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恋する暴君(高永ひなこ)

2009年8月29日

  • 筆者 松尾慈子

写真恋する暴君[作]高永ひなこ

 はるか昔のこと、当時つきあっていた男性のパソコンをいじっていて、偶然、その彼が集めていたエロ画像を開いてしまったことがある。数枚しか見なかったが、それらは全部「お尻」系で、男が内緒で集めるエロ画像というのはモロにその人の性指向が出るなあ、と思ったものだった。私は本当に谷おんな、いわゆる貧乳というやつで、巨乳好きな男が私とつきあうわけはないのだ。

 人それぞれ、心に秘めた「エロファンタジー」というものがあるが、私の場合には、「私のエロファンタジーは、男同士なの〜」と世にはばかることなく公言しているのだから、考えれば恥ずかしい話なのかもしれない。というわけで、今回もボーイズラブ(BL)です、しかもエロ濃い目です、どうぞご容赦ください。

 ボーイズラブ界で人気を集める高永ひなこ。代表作は数あれど、彼女の人気を不動のものにしたのが本書だろう。ゲイを嫌悪し、唯我独尊な性格の大学院生・宗一と、その彼を心から愛してしまい何度拒否されても愛し続ける後輩・森永との恋物語。受け(BLにおける女役)は女王様、攻め(男役)は忠実な犬のような性格という、BLにおける定番の一つなのだが、この宗一という男の暴君な性格と凶暴さがすさまじく、その分森永のワンコぶりが際だって、腐女子(女オタクのこと)たちを熱狂させた。これぞBL界のツンデレの最高峰だといえるだろう(ツンデレ=普段はツンとすました人が、特定の条件下で、あるいは特定の相手にだけデレデレすること)。

 宗一は、弟がゲイになったこともあり、深くゲイを嫌悪していたが、同じ研究室で信頼していた後輩・森永に求愛されてその信条が揺らぐ。森永の思いには応えられないが、信頼する人間が離れていくのは耐えられないと悩む宗一。一方、森永も自分の気持ちを知っていた上で横暴にふるまう宗一の無神経さに怒りつつも恋する気持ちを止められない。恋愛シーンはシリアスだが、ときには宗一の凶暴さがギャグとなり、大笑いしつつしんみりできるラブコメディーだ。

 いろいろありつつ結局はBLの定番通り二人は無事くっつくのだが、くっついた後でも宗一はやっぱり暴君で、腐女子たちの心をつかんで離さない。本書はそもそも性描写があまり激しくないのだが、最近でた5巻は特にエロ度が高めで、コミックスの書き下ろし10ページがまるまるエロ!「物語上必要だ」と作者が主張するだけあって濃厚だ。高永は絵が繊細でデッサンがしっかりしてるから、エロシーンがまたエロい。このエロで次巻どう宗一の心に変化が訪れるのか楽しみだ。

 ちなみに、冒頭の「エロ画像発見事件」。私が発見したことに男性は気づかなかったのだが、つい私が出来心で「みちゃったよ〜」と本人に言ってしまい、大げんかに発展した。つくづく、エロファンタジーというのは秘密なモノなんだなあ、と実感した。どうですか、みなさん、エロファンタジーって恋人と共有できてますか?

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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