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オシャレ弱者の険しき道 神は細部に宿るのよ(久世番子)

2010年9月3日

  • 筆者 松尾慈子

写真神は細部に宿るのよ[作]久世番子

 書店勤めの実体験を描いた「暴れん坊本屋さん」(新書館)で名をあげた久世番子。本書は自らのオシャレ弱者ぶりを描いたエッセー漫画で、世の女子が大いに共感できる作品に仕上がっている。おそらく多くの女子は「がんばってはいるけど、私って非オシャレ?」という不安を抱えているもので、久世のファッションに関する迷走ぶりは「あるある〜」とうなずけるのだ。女子の苦悩を知りたいなら、世の男子も手にとって損はない。

 「世の中には試着室にサラっと入れる女子となかなか入れない女子がいますが」ファッション弱者の久世はもちろん後者。勇気を出して試着室に入れば、服のサイズが小さくて金縛り状態になったり、ベージュのカーディガンを着れば「裸かと思った!」と周囲に驚かれたり。本屋さんのときと同じ2頭身のキャラが、服飾をめぐって右往左往している。

 オフショルダーのドレスにパフスリーブ。「子どもの頃、大人になったらこういう服を着るもんだと思ってました」。小さなバッグ持ってちゃんとメークして髪もセットしてコロンもつけて……「なのにどうしてこうなった!?」。そう、確かに子どもの頃あこがれた服は決して着ることがない。だから久世は子どもだった昔の自分に言いたいのだ。「毛とか肉とか下着とか 大人は大変なの だからね 子どもの頃着たかった服は子どものうちに着ときなさいってこと」

 そうなんだよ〜。子どもは許されるけど、大人はいろいろ大変で、ちゃんとしてなきゃ許してもらえないからね〜。ちなみに解説すると、オフショルダーというのは二の腕あたりに肩ひもがくる服のことで、肩が丸出しになるので背中の毛の処理やストラップのないブラにするなど配慮が必要。パフスリーブとは、「赤毛のアン」もあこがれた、袖がふわっとふくらんだ実に女の子らしさ満点の服のことだが、きゃしゃな人でないとなかなか似合わないのが致命的だ。

 このように、久世の率直なつぶやきは、私も常日頃感じていた思いであり、「よくぞ言ってくれた」とひざを打つ。見た目カッコイイからと、マフラーをコートの上に首から垂らすだけなのをよく見かけるが、「防寒の意味ないじゃん」。最近流行のオールインワン、昔で言うつなぎの服、「その服トイレ大変ですよね!?」。ちなみに、オールインワンは、着用者に「大変ですよ! でも好きなんです」と言われて、久世は頭を垂れる。そう、「オシャレは我慢」なのよ、分かっているわ、分かっているけど、楽さを優先させてしまう人種もいるのよ〜。

 何度も書いているが、私も久世と同じオシャレ弱者。というか、正価で服を買っている久世に対し、それができない私は完全に久世以下、オシャレ人間に恐怖を抱く本物の腐女子(女オタクの俗称)だ。そんな私にしてみれば、久世のようなファッションに関心が高い女子でもこういう迷いは深いのね。なら私も勇気をだして試着室に入ろうかしら。しかし、私は買う気満々でお店に行っても、店員に全く相手にされないことが多い。私が綿の服を着ているのがいけないの? それとも髪ぼさぼさがいけないの? やっぱり化粧してないから? 全部正解な気がするが、とにかく、オシャレの道は険しいのだ。

プロフィール

写真

松尾 慈子(まつお・しげこ)

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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