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路地恋花(麻生みこと)

2010年4月2日

  • 筆者 松尾慈子

写真路地恋花[作]麻生みこと

 新人弁護士を主人公にしたコメディー「そこをなんとか」(白泉社)で一躍読者層を広げた麻生みこと。今度は青年誌にも活動の場を広げ、「good!アフタヌーン」(講談社)で1話完結の恋愛漫画を連載している。麻生作品について私はつねづね「『LaLa』系の雑誌で掲載されるには恋愛要素が乏しいんでは」と思っていたのだが、青年誌ではズバリ、恋愛をテーマにしている。私の心配をよそに、本書は麻生らしいひょうひょうとした雰囲気ながらも、深い愛情の物語に仕上がっていた。

 京都の路地、「もの作りをする人たち」が住む長屋を舞台に、それぞれの住人たちの恋模様をつづっている。手作り本職人、銀細工職人、キャンドル作家・・・。それぞれの職業を物語に絡めながら、大人(一人未成年)の恋を描く。細い路地、細やかな隣人づきあい、底冷えのする長屋暮らし・・・そこここに京都らしさがちりばめられていて、それもまたいとしい。

 でもでも、告白していいですか? 私、実は京都がとても苦手・・・。仕事でやむを得ず行くときには、用だけすまして逃げるように帰った。なぜかって? 私はなぜか京都では必ず道に迷う。それに、京都人が怖いのだ。以前毎日新聞かどこかのコラムでこんな記述があった。「京都人が苦手だ。会って話して別れた後には、必ず自分の悪口を言っている気がする」。その通り、私も、京都人と会うと、帰路で必ず「あ〜今ごろあの人絶対私の悪口いってる〜」と思っていた。

 というわけで、特に4話が身につまされる。純京都人ながらもフランス人形ばりのロリータ系衣装に身を包んだ美少女・ナオミと、喫茶店店主の訳あり男性・井沢の恋物語。祇園の老舗和菓子屋の娘でありながら、ケーキ作りを愛し、京都が嫌いだと叫ぶナオミ。「色々古くさいし みんな言うこと回りくどいしイケズやし とりあえず言葉がお洋服と致命的に合えへんし」。東京からやってきた井沢にナオミは「こないなとこまで何しにきはったん?」と尋ねるが、井沢は「こないなとこ=謙遜 何しにきはった=とっととカエレ?」と深読みする。そうそう、京都弁には地雷がうまっているのよ! 

 ナオミは井沢に共感をよせるが、井沢は「反抗期の突飛な表出」と相手にしない。ところが井沢の蔵書を読みあさったナオミは、当初の無垢な少女から変身し、思わぬひとことで井沢の心を陥落させてしまう。無垢で奔放で、かつ正直なナオミに読んでいる方も魅せられてしまう。

 今秋発売予定の次巻では、井沢とナオミの続編もあるそうで、楽しみだ。掲載誌の「good!アフタヌーン」は新しい雑誌で、作品群が2,3月に続々とコミックス化された。当コラムでもしばらく「good!アフタヌーン」祭りが続くかもしれません、予定は未定ですが。どうぞよろしく。

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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