号機だそうですが、ほとんど使徒じゃん? まあ前からバケモノじみていましたけど。

 で、初号機のプラグ内で見つかったのはシンジと彼愛用のS−DATウォークマンのみで、助けたはずのレイは影も形もなし。目覚めたシンジはミサトが艦長を務める巨大戦艦ヴンダーのブリッジに連れてこられますが、ミサトやリツコに「もうエヴァに乗るな」と言われるし、クルーの態度は氷のように冷たいし、首には爆弾つけられるし、自分は初号機の中で14年も眠っていて、おまけにここは「ヴィレ」という組織でネルフは敵だ、なんて聞かされ、もうこんなところイヤだ!とシンジがキレると、レイが零号機に似た機体で助けに来たのでネルフ本部に連れてってもらったら、廃虚になっててレイもまるで「別人」みたい…。

 この後、ネルフ本部でカヲル君と連弾したりしてちょっと和んだのもつかの間、14年前に自分が世界を最悪のバッドエンドに染め上げてしまったことを知り、シンジ君も物語も超「鬱」展開へ。いやーこのあたりは見ていてツラかった。「エヴァ」らしいと言えば実に「エヴァ」らしいけれど、まさかこんなものをまた見せられるとは。この映画のシンジ君のダメキャラぶりは最強で、序盤:役に立たない、中盤:心が折れる、終盤:間違いを犯す、の3連コンボ。キツイよねえ。1度間違えたのに過ちを繰り返すところは、毎度ひみつ道具を使って失敗するのび太みたい。破滅の引き金をまた引いておいて「ボクのせいだ! どうしよう?」なんて泣いてもドラえもんは来てくれないよ、と画面にツッコんでしまいました。

 というわけで、エンドマークの「つづく」を見終えた頃にはどっと疲労感に襲われましたが、再見すると不思議なことに、なんとめちゃくちゃ楽しい! 展開を知った上で見ると、落ちていくシンちゃんをニマニマながめつつ、豪華スタッフによる磨きのかかったゴージャスな映像を楽しめ、ぎっしり埋め込まれた情報をそしゃくでき、いろんな謎に気づいてワクワクする。一度目はショックを味わい、二度目(以降)は細部を楽しめる映画なのです。

 庵野秀明総監督と「エヴァ」にはずっと、先が見えた!と思ったら裏切られ…、という目に遭わされてきました。今回もいいように振り回され転がされ……「裏切り」こそ最高のサービスなのですね。パンフ豪華版には「次で完結予定」と書いてありますが、こうなったら何が来ても驚きません――じゃなくて、思いっきり力いっぱい驚いてみせましょう。エヴァのパイロットがトシを取らないのはどういうことなのか(永遠の14歳、死ぬまで中2病?)、「序」から「世界はもう何度も同じことを繰り返してる」感をにおわせてきたのをどう回収するのか、昭和歌謡を歌うだけでなくどうも年寄りくさいマリの正体は何なのか、そのほか長大なリストが出来るほどの謎の数々に、どう決着をつけるのでしょう。

 更に14年後に話が飛ぶかも知れないし、14年前からやり直すのかも知れないし、赤い荒野の奥地でシンジが王国を築いてるかも知れないし、ヴンダーがヒト型に変形してダイダロスアタックをかますかも知れないし、ペンギンのペンペンのお尻に(C)マークがついててすべては夢で元の学園エヴァに戻って、ゲンドウ校長や冬月教頭がいてミサト先生が「明日は学園祭の初日だからサービスサービスゥ!」と言うかも知れないし、シンジが眼帯アスカの肩を抱いて「これが僕たちの結婚式だよ」と言いながら巨大綾波レイと一緒に超巨大使徒に体当たりしてキラーンと光ったら沢田研二の歌が流れるかも知れないし。

 最後にオマケ。レイと一緒に使徒に飲まれたはずなのに初号機のプラグ内で形が復元されていた、というS−DAT。動かなかったのをカヲル君に直してもらいようやく再生するシンジ。その次のカットで「別人」レイの前に制服姿のレイが出現! そしてラストで、アスカに腕を引かれ荒野を行くシンジがポトリと地面に落としたS−DATを見下ろす「別人」レイ。どうやら彼女、それを拾って2人について行ったようですが、果たして彼女が再生したりすると何が起きるんでしょう? カヲル君が「別人」レイについて、魂のある場所が違ううんぬんと言っていたのが、何だか気になって……。ふふふ、当たってるかなあ。

 ま、何にせよ、次回も楽しみ楽しみぃ!

プロフィール

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小原 篤(おはら・あつし)

1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。2012年4月から名古屋報道センター文化グループ担当部長。※ツイッターでもつぶやいています。12月20日に日本評論社から「1面トップはロボットアニメ 小原篤のアニマゲ丼」刊行予定。

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